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ホーム > 海外医療情報 > 海外医療(機関紙) > 1.皮膚感染症(細菌・ウイルス性)と環境・生活習慣

「海外生活と皮膚の健康」

海外における主な皮膚のトラブル

1.皮膚感染症(細菌・ウイルス性)と環境・生活習慣

順天堂大学医学部皮膚科講師 矢口 均

 海外赴任や海外長期滞在者は、環境や生活習慣の変化、言語・文化の違いによる精神的ストレスなどにより、日本在住の時よりも様々な皮膚病に罹りやすいようです。また異国の地での心細さ等から、医療施設に行かず自己治療し、罹った皮膚病も治りにくく遷延化することが多いのが現況です。また赴任先の地域性・衛生状態により、日本ではあまりお目にかからない皮膚病もあります。ここではまず、赴任先で罹ると困ってしまう皮膚感染症を細菌性、ウイルス性に分けて紹介し、次に皮膚感染症における一般的な予防法・注意点について述べたいと思います。

■赴任先で罹ると困ってしまう皮膚感染症

 赴任先ではその地域の衛生状態により、軽微な外傷や虫さされであっても化膿菌(ブドウ球菌・連鎖球菌など)の感染により患部が赤く腫れ上がったり、激しい痛みを伴う蜂窩織炎が起こりやすいことがあります。また、毛穴の中の化膿菌の感染症で同様の症状を起こすせつ・癰(よう)・面疔(めんちょう)、手や足の指の爪の周囲に膿が貯まるひょう疽、顔面や背部・臀部等にできやすく、皮膚に垢(あか)や皮脂が貯まり細菌感染を合併しやすい粉瘤(ふんりゅう)、また子供ではアトピー性皮膚炎に合併しやすい伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん:とびひ)等があります。一般に化膿の原因菌はブドウ球菌や連鎖球菌ですが、環境の変化やその地域の衛生状態で、大腸菌や緑膿菌感染がおきやすかったりします。治療には、抗生物質の内服・外用を用いますが、常備薬の抗生物質が効かないときには、なるべく早く医療機関を受診するようにしましょう。赴任先では日本とは異なる化膿菌もいくつかあります。また、熱帯地の高温・多湿の条件下では感染症もかかりやすく、治りにくいのです。軽いからと言って病気を甘く見ないようにしましょう。狂犬病は日本にはもうありませんし、破傷風は、日本では少なくなってきましたが、非常に重篤な感染症ですので渡航前に予防接種を行いましょう。
 また最近再興感染症として注目されている細菌感染症としては結核があります。抗生物質の氾濫や、ステロイドを中心とする免疫抑制作用のある薬剤により、全世界で患者数が増加しています。症状は呼吸器症状が中心ですが、様々な皮疹も出現します。感染力が強いため、抗生物質を中心とする十分な治療が必要です。また渡航前の予防接種(BCG)をお勧めします。
 その他、性行為感染症である梅毒にも注意が必要ですが、詳細は後述します。
 一方、ウイルス感染症では、高熱後に細かい発疹が全身に出現し肝臓を悪くすることのある風疹や、耳下腺の腫れと発熱、睾丸炎を起こし不妊の原因にもなるムンプス(おたふくかぜ)はよく知られた病気ですが、大人で発症すると重症になりますので、医療機関で診断してもらった後、十分な療養が必要です。また風疹やムンプスにまだかかっていない人は、出国前の予防接種をお勧めします。
 また慣れない土地でのストレス、仕事の忙しさや睡眠不足等による免疫力が低下すると、単純ヘルペスや帯状疱疹ができやすくなります。単純ヘルペスは感染力の強い単純ヘルペスウイルスの感染症で、顔面特に口唇に小水疱ができ、再発を繰り返します。帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスの感染症で、身体の右または左のどちらかのみの神経領域に水疱が帯状に出現し、神経痛のような激しい痛みを伴います。いずれのウイルスも抗ウ
イルス剤の内服・点滴で症状が軽快しますので、早急な医療機関への受診が必要です。
 また、最近特に注目されるウイルス感染として、HIVウイルス感染であるAIDS(後天性免疫不全症候群)が挙げられます。これは血液製剤による感染が注目されましたが、現在では性行為にて感染する(性行為感染症)ものがほとんどです。その他性行為感染症には陰部ヘルペス、尖圭コンジローマがありますが詳細は後述します。

■皮膚感染症の予防法・注意点

 日本人は両極を含め全世界に居住しており、アメリカ、ヨーロッパなどのような先進諸国に行く人もいますし、熱帯や砂漠地域へ出かける人もいるという具合に居住先は千差万別です。さらにその赴任先では、水をのみ、食事をし、遊び、寝ます。それらの行動であらゆる病気に感染する機会があります。それぞれの地域によって流行している病気の種類、予防方法などが異なっています。したがって、その地域で感染する可能性のある病気の簡単な知識と予防方法などを調べてから行くことをお勧めします。
 わが国は非常に衛生状態が良い国です。しかしながら、世界のどの地域へ行っても同じ状態とはいえません。感染症にかかる危険性は先進諸国以外では高いといわなければなりません。熱帯地域に赴任する場合に注意しなければならない点を二、三挙げておきます。飲食物では、生水や生ものを口にしないことです。最近では、刺身を食べることのできる地域が多くなりましたが、海産魚類以外の刺身は避けたほうがよいと思います。いわゆるゲテものに属する食品は、生では食べないほうが安全です。次に蚊のほかにも感染症を媒介する昆虫は種類も多く、昆虫類に刺されないようにすることは感染症の予防対策として重要なことです。さらに、手や足を川や湖に漬ける時には皮膚からの感染症に注意しなければなりません。付近住民の話を聞いてから水泳などをしたほうがよいと思います。特に注意する点をお話ししましたが、普段健康維持のために実行していることも守って、楽しい海外生活をおくってください。

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