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ホーム > 海外医療情報 > 海外医療(機関紙) > 成人病を持って海外赴任した場合の健康管理-胆石症

成人病を持って海外赴任した場合の健康管理

胆石症

東京女子医科大学助教授・内科 戸松 成

 胆石症には、胆嚢にできる胆嚢胆石、胆汁の通り道の管にできる胆管結石、肝臓の中の細い胆管にできる肝内結石があります。胆管結石の場合は、痛みの発作がおこったり、急性胆管炎を合併しやすいので、すぐに手術が必要です。ですから、海外に赴任する人にとって問題になるのは肝内結石や胆嚢結石です。肝内結石はそのほとんどが痛みもおきず、放置しても問題にならないので、ここでは胆嚢結石(以下胆石とします)に絞って述べることにします。
 痛みを伴なう胆石は、手術が必要なので、手術後に海外へ行くことになります。したがって海外赴任者の胆石は、症状のない無症状胆石の場合がほとんどということになります。

成因と誘因

 胆石ができやすい条件としては、胆汁の成分がかわること、胆汁がうっ滞しやすい状態、胆汁の流れる部位の炎症などがあげられます。
 過食、特に脂肪分の摂取、肥満、女性の多産、座り仕事、コルセットや帯の着用(胆汁の流れをうっ滞させる)、運動不足などが誘因となり、女性に多くみられることも特徴です。胆石で一番多いコレステロール系胆石が最近増えているのは、欧米のような食事で、食物繊維の摂取が減少したことと脂肪摂取が増加したことが原因と言われています。

症状

 前述のような理由で、海外へ行く人には無症状胆石が多いが、その一部の人は何年かすると症状が出ることがあります。胆嚢結石の場合、食べた後に胆嚢が収縮するが、その際に胆嚢の出口のところに胆石が挟まってしまった場合に痛みが起こるのです。
石上腹部やみぞおちに激しい痛みが起こります。それはたくさんの量の食事、脂肪の多い食事を摂ったあと、1時間前後に起こります。ふつうは夕食を多く摂るので、寝るころに痛むことが多いものです。
他に吐き気や、嘔吐、右側の背中や右肩が痛む(関連痛)こともあります。また、みぞおちや右上腹部が重くなる程度や背中が張るとか、石肩が凝るとかの軽い症状の場合もあります。

治療

 食事療法としては原因と反対のことをすればよいわけです。つまり暴飲暴食をせず、特に動物性の脂肪を制限し、1日3回規則正しく、一度に沢山食べることをしなければなおよいでしょう。
 ふだんはコレステロールを多く含むイカ、タコ、エビ、カニ、貝などは控え目にします。海外では肉を食べる機会が増えるので、脂肪の少ない赤身の部分を食べるようにする、東南アジアでの揚げ物などは油分が多いのでやめる、中華料理は特に脂が多いので避けた方がよいでしょう。欧米では脂肪分が多い菓子類に気をつけます。食物繊維はコレステロールの吸収を妨げるので、野菜や海草などは積極的に摂ります。刺激物は、胃酸を分泌させ、それが十二指腸に流れると結果として胆嚢を収縮させるホルモンも出てしまうので、控えます。アルコールも同様に刺激することになるので控えます。痛みが出たときには、脂肪は絶対に取らないで、ジュースなどで水分と電解質を補うだけにします。
 痛みが時々出るときには、ふだん満腹になるまで食べないことがコツです。内科的治療としては、飲み薬で石を溶かす方法、石を破砕してから飲み薬で溶かす方法があり、痛みが出た時には飲み薬や注射薬を用います。

①経口的胆石溶解療法

 主としてクマノイと同じ成分の合成薬が世界中で使われています。これを1~2年間毎日飲み、胆汁の成分を変えて石を溶解する方法です。

②体外衝撃波胆石破砕療法

 体外衝撃波を使って胆石を破砕する方法で、石を粉々にして溶けやすくしてから胆石溶解療法を付加します。

③鎮痙薬

 痛みが起きたときに鎮痙薬を用い、胆嚢の筋肉を弛緩させて、痛みをとります。これには飲み薬と注射薬があります。
 外科的治療としては、普通の開腹手術のほかに、最近急速に普及してきた腹腔鏡下胆嚢摘出術があります。内視鏡で胆嚢を切除して取り出す手術で、世界的に行われており、この場合は1週間以内に退院できます。

海外生活での注意

 胆石症は、症状が続けば手術、症状がなければそのまま経過をみて前述の内科的治療を行うのが原則ですが、実際は症状がなくても手術する病院もあります。これはあまり勧められません。胆石症から胆嚢ガンになると従来言われてきましたが、無症状胆石で胆嚢ガンを合併する率は極めて低いということがわかってきているので、無症状胆石の場合は内科的治療を行うことが多いのです。海外においては高脂肪の食事が多く、日本人の体格のわりには出される料理の量も多いものです。アイスクリームやケーキは日本より脂肪分が多く、またアルコールの誘惑と、接待でアルコールを飲む機会も多くなるでしょう。これらは、胆石の病状を増悪する因子であり、注意が必要です。胆石溶解剤は長く飲むことになります。痛くなった時のための鎮痙剤も必要です。これらの薬は、欧米ではどこにでもあります。主治医に紹介状を書いてもらって現地で調達するとよいでしょう。
 海外でとくに困るのは、痛みの発作が起こって手術をすることになった場合です。現地か日本かという判断に迷うことになるでしょう。現地で手術ということになれば、途上国では私立病院に限ります。欧米ならたいていの病院で大丈夫でしょう。海外旅行傷害保険については、前から持っている病気は対象外になってしまうので注意が必要です。海外での医療費は非常に高いので、日本か現地かの選択はよくよく考えた方がよいでしょう。日本の健康保険では、海外療養費も日本の基準で計算した分だけしか支払われないので、あまり期待できません。
 海外赴任すると、国内より接待が多くなり、ストレスも多いのが一般的傾向でしょう。肉体的疲労やストレスから解放される方法を探すことも、発作を起こさずに過ごすためには必要です。