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「海外赴任者のための感染症対策」

各国の感染症状況

米国

元べスイスラエル病院(ニューヨーク)内科・感染症料医師
(1994年7月~1995年12月)
(現在 聖路加国際病院内科感染症科医長)古川 恵一


米国で最近、最も重要な問題となっている感染症はエイズです。1994年のエイズ患者数は8万人を超えており、内推定死亡者数は約4万2千人で、全米の死亡原因ランキングの中で第8位となっている程です。そこで、エイズについて知っておくべきことについて説明をしたいと思います。
1.エイズはどういう病気か?
 エイズ(AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome後天性免疫不全症候群)とは、エイズウイルス(HIV:Human Immunodeficiency Virus)に感染して起こる病気で、生体防御反応に必要なリンパ球(CD4リンパ球)などが徐々に破壊されるために、身体の免疫力(抵抗力)が低下して、やがては様々な感染症や悪性腫瘍を合併して致命的となる病気である。


2.どういう人がエイズウイルスに感するリスクがあるか? (1)男性同性愛者/両性愛者(不特定多数の相手)
(2)不特定多数の人と異性間性交渉のあった人
(3)静注麻薬使用者
(4)血液凝固因子製剤輸注、輸血をうけた人
  (1978-1985年に)
(5)エイズリスクグループの人々(上記)との性交渉のあった人
(6)感染者の母親から生まれた子

3.エイズ患者数のリスクグルーブ別割合は?
 米国での1994年1年間のエイズ患者80,691人中のリスクグループ別の割合:
①男性同性愛者/両性愛者(43.3%)
②静注麻薬使用者(27.0%)
③男性同性愛/両性愛+静注麻薬使用者(4.8%)
④異性間性交渉(10.3%)
⑤輸血(1.0%)
⑥母子感染(1.2%)
⑦血友病(0.6%)
⑧不明(11.9%)
 最近は米国において(日本や諸外国においても)、異性間性交渉によるHIV感染者、エイズ患者が増加してきている。

4.米国におけるエイズ感染のリスクループの中でのHIV感染者の割合は?
①売春婦:(11.7%)(地域により異なる)ニューアーク、ジャージーシティ:(57%)
②異性間性交渉+静注麻薬使用者:(11.6%)
③男性同性愛/両性愛者:(16.5%)
④男性同性愛/両性愛+静注麻薬使用者(17.1%)
⑤血友病者(14%)
⑥1978-1985年に輸血を受けた人:(2.3%)


5.エイズウイルス(HIV)の感染はのような経路で起こるか?

 エイズウイルスは感染者の血液と体液(特に精液、膣頚管粘液)の中に多く含まれる。エイズウイルスは次の3通りの経路によって感染者から他の人へと伝播される。
(1)血液を介する伝播
①血液で汚染された注射器や針を使っての麻薬静注(感染率:0.5%-10%)
②血液凝固因子製剤の輸注(1985年以後は安全)
③輸血(感染率〉90%。最近はまれ。)
④医療従事者の針刺し事故(感染率0.4%)

(2)性交による伝播(膣、肛門)
①男性から男性へ ②男性から女性へ
③女性から男性へ
1回の性交での感染率は0.1%-1.0%(?)他の性感染症(淋病、クラミジア、ヘルペス、梅毒等)を合併している場合や月経中では感染のリスクはより高くなる。ラテックスコンドームの使用で感染防止は可能である。


(3)感染者の母から生まれた子への感染
 ①子宮胎内 ②出産時 ③母乳の授乳
 母子感染のリスクは15%-40%。最近は妊娠中と分娩時の母親と、出生後の新生児へのAZT投与により、感染率は8%に減少。

6.エイズウイルスの伝播の起こらないような安全な接触は?
(1)唾液、汗、涙を介する接触
 ①ふつうのキス ②セキやクシャミ
 ③コップの回し飲み。同じ皿の食物を食べること。
  感染者の調理した食事を食べること。
 ④握手 ⑤公衆トイレ、便器の使用。
(2)性生活以外の家庭内接触
(3)同じ職場や学校での生活
(4)蚊など虫刺されを介する接触
(5)血液や体液が健康な皮膚に付着した場合
 (すぐに流水と石けんで洗うこと)

7.エイズウイルス感染者の経過と症状は?
(1)感染初期の症状
 エイズウイルス感染者の約50%の人に、感染して2週から4週間後に、次の様な感冒様の急性感染症状がみられる。発熱、咽頭痛、頭痛、頚部リンパ節腫大、関節痛、筋肉痛、発疹など。これらの症状は1週から2週間で自然に軽快する。その後、ウイルス感染から平均2.1ヶ月後に(たいていは3ヶ月以内に)血液中のエイズウイルス(HIV)抗体が陽性になる。


(2)長期無症状期
 (血液中のCD4リンパ球数500以上/mm3:正常)その後、全く症状のない期間が長く続く(数年-10年前後)。しかしこの期間にも感染者はエイズウイルスを他の人に伝播させる可能性がある。

(3)中間期
 (血液中CD4リンパ球数:200-500/mm3:軽度-中等度低下) 無症状の人も多いが、免疫力は軽度から中等度低下して、時には発熱、下痢、口腔内カンジダ症、再発性口腔または陰部ヘルペス感染や帯状庖疹や細菌感染症(肺炎、副鼻腔炎)などを合併する。


(4)エイズ発症期
 (血液中CD4リンパ球数:200以下/mm3:重度低下)
 エイズウイルスに感染して約10年後に、約50%の人はエイズを発症する。
①エイズ発症者に みられる主な感染症と症状
1)ニューモシスチスカリニ肺炎…息切れ、咳、発熱
2)クリプトコッカス髄膜炎…頭痛、発熱、意識障害
3)脳トキソプラズマ症…頭痛、けいれん
4)サイトメガロウイルス網膜炎…視力障害
5)カンジダ性食道炎…えん下時痛
6)結核(肺内、肺外)…咳、発熱
7)重症の口囲、陰部、肛囲ヘルペス感染
8)慢性腸感染(クリプトスポリジウム、非定型抗酸菌、サイトメガロウイルスなど)…慢性下痢、体重減少
9)エイズウイルスによる脳症…集中力記銘力低下、人格変化、痴呆など
②エイズ発症者にみられる悪性腫瘍
1)リンパ肉腫(全身リンパ節、内臓、脳)
2)カポジ肉腫(皮膚、消化管、肺など)
3)子宮頚癌(侵襲性)など


(5)感染後10年以上経過している無症候者
 エイズウイルスに感染して10年以上経過している人の中で大部分の人は、月日の経過と共にCD4リンパ球数は徐々に低下して、免疫力は低下していき、やがてはエイズを発症する可能性が高い。しかし、少数ではあるが一部の感染者の中には、10数年経過してもCD4リンパ球数の低下がみられず、免疫力低下のみられない人もいる。


8.エイズウイルス(HIV)抗体検査について
 エイズウイルス感染の有無は血液中のHIV抗体の有無によって診断される。エイズウイルス感染後、平均2.1ヶ月、大部分の人は3ヶ月後までにHIV抗体が陽性になる。感染後95%の人は6ヶ月後までにHIV抗体陽性になる。
 HIV抗体検査を受ける場合、感染のおそれのあるでき事から少くとも2ヶ月以上-3ヶ月経過してから検査を受ける方がよい。6ヶ月後まで検査して陰性であれば、その人はHIVに感染していないとほぼみなしてよい。

9.エイズウイルスおよび合併感染症に対する治療は?
(1)エイズウイルスに対する治療薬
 現在、まだエイズウイルス感染を根治する薬はない。しかしエイズウイルスの進展をある程度抑える薬はいくつか存在する。(AZT,ddl,ddC,d4Tなど)副作用がやや多いのが問題である。CD4リンパ球数が200‐500/mm3(軽度-中等度低下)の人に対しては、治療薬により、エイズへの進展をある程度遅らせることができるようである。
(2)合併感染症に対する治療薬、予防薬
 エイズ患者が合併する大部分の感染症に対して治療薬が存在し、ある程度治療可能である。最近は治療法、予防法において進歩がみられ、カリニ肺炎等いくつかの感染症についてはある程度発症や再発防止が可能になってきた。それに伴ってエイズ患者の予後の改善がもたらされた。

10.エイズ患者の生命の予後は?
 CD4リンパ球数が200以下/mm3に減少した人では、エイズウイルスに対する治療薬、そしてカリニ肺炎等に対する予防薬を服用しないと50%から70%の人は2年以内にエイズの様々な合併症を起こして致命的となる。
 CD4リンパ球数が200以下/mm3の人では、適切な投薬により、1980年代の前半に比してエイズ患者の予後は12ヶ月延長し、平均の生命の予後は38.1ヶ月となった。

11.エイズウイルスに感染しないためには?
(1)不特定の人との性交渉をさけること特に過去に多数の不特定の人を相手に性的関係をもっていた人、静注麻薬を使用したことのある人との性交渉をさける。
(2)ラテックスコンドームを使用すること
(3)麻薬を使用しないこと

12.エイズウイルス感染の恐れ、心配のある人は?
 信頼のできるかかりつけの医師に相談すること。
HIV抗体検査を受けること。検査はたいていの医療施設で受けることができるが、多くのエイズ患者、感染者を診療している施設では、HIV抗体検査を受ける人のためのカウンセラーもいる。

13.エイズウイルスに感染した人は?
 エイズ患者、エイズウイルス感染者を多く診療している医療施設で、エイズ診療に取り組んでいる感染症専門医を受診するべきである。

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