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「海外赴任者のための予防接種」

海外赴任者の予防接種事情

中村 安秀
東京大学医学部小児科講師


1995年9月現在

1海外における予防接種の基本政策

 開発途上国と先進国では予防接種の基本政策は大きく異なります。
 主に開発途上国ではWHO(世界保健機関)やUNICEF(国連児童基金)の協力によるEPI(Expanded Programme on Immunization:予防接種拡大接種計画)を中心に予防接種が実施されています。乳児に対してBCG、ポリオ、DPT(三種混合)、麻疹を接種し、妊産婦には新生児破傷風の予防のために破傷風トキソイドを接種しています。現在、途上国を含んだ世界の乳幼児の予防接種率は約80%(1992年)といわれています。
 先進国ではEPIに準拠しつつ、各国の保健衛生状況に応じて各国独自の予防接種施策が行われています。北米や西ヨーロッパでは、予防接種を受けることは法律で義務付けられているのではなく、公的機関は情報を提供し接種時期を推奨する形を取っている国が多いようです。
 また、1990年の世界子どもサミットで採択された種々の目標のうち、予防接種に関する目標(表1)を具体化するための計画として、CVI(Children's Vaccine Initiative:子どもワクチン計画)が始まりました。CVIでは、従来の予防接種普及だけでなく、新しいワクチンの開発や途上国内におけるワクチンの品質管理や安定した供給体制の確立をめざしています。
 従来、日本の予防接種は先進国や開発途上国の予防接種スケジュールとは大きく異なっていました。
1994年10月の予防接種法改正により、国際的な予防接種システムとの差異がやや縮まったが、依然世界の中でも独自の予防接種システムを保持した国です(表2)。そのような基本認識に基づき、海外に赴任するときに受けておくべき予防接種や接種上の注意について考えていきます。

表1 西暦2000年までの目標(世界子どもサミット)
●小児の予防接種実施率:1才児の実施率を少なくとも85%に保つ
●ポリオ:2000年までに根絶する
●はしか:罹患数を90%減少させ、死亡数を95%減らす
●新生児破傷風:1995年までに根絶する
●妊娠可能年齢の女性:新生児破傷風予防のために全員に破傷風トキソイドを接種する

表2 開発途上国と先進国の予防接種の実際
 開発途上国と
先進国の予防
接種の実際
先進諸国の実際日本
予防
接種
接種
開始
年齢
接種
回数
接種
開始
年齢
接種
回数
接種
開始
年齢
接種
回数
BCG生下時1回接種せず 生後3ヶ月1回
ポリオ生下時4回生後
2-3ヶ月
3回
以上
生後
3ヶ月
以降
2回
DPT生後6週3回生後
2-3ヶ月
3回
以上
生後
3ヶ月
以降
4回
麻疹9ヶ月1回12-18ヶ月2回12-18ヶ月1回
破傷風妊産婦2回
以上
なし なし 
一般的な概略を表にまとめたもの。個々の国によって実際の予防接種方法は当然異なる

2主な予防接種とその対象疾患の世界状況

(1)BCG

結核の感染状況:
 世界の結核患者届出数(WHO)をみる限り、結核患者数は十年前に比べ減少するどころか、むしろ増加傾向にあります。開発途上国の結核患者は届出されたものだけでも約1,200人にひとりの患者が毎年発生しており、先進工業国の5倍近い発生率です。地域的には、中国、インドなどを中心としたアジア地域に多くの患者が発生しています。

先進国の接種状況:
 先進国では実施していない国が多く、アメリカ合衆国、カナダ、北欧、西ヨーロッパ(フランスを除く)、オーストラリア、ヨルダンなどではBCGを実施していません。BCGを行う前にツベルクリン反応を行っている国はフランス、ポーランド、ブルガリアなどです。また、アメリカ合衆国では小学校入学時のツ反が陽性の者は、全員胸部レントゲンを受けさせられます。

途上国の接種状況:
 途上国では生下時にツベルクリン反応をしないで直接BCG接種するのがふつうです。自宅分娩の場合は、はじめての健診時などにBCG接種を行うことが多いです。

日本の予防接種の特長:
 日本では管針によるスタンプ式の皮内接種を行なうが、これはわが国独自の方式です。接種後に針の刺しあとが水疱状に発赤し、成長後も刺しあとが長く残るが、これがBCGの皮内接種の跡であることは外国人の医師も知らないことが多い(外傷と間違えられることがあるので、その時はよく説明をすることが必要です)。多くの国では、ふつうの注射針による皮内接種法で実施されています。

(2)ポリオ

ポリオの感染状況:
 WHOやユニセフでは2000年までにポリオを地球上から根絶することを目標に積極的なワクチン接種と急性麻痺患者の監視に精力を注いでいます。
その成果として、全世界でのポリオ接種率は79%(1992年)にまで上昇し、ポリオ患者数は14,463人にまで減少しました(1993年)。患者数の多い国は、インド、中国、パキスタン、ベトナム、エジプトなどがあげられます。アメリカ大陸全体では1991年のペルーでの患者を最後にポリオ患者発生ゼロが続いており、地域的なポリオ撲滅に成功したと考えられています。しかし、オランダで1992年に68人のポリオ患者が発生したという事件もあり、先進国においてもポリオの心配が全くないわけではありません。

先進国の接種状況:
 ポリオはすべての国で3回以上投与されていました。先進国の多くは5回以上投与しています。先進国、開発途上国を問わず、ほとんどの国で生後2カ月以内に投与を開始しています。不活化ワクチン(ソークワクチン)を使用している国が増加しており、DPTワクチンとの合剤として「DPT+P」で実施している場合と不活化ワクチン単独で実施している場合がありました。具体的には、カナダ・オランダ・フィンランド・フランス・スウェーデン・デンマーク・英国などの一部で不活化ワクチンが使われています。

途上国の接種状況:
 開発途上国では、生後2‐3カ月からの3回投与に加え、生下時にも生ワクチンを投与することが推奨されています。一般に、コールドチェイン(ワクチンの保管運搬に際して冷凍冷蔵設備が整備していること)の不備などによりワクチンの力価にはやや疑問が残ります。しかし、日本人がよくかかる首都の私立病院などでは冷凍冷蔵設備が完備しているので、ワクチンの効力には心配ないことが多いです。

日本の予防接種の特長:
日本では生ワクチンの経口投与が2回行なわれるが、2回だけで済ませている国は世界中で日本だけです。2回の投与だけではポリオのⅠ型とⅢ型に対する抗体価の上昇が十分ではありません。ポリオの2回投与を済ませている小中学生を対象にした調査では、Ⅰ型で20-40%、Ⅲ型で7‐15%の子どもが抗体陰性であり、ポリオウイルスに接触したときに発症する危険性があります。
 また、成人には注射で行なう不活化ワクチンが推奨されているが、残念ながら日本では入手できません。

(3)DPT(三種混合)

ジフテリア、百日咳、破傷風の感染状況:
世界的には、これらの疾患に対する信頼できる患者統計はありません。日本と比べると、開発途上国の子どものジフテリア、百日咳は決して少なくありません。最近はロシアでジフテリアの流行があったように、いわゆる途上国以外でも流行の危険性はあります。
 破傷風は生活環境や習慣とも大きく関係しています。開発途上国ではへその緒を竹刃で切ったりする不潔な出産手技に起因する新生児破傷風で亡くなる新生児が51万人もいると推定されています。成人の破傷風もしばしばみられ、医療の整備されていない国では死亡率は非常に高いです。

先進国の接種状況:
DPTはポリオと同時に接種される国が多いです。
接種回数はすべての国で3回以上であり、5回以上の国も少なくありません。また、1歳までに3回の接種を済ませ、百日咳、ジフテリア、破傷風に対する抗体を獲得させるようにしています。
 4‐6歳ごろの追加接種はDT(二種混合)で行ない、それ以後の追加は破傷風トキソイド単独で行なっている国が多いです。

途上国の接種状況:
DPTはポリオと同時に接種される国が多いです。
接種回数はすべての国で3回以上であり、1歳までに3回の接種を済ませます。追加接種は行なっていない国が多いようです。

日本の予防接種の特長:
DPT接種後の死亡事故が起こったことを契機に、日本では無菌体百日咳ワクチンが開発され、1981年より改良型の沈降精製DPTワクチンが使われています。従来の全菌体百日咳ワクチンに比べ、発熱発赤などの副作用は非常に少なくなりました。
現在、この改良百日咳ワクチンはアメリカ合衆国の追加接種に用いられているだけです。
 成長児や成人に接種しても副反応の少ない成人型沈降ジフテリアトキソイドは日本でも製造されているが非常に入手しにくいのが欠点です。

(4)麻疹・MMR

麻疹・風疹・おたふくかぜの感染状況:
はしかは世界で年間数十万人が死亡しています。
その多くは開発途上国ですが、先進国でも小流行が繰り返されています。風疹とおたふくかぜの発生状況に関する成果的な信頼に足る調査はありませんが、日本の感染症サーベイランスでも風疹は毎年5万人近くの患者があります。途上国、先進国を問わず、感染の可能性は少なくありません。

先進国の接種状況:
先進国では基本的にMMRを1歳すぎに接種しています。MMRを接種している国の多くは追加接種を行っていますが、その時期は4歳すぎから12歳ぐらいまで国によって異なります。シンガポールなどのように、初回投与は麻疹ワクチンを使用し、追加接種でMMRを使用している国もあります。
 MMRの副作用に関しては、アメリカ合衆国ではJery1‐Lynn株によるMMRを1975年以後8千万回接種していますが重篤な副作用はほとんどなく、英国では1万1千回に1回の割合で無菌性髄膜炎を起こすという報告があります。

途上国の接種状況:
開発途上国では9カ月に麻疹ワクチンを接種する国がほとんどです。追加接種を行っている途上国は少なかった。

日本の予防接種の特長:
 MMRワクチンが1989年から導入されましたが、統一株(はしか;AIK-C、風疹;TO336、おたふくかぜ;占部Am9)ため、1993年4月より国内でのMMR接種は中止されました。そのため、はしかワクチンを単独で接種し、希望者には風疹とおたふくかぜを個別に接種するという先進国では極めて異例の方式が採用されています。

(5)B型肝炎ワクチン

B型肝炎の感染状況:
B型肝炎はアジア地域では数%の高いキャリア率を示しています。輸血時のチェック、ディスポ注射針の不十分な普及などの要因以外にも、性交を通じての感染、母子感染がみられます。アジア諸国の性的産業の従事者のB型肝炎キャリア率は多いところでは40%以上にのぼります。

先進国の接種状況:
WHOではB型肝炎対策として、キャリア率8%以上の国では1995年までに新生児全員に対するワクチン接種を開始し、全世界的には2000年までにすべての出生児にワクチンを接種する計画です。これに従い、アメリカ合衆国では新生児全員に対するB型肝炎ワクチンの接種を開始しました。

途上国の接種状況:
中国、タイ、韓国、台湾、シンガポールなどアジア諸国を中心に新生児全員にB型肝炎ワクチンを接種するプログラムが開始されています。費用が高いので国家施策として新生児へのワクチン接種プログラムができていない国でも、病院では自費によるワクチン接種を行ない、B型肝炎母子感染予防をおこなっています。

日本の予防接種の特長:
B型肝炎のe抗原陽性の妊婦から生まれる新生児だけを対象にB型肝炎ワクチンの接種を行っていましたが、1995年からB型肝炎キャリア妊婦から生まれた新生児全員に対象を拡大しました。日本のB型肝炎母子感染予防プロトコールは、出生時に臍帯血を検査し、B型肝炎免疫グロブリンを2回投与し、B型肝炎ワクチンを3回投与するという恐らく世界で最も複雑な方式を採用しています。

(6)A型肝炎ワクチン

A型肝炎の感染状況:
A型肝炎は東南アジア、中国、中南米、地中海沿岸地域などでは、かつての日本と同様に、小児期にほぼ全員が一度は罹患するありふれた疾患です。小児では不顕性感染(ウイルスが入っても無症状ですむこと)で終わることが多く、また発病しても軽症ですむことが多いです。

先進国の接種状況:
ベルギーでA型肝炎ワクチンが開発され、欧米諸国では途上国へ行く旅行者や赴任者の希望者には接種されていました。

途上国の接種状況:
東南アジアの多くの国や中南米の一部の国ではベルギー製のワクチンが認可され、私立病院において都市部住民や居住外国人に対して有料接種が行なわれています。

日本の予防接種の特長:
乾燥不活化ワクチンがやっと認可され、1995年6月より接種可能となりました。2‐4週間隔で2回接種し、初回接種の6カ月後に追加接種することにより、3‐5年の有効免疫が獲得されます。急ぐ場合には、2回だけでも、6カ月から1年半は有効といわれています。予防効果や持続性の点からみると、従来行なわれていたヒト免疫グロブリンの接種は、短期間のうちにこのA型肝炎ワクチンに切り替わるでしょう。

(7)黄熱ワクチン

黄熱病の感染状況:
WHOが定めた国際保健規則(lnternational Health Regulation)により、入国者に接種を義務付けることのできる唯一の国際伝染病です。WHOにより定められた1996年現在の流行地は、アフリカと中南米の赤道をはさみ南北緯度15度以内の地域を中心に拡がっています(図1)。1992年以来発生数は著明に減少し、93年にはわずかアフリカと中南米の8カ国で発生したにすぎません(表3)。
しかし、旅行や居住を問わず、黄熱の流行地域に入るには黄熱ワクチンの接種が義務付けられています。また、多くの国では国内での流行を防ぐために、流行地から入国する旅行者に黄熱ワクチンを接種した証明書(イエローカード)の提示を求めています。

図1 黄熱の流行地域(WHO INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH 1996)

表3 1993年の黄熱患者の発生報告数(WHO、1995年3月)

  国名 発生数 死亡数
(アフリカ) ナイジェリア 152 8
ガーナ 39 15
ケニア 27 15
(中南米) ペルー 89 47
ブラジル6617
ボリビア1814
コロンビア11
エクアドル10
総 計 393117

日本の予防接種の特長:
弱毒生ワクチンの免疫効果は高く、接種後10日目で効力が生じ、10年間持続します。ふつう 1歳以上が接種の対象となりますが、国によっては6カ月以上の小児には接種を要求される場合もあります。日本では、横浜にある日本検疫衛生協会と各地にある13カ所の検疫所で接種ができます。

(8)インフルエンザb菌ワクチン

インフルエンザb菌髄膜炎の感染状況:
アメリカ合衆国では5歳末満の子どもの細菌性髄膜炎の70%はへモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hibという。インフルエンザウイルスとは全く別のもの)で生じ、1987年にワクチンが実施されるまでは年間8,400人の小児が罹患していました。

先進国の接種状況:
アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、フランス、イギリス、スウェーデン、オーストリアなど欧米諸国を中心に実施されています。生後2‐5カ月に接種開始し、3回接種する国が多いです。アメリカ合衆国では1987年から接種が行われ、インフルエンザb菌髄膜炎による死亡率と確病率の著明な減少を見ました。

途上国の接種状況:
開発途上国でルーチンの予防接種として実施している国はありませんが、私立病院などではワクチン接種が有料で可能な場合もあります。

日本の予防接種の特長:
日本ではワクチンは認可されていないので、接種することはできません。


3 乳幼児の予防接種の受け方

 海外に子どもを連れて赴任する場合は、赴任する国によって日本で受けておくべき予防接種の種類は大きく異なります。
 先進国においては予防接種を含む保健医療サービスの質は日本と比べても遜色ないので、基本的には予防接種は日本で受けられるだけ受けた後は赴任国の予防接種を受けるのが現実的です。
 途上国の場合でも、アジアや中南米の国々では一定の保健医療水準に達している国が多いので、心配することなく現地で予防接種を接種できます。現地の公的機関ではなく、私立病院や個人診療所で有料の予防接種を受ければ、ディスポの注射器や注射針を使うので安全性が高いです。
 途上国の中でもとくに経済状況の悪い国では、日本人の子どもが保健医療を安心して受けられる医療機関が限られている上に、コールドチェインの不備によるワクチン自体の信頼性の問題があるので、できるだけ日本での接種を勧めたい。やむを得ないときには、近隣の安心できる国で予防接種や健診を受けたほうが望ましい場合もあります。

表4 予防接種一覧

 赴任前における最大の問題点は、十分な予防接種を済ませるだけの時間的余裕がないことです。かつては定期接種以外の時期に予防接種を受けることのできる医療機関が非常に限られていましたが、現在は日本の各地で予防接種センターや予防接種外来が開設され、ずいぶん状況は改善しました。しかし、海外赴任先が決まってから実際に現地にいくまでの限られた期間に、数種類の予防接種を順序よく受けるのは至難の技です。(表5.接種間隔がずれた場合の予防接種参照)
 以下に乳幼児にとっての予防接種の優先順位を個人的見解としてつけてみました。もちろんこの順序はあくまでも一般論であり、赴任地や子どもの年齢、兄弟の有無などひとりひとりの事情により、優先度が違ってきます。なお、複数の予防接種を同じ日に接種する方法は世界中で行なわていますが(WHOも推奨している)、1994年から日本でも医師の裁量で接種ができるようになりました。医学的には全く問題ないので、時間がないときにはぜひ同一複数接種で手早く必要な予防接種を済ませたいものです。
 また、先進国の多くでは小学校入学時に(時には大学入学時にも)予防接種証明書が要求されることがあります。とくに、はしかとポリオはきちんと受けるようにお勧めします。そのためには、あらかじめ英文の予防接種証明書の原型を作成しておくことが望ましいものです。東京大学附属病院小児科の「国際外来」で使用している予防接種証明書を例示しておきます(表6)。英語の証明書に日本での公印や個人の押印は必要ありませんが、医師の直筆のサインは欠かせません。

表5 接種間隔がずれた場合の予防接種
 予防接種の時期に海外や日本を行き来しているうちに、通常の予防接種スケジュールを受けられなかった子供は少なくない。以下は、そのような子供に対する医学的にみたアドバイスである。
1 DPT
1期1回のみ
  2回接種し、通常の追加接種1回とする
1期2回のみ
  6ヶ月異常感各が開いたときは、追加接種1回6ヶ月未満なら、3回目を接種し、通常の追加接種1回をする
1期3回のみ
  1年半以上間隔が開いても、通常の追加接種1回。ただ、年齢が90ヶ月以上なら、DTを追加接種1回
2 ポリオ
1回のみ
  投与間隔はいくら離れてもいいので、2回目を投与
2日のみ
  投与間隔はいくら離れてもいいので、途上国へいくなら3回目を投与
不活性ワクチンで接種
  生ワクチンと効果は大差はない。むしろ、回数が大切。
3 日本脳炎
1期1回のみ
  1年経過していれば、2回接種するか、1回接種して翌年追加接種を1回する
1期2回のみ
  2年以上経過していても、追加接種1回

(1)BCG
時間のない時でも、生後1カ月をすぎていれば、ぜひ接種しておきたい。とくに、途上国では結核はありふれた病気。また、先進国では一般にBCG接種をしていない国も多いです。また、世界的に見て、日本のBCG株は優秀です。

(2)ポリオ
2回接種では不十分。海外にいく場合には、年長児においてもぜひ3回目を追加接種しておきたいものです。世界的にはポリオ根絶計画により患者数が減少しておりアメリカ大陸は全域でポリオ患者ゼロが続いていますが、中国やインドなどポリオが常在している国もまだまだ少なくありません。

(3)3種混合
日本の改良型3種混合ワクチンは優秀なので、できれば日本で済ませたい。とくに、途上国では破傷風の罹患率が高いので、破傷風の抗体獲得のために最低2回は接種しておきたい。前回接種後10年をすぎていれば、小学生以上でも2種混合、あるいは破傷風の追加接種が必要です。

表6 英文予防接種証明書の実例


(4)麻疹
基本的には、1歳半までには受けておきたい。アメリカ合衆国などでは集団生活の前に麻疹の予防接種証明書を要求されるので、幼稚園や小学校などに入る予定の子どもは必ず麻疹の予防接種を受け、その証明書を携行することが必要です。また、途上国では麻疹は非常に多いので、1歳半までには受けておきたい。
 先進国に赴任する場合は、現地でMMRを受ける方法も勧められます。

(5)おたふくかぜ
先進国でも途上国でも、おたふくかぜ単独ワクチンを常備していない病院も少なくありません。筆者は、先進国に赴任する場合は現地でMMRを受ける方法を勧め、途上国へ行くときは家族の希望がありなおかつ時間的な余裕があれば日本での接種を勧めています。

(6)日本脳炎
中国、韓国、ベトナム、タイ、スリランカ、インド、ネパールなどに長期間住むときには、日本のスケジュールでの接種が望まれます。先進国に行くときには、基本的に必要はないので、帰国後に接種すれば十分でしょう。

(7)風疹
先進国でも、男女小児に幅広く接種し風疹の流行をなくそうという考えの国と、女子への接種を中心にして先天性風疹症候群を防ぐという考えの国があります。途上国では、保健政策としては採用されていないので私立病院での個別接種となります。筆者は、先進国に赴任する場合は現地でMMRを受ける方法を勧め、途上国へ行くときは家族の希望がありなおかつ時間的な余裕があれば日本での接種を勧めています。

(8)水痘
日本で開発された生ワクチンです。感染予防効果は他のワクチンに比べて弱く、家族に水痘が発生したときは、ワクチンを接種していても20-50%が発病するがその症状は比較的軽いといわれています。アメリカ合衆国では1995年に認可されたが、欧米諸国では一般健康小児への接種はまだ認可されていない国が多い現状です。
 筆者は、どうしても水痘にかからせたくないという家族の強い希望があれば、ワクチン接種後も罹患する可能性が少なくないことを納得した上で接種しています。優先順位は落ちるので、他の予防接種の接種が済んだあとに接種することになります。


4大人の海外赴任者に対する予防接種の勧め方

 予防接種は子どもだけでなく、大人にとっても必要です。非常に簡略に疾患ごとの基本方針をまとめてみました。

(1)破傷風
1968年から日本での接種が開始されました。27歳以上の人は免疫をもっていない可能性が高いので、基礎免疫(4‐8週間隔で2回)をぜひ受けたい。
WHOでは小児期に予防接種を受けた人に対しても、10年間隔で破傷風トキソイドの接種が勧められています。最近10年間で予防接種を受けていない人は、ぜひ追加接種を受けておきたいものです。
 海外では、先進国でも思わぬ所で小さな外傷を生じやすく、途上国では破傷風の罹患率が高く、適切な医療の保障がない国が多いからです。

(2)ポリオ
過去に2回接種していれば、1回追加するだけで十分です。過去に一度も接種していない人は、接種を見送った方が無難でしょう(本来は、この場合は不活化ワクチンが望ましい)。

(3)A型肝炎
40歳以下の人では、A型肝炎の抗体をもっていない人が多い。アジア、アフリカ、中近東、中南米にでかけるときは、不活化ワクチンの接種を受けておきたい。

(4)B型肝炎
医療関係者や、家族にHBs抗原キャリアがいる場合は接種しておいた方が無難でしょう。基本的には、血液、性行為、不潔な針などを介して感染します。
東アジア、東南アジア、アフリカなどに長期に滞在する人は、予防接種をすすめたい。

(5)黄熱病
アフリカ、中南米の多くの国では、入国の際に接種証明書(イエローカード)が要求されます。1歳以下(国によっては6カ月以下)の乳児では免除されるが、できれば医師による予防接種免許証明を持参した方がいいでしょう。接種後10日で効力が生じ、10年間有効です。日本では各地の検疫所で接種できます。

(6)コレラ
予防接種(1週間間隔で2回)の効果は約50%で3‐6カ月間のみ。WHOはコレラワクチンの推奨を取り止めました。コレラに罹患した際も、早い時期に適切な輸液をすることが最も大切です。1994年現在、入国時にコレラ証明書を要求する国は皆無です。

(7)狂犬病
世界的には狂犬病のない国の方が珍しい。都会の住宅地に住む場合には、特に必要はありません。農村や森林地帯に住む場合、動物と接触する職業など危険性の高い人は、予防的ワクチン投与(3回:初回、2週後、6カ月後)が必要。日本の狂犬病ワクチンは組織培養(ニワトリ胚細胞)ワクチンであり、安全性が高いです。しかし、途上国では副作用の強い動物脳由来ワクチンを使用している国もあるので注意が必要。

(8)日本脳炎
中国、韓国、ベトナム、タイ、スリランカ、インド、ネパールなどの農村に多いので、地方に長期滞在する人は基礎免疫(1週間隔で1mlずつ2回、1年後に追加接種)をつけておきたい。日本では不活化ワクチン(北京株)を使用しています。

(9)腸チフス
経口生ワクチン(3回:0、2、4日)が開発され、効果も80%以上といわれ、欧米では実用化されています。残念ながら、日本では入手不可能なので、途上国に住む場合には、現地の医療機関で接種したい。

(10)マラリア
マラリアの危険度をWHOではABCの3 ランクに分けています(図2)。各々の地域により、予防内服の選択が異なるので最新のWHO情報を参照して下さい。基本的な予防薬はクロロキンですが、アフリカやアジアなどクロロキン耐性の多い地域ではメフロキン、ドキシサイクリンなどが使用されます。いずれも、日本では一般に入手できないので、現地に着いてから薬を購入するか(多くの国では抗マラリア薬は入手しやすい)、日本の厚生省熱帯病研究班の班員の先生から抗マラリア薬の頒布を受けることになります。
  日本で入手可能な抗マラリア薬であるファンシダールは予防内服薬として服用すると強い副作用が生じるので注意が必要です。(WHOでは予防内服薬としてファンシダールを禁忌にしている)



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