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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場からⅡ (2)シンガポールの現地精神科医師
NL12010102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス / / / / / / / / / / /



海外メンタルヘルスの現場からⅡ
(2)シンガポールの現地精神科医師


シンガポール日本人会クリニック
日暮真由美

心療内科は、本来は身体に症状が出ている心身症などの身体疾患を扱う内科です。しかし、ここシンガポールでは日本人の精神科医師がいないために、日本では精神科で扱われる精神疾患も当クリニックの心療内科で診療せざるを得ないケースも少なくないのが実情です。日本では精神科が主に診療する疾患の代表として、重症なうつ病、双極性障害(そううつ病)、統合失調症などがあります。

心療内科でも精神科でも、患者さんと治療者の間の言語コミュニケーションは言うまでもなく大変重要で、原則は患者さん、治療者側の双方が同じ母国語、同じ文化背景を持つべきと考えられています。

その原則は大事と私も考え、当院の心療内科で何とかできそうなうちは頑張って診療し、現地の精神科医師に紹介するのはどうにも手段がなくなったぎりぎりの場合と考えていました。また、日本人の患者さんたち自身が日本語で診察を受けることをとても重要視していること、たとえ英語や中国語が堪能な患者さんでも体調が悪いときは外国語を話したくなくなっていることなど、患者さんたち自身に文化背景が異なる外国人医師への拒否感が大きいことも事実です。

しかし、この1年ちょっとの間で何例かの患者さんを当地の精神科医師数人に紹介して治療をお願いする機会があり、私の考えも今少しずつ変わってきています。

シンガポール自体が中華系、マレー系、インド系、そして世界各地からの多数の外国人在住者からなる多民族国家です。当地の精神科医師は患者さんの文化背景が多種多様であることに大変慣れており、また、日本人の文化、社会やものの考え方の特殊性にもかなり精通されていることに驚きました。しかも、私が紹介したケースでは紹介先での投薬治療がいずれもうまくいっており、中には、日本語同士でない分かなり不十分な面があると思われるのに果敢に踏みこんだ心理療法も行ってくれているケースもあります。日本ではまだ個人輸入するしかないような新薬も、こんな風に使うのかと大変勉強にもなります。当地の精神科医師は、我々日本人が思っているほど言語や文化の違いを大きな壁とは考えていないようなのです。シンガポールの精神科医師のレベルの高さと真摯な診療の姿勢を知り、これまで紹介を遅らせ気味であったことは大変勿体なかったのではないかと気づくに至りました。

現地医師に紹介した後も、患者さんが当院での併診を希望することがほとんどです。よって、私も引き続き同時に患者さんを診療して行き、患者さん自身や通訳を介してではうまく医師に伝えられなかったことや、治療に必要と思われる事項を、私から先方医師に伝え、連携をとりながら治療を継続していくようにしています。