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ニュースレター(機関紙)

小児科医からのアドバイス 6 ポリオワクチン
NL11120103
医療情報、小児科、海外渡航 / / / / / / / / / / /



小児科医からのアドバイス6 ~ポリオワクチン~


東京医科大学病院
渡航者医療センター
小児科医師 福島慎二

今月は、皆さんにとって、関心の高いポリオワクチンについて話をします。
生ワクチンに伴う副反応の心配から、不活化ポリオワクチンへの要望が高まっており、 最近は不活化ポリオワクチンを個人輸入して接種をする小児科のクリニックもあります。
では、ポリオという病気とポリオワクチンの説明を中心に話を進めます。

【ポリオって】
ポリオは、ポリオウイルスによっておこる感染症です。主に四肢に非対称性のマヒをおこす重症な病気で、「小児マヒ」とも呼ばれます。このウイルスは、感染したヒトの便中に出されたウイルスが、ヒトの口から入ってのどや腸に感染し増殖したあと、体の中の血液や脊髄に侵入します。脊髄の神経細胞を傷害し、マヒを起こします。
 
ただし、ポリオウイルスは、感染しても約90%のヒトが無症状ですみます。その他、5%程度のヒトが風邪のような症状でとどまり、約1%のヒトが髄膜炎を起こします。実際にマヒをおこすヒトは1%未満です。ところが、ヒトに感染すると、症状があってもなくても、約3-6週間はウイルスが便から出ていて、感染したヒトは、他のヒトへの感染源となりえます。
そのため、ポリオの患者さんが1人いた場合、その周囲に、ポリオウイルスに感染した人が多くいて、さらに感染源となると考えられます。

【では、現在、ポリオはどこで常在しているの?】
日本では、1980年以降、野生のポリオウイルスによるポリオ患者は発生していません。また、1984年以降は、野生のポリオウイルスが国内では検出されなくなりました。
 
では、ポリオはどこに常在しているのでしょうか。現在は、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン、インドといった、主にアフリカと南アジアで常在しています。しかし、周辺の国々でも、ポリオの患者が発生しています。たとえば、2010年にはタジキスタンで400人以上の流行が起こり、今年7 月には、中国の新疆ウイグル自治区で4 例のポリオ患者が発生し、その後、10 月中旬までに計18例の患者が確認されています。

このように、世界的には、野生のポリオウイルスが存在しており、ヒトの移動に伴い、他の地域にも拡大する可能性があります。そのため、現在日本に野生のポリオウイルスが存在しなくても、ポリオワクチンを続けていかなければならないのです。

【ポリオワクチン】
さて、ポリオワクチンには、弱毒生ワクチンと不活化ワクチンの2種類あり、どちらも利点・欠点がありますが、現在、日本では、弱毒生ワクチンが使用されています。

弱毒生ワクチンは、飲むタイプのワクチンであり、0.05mlを口の中に注入します。方法が簡単で、集団で接種を行うことに適しています。ワクチンの中のウイルスは弱毒化させていますが、生きていますので
のどや腸で増殖し、また便にも出ていきます。そのため、腸や血液に免疫がつきやすい利点があります。さらに、周囲のヒトに感染することにより、集団として免疫をつけることができることも利点です。逆に、副反応として、ワクチンを飲んだヒトがマヒをおこす可能性が、添付文書では約450万人に1人という割合と記載されています。

不活化ワクチンは、0.5mlを注射します。注射ワクチンであり、腸の免疫はつきにくいといわれていますが、血液に免疫がつくため、ポリオの予防はできます。先進国を含めた海外では一般的に使用されており、主な副反応は、注射部位の痛み、発赤で、重篤な全身性の副反応は稀であり、安全性が確認されています。しかし、現在の日本では未承認であるため、日本で不活化ワクチンを接種する場合には海外から個人輸入をしているクリニックなどに限られることと、一般的には副反応に対する補償制度がありません。
  
【ワクチン接種率がさがると、】
最近の日本における問題点は、乳幼児のポリオワクチンの接種率が低下していることです。弱毒生ワクチンに伴う副反応への心配から、接種を見送っている方が多いためと推測されます。しかし、上記で示したように、国内のポリオワクチン接種率が低下していると、野生のポリオウイルスが侵入してきた場合に、ポリオの流行がおこりえる可能性がありえるため、ポリオワクチンは、月齢、年齢相応に接種しておくことをお勧めします。

さて、12月10日の夜は、皆さん、空を見上げましたか? 澄んだ夜空に浮かぶ、幻想的な赤い月。最高の「皆既月食」の夜でした。次に国内で観測できるのは、約3年後の2014年10月。ぜひ、次回も、心にやきつけたいと思います。




◇編集部より◇ 新年号より新たに渡航医学に詳しい小児科の先生からご寄稿をいただいております。昨年9月より東京医科大学病院に開設された渡航者医療センターでご活躍中の福島慎二先生が隔月で登場です。子ども帯同の海外渡航者には心強い専門家です。読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。
●「小児科医からのアドバイス」索引コーナー
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著者の所属先サイト:東京医科大学病院渡航者医療センターはこちらから
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/index.html