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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場からⅡ ~(1)海外医療情報交換会に初めて参加して~
NL11110102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス / / / / / / / / / / /



海外メンタルヘルスの現場からⅡ
~(1)海外医療情報交換会に初めて参加して~


シンガポール日本人会クリニック
日暮真由美

はじめまして。昨年秋よりシンガポール日本人会クリニックの心療内科をお手伝いするようになり、2011年4月からは日本へ帰任された小川原純子先生のあとを引き継いで担当させて頂いております。どうぞよろしくお願いいたします。

10月26日にJOMFの海外医療情報交換会に初めて参加させて頂きました。そして、たくさんの企業人事の皆様や社員の健康管理に日々従事されている皆様にお会いすることができ、海外駐在員の健康管理への熱意をひしひしと感じることができました。

お伺いしたお話の中で印象的だったのは、何とか社員の力になってやりたいのに、メンタルヘルスの場合は本人が「調子が悪い」と申し出てこない限りは会社としてはどうしようもできない、という悩みが多かったことです。たとえ健康診断にメンタルヘルスのチェック項目があっても、申告してこないケースが相当例あるのではないか、ということでした。また、健康管理をする部署が人事部の中にある場合と、人事部とは別個に外にある場合とでは、社員の意識や対応が大きく違うとのお話もありました。人事部の中にあればメンタルヘルスの問題が人事に即影響するのではと戦々恐々する、人事部の外にあれば相談はしやすくなるかもしれないが、反対に会社全体への影響力が小さい部署なので頼られにくくなる、という悩みも伺いました。

当院の心療内科外来で見る疾患は一番多い順に、不安障害(パニック障害、全般性不安障害、社交不安障害、強迫性障害など)、気分障害(うつ病、そううつ病)、適応障害となっており、この三疾患で全体の8割近くを占めます。そのうち、今年度に初診された不安障害の方の20%、今年度に初診されたうつ病の方の62%が、シンガポールに赴任前にすでにそれらの病名の診断を受けていて、治療継続中にシンガポールに赴任(駐在員本人もしくは家族)されてきた方でした。

これらの治療継続中の方のほとんどが病気のことを会社には知らせていらっしゃいません。理由は、帰国させられる、降格させられる、クビにされるという会社の対応を恐れるものだったり、心の病気だと皆に知られたくない、周りに迷惑をかけたくないという自分自身の思いだったりします。たしかに、うつ病や適応障害は海外生活継続を妨げる大きな原因となるため、帰国や部署変えを余儀なくされるケースもあります。当院で今年度に初めてうつ病もしくは適応障害と診断されたケースで、すでに日本帰国の対応となった方は駐在員で数名にのぼっています。

しかし、私が交換会でお会いした企業の皆様は、メンタルヘルスの問題を抱える社員をもっとずっと暖かく迎え入れる準備をしており、本人の知られたくないという恐れとの間に大きなギャップがあるように感じました。本人の恐れはまじめな性格からきているものでもあるし、病気が言わせているものでもあるかもしれません。会社によってはその恐れどおりの対応をするところもあるかもしれませんが、少なくとも交換会にいらっしゃっている企業の多くは、悩んでいる社員を早く把握すること、積極的にサポートすることに、とても真剣に取り組もうとしていると感じました。

健康管理と、ときには医療費のほとんどさえも、社員個人の自己責任とするのが外国の企業では多い形態に思われます。対して、法律に基づいてもいる日本企業の健康管理の姿勢は世界的に見ても珍しいのかもしれません。日本にJOMFのような組織があること自体がいかに頼もしいことなのかを知ることになった、私の初の交換会でありました。





編集部より
今月よりシンガポール日本人会クリニック心療内科担当の日暮真由美先生に隔月で連載頂くことになりました。既に10月の情報交換会でのデビューも終え、こちらのシリーズも小川原純子先生からバトンタッチで“海外メンタルヘルスの現場からⅡ”として再スタートします。シンガポール日本人会の会報「南十字星」にはこれまで何度も寄稿されてますので既にご存じという方もいらっしゃるかもしれません。親しみやすくノリのいい記事でファンになった当編集部担当から、今回依頼したところ連載を快諾いただきました。
これからもどうぞお楽しみに。