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ニュースレター(機関紙)

(新シリーズ)海外生活を支える活動のご紹介(1)住友商事グループ SCGカウンセリングセンター ― その概要と海外へのサポート ―
NL11090104
海外派遣、メンタルヘルス / / / / / / / / / / /

■新シリーズ■~海外生活を支える活動のご紹介~(1)
海外生活者のためのメンタルヘルス対策はじめ各種のサポート活動を随時ご紹介するコーナーを開始します。
長年シンガポール日本人会クリニックで心療内科医として活躍された小川原純子先生のご帰国に際し、『日本でもいろいろなところで海外赴任者のためのメンタルヘルスを支える活動が行われており、せっかくなのでそのような活動を紹介する機会を持っては』とのご提案を頂きました。
先日、会員として長期にわたりご支援を頂いている住友商事株式会社様にお伺いしてカウンセリングセンター見学の機会に恵まれました。本社とは別のビルに配置されていること、プライバシーに配慮した内装の心地よさ、秘密厳守の原則等々、、いかに頼もしさと羨ましさを感じたか、挙げればきりがありません。
今回、センター長の氏橋様によるご寄稿を掲載させていただくことができました。住友商事株式会社様、カウンセリングセンターご関係の皆様のご厚意に感謝申し上げます。

これからも引き続き、海外生活者のためのメンタルヘルスおよび各種のサポート活動を随時ご紹介して参ります。





住友商事グループ SCGカウンセリングセンター
 ― その概要と海外へのサポート ―



住友商事グループ
SCGカウンセリングセンター
センター長 氏橋 隆幸 
         
1. SCGカウンセリングセンターの設立経緯
住友商事グループでは、2005年4月から、ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関連する諸施策を本格的に導入開始。その一環としてグループ会社も含めた社員(約1万名)を対象とした相談室「SCGカウンセリングセンター」(Sumitomo Corporation Group - Counseling Center:略称SCG-CC)が設立された。

通常この種の施設は、メンタル不調者の増加への対応策として作られる事が多いが、WLBの枠組みの中で、企業内保育所やマッサージルームと同じ並びの中に、この相談室が作られた点が大きな特徴といえる。

2. 相談室の概要
2005年の立上げ当時の体制は、センター長、カウンセラー、事務職各1名の合計3名体制。センター長には、それまでカウンセリングは勿論、人事関連業務の経験も無い筆者(当時53歳、海外駐在3カ国 計15年)が起用された。

相談室の場所は、住友商事本社やグループ会社のある「晴海トリトンスクエア」内で、関連会社の少ない別棟のフロアに設置。利用者が短時間でしかも他の社員の目に付きにくい形で来訪出来るような配慮と、「相談室」に対する従来のイメージを変えたいとの意図を込めての決定であった。

=相談室の様子=





3. 運営方針
相談室の運営方針として下記二つの点を開設当初より定め、堅持している。 
① なんでも相談(仕事以外のどんな分野の相談でも受付)
② 守秘義務順守(相談内容は、上司や人事関係者には決して明かさない)
上記のうち②の守秘義務方針を貫くことについては特に留意をしている。これによるデメリット(相談者が自ら行動を起こすまで待つ必要がある、組織上必要な対応は現場任せとなる、復職には直接的には関われない、等)もあるが、下記のごとくそれを上回るメリットがある事が、6年間の活動を通じて実証された。 
・ 他者に知られるという懸念が無いことで、多数の相談者が来訪
・ 相談者が自ら動いて問題を解決することで、問題への対処能力が身につく
・ 会社がこのような場を作り、守秘義務方針をサポートしている事が、従業員の会社に対する信頼感と安心感を高める

 
4.活動の拡大・成果
開設初年度より、相談者(自主来談)は延べ200名を数え、企業内相談室としては非常に活発な利用がなされた。



グラフ1にあるように、その後も相談者数は伸び続け、2010年度には450人を超えた。この数字だけを見ると、「住友商事グループではメンタル不調者が毎年増え続けている」と誤解されかねないが、グラフ2の相談内容の中身の変化が示している通り、相談者数の増加は、男女とも「家庭や個人的な事柄」についての相談の割合が増えた結果もたらされたものである。



かつて日本人には、『人に悩みを話すのは恥、個人的な事柄は自分で解決を』との風潮が強かった。しかし、社会構造が複雑化した今日、単独では解決が容易でない問題も増え、その中には、結果的に生産性の低下や会社に大きな潜在リスクをもたらす可能性もある事柄も多く含まれている。従い、カウンセリングを通じてこれらの問題の解決の場を会社が提供する事の意義(効果)は非常に大きい。

相談室開設2年目以降、地方店所への出張カウンセリングなど活動範囲を順次拡大。カウンセラーの陣容も常勤・非常勤併せて7名に増加したほか、2010年末には、より利用しやすい場所に移転するとともに、面積も1.7倍(275㎡)に拡大した。

5.海外派遣員へのサポート体制
海外派遣員への対応については当初より課題として考えて来た。国内での相談対応体制を固め、従業員の間に『気がかりな事は小さなうちにSCG-CCに相談』との意識が浸透した基盤の上で体制作りに着手した。

まず海外担当のカウンセラーを起用、「メンタル関連でどういうサポートが必要か?」社内外の駐在経験者にアンケート・ヒアリング調査を行った。その結果を踏まえ、手始めに2009年の2月から、会社が海外赴任前の従業員及び帯同者に対し夫々隔月で開催している赴任前セミナーの中に「海外におけるメンタルヘルスケア」の内容を追加した。(各1時間枠)

このセミナーでは、海外駐在生活におけるメンタルヘルスケア上の知識・ノウハウを提供するほか、海外担当のカウンセラー(2名、海外駐在生活経験有り)を実際に目にすることにより、赴任に先立つ面談や、赴任後の電話相談への垣根を大きく引き下げる効果がある。2年半が経ち、海外に関し、「赴任前・赴任中・赴任後のトータルサポート」の体制が整いつつある。
 
6.実際の相談対応
上記のセミナーを開始して以降、毎月継続的に電話や面談が有る。海外の職場でのメンタル不調等の問題は、職制を通じて人事部等が直接対応するケースが多いことも有り、SCG-CCへの相談の大半は、家族関係に絡む問題や、子どもの教育問題等である。
海外赴任に伴い、家族関係が大きく変化することから派生して起こる問題についての相談が多くを占めるが、家族の特性を踏まえての関わり方」や「コミュニケーショントラブルへの対処」について、カウンセラーと話し合う中で解決策を見出すことで、駐在生活を維持する事が出来ている。

7.今後の課題
上記の海外相談対応以外では、海外の大規模店舗数か所に出向き、派遣員・帯同者、それぞれに対してメンタルヘルスセミナーや体験カウンセリングをトライアルで実施を始めたところである。小規模事務所ほど、メンタル面でのハードシップも高い可能性はあるが、今後更に実施店舗を増やす為にはそうした業務をこなせる人材(カウンセラー)を確保する必要がある一方で、それはなかなか容易なことではない。

弊社では海外駐在員は約1,000名、平均駐在期間は4~5年、毎年200人強が新たに海外に派遣されている。あと2年ほどセミナーを継続すると殆どの海外駐在員・帯同者はSCG-CCのセミナーを受講済みでカウンセラーの顔も認識していることとなる。
「何かあったら相談してみよう」と思える事がメンタル不調の予防という点で、非常に大きな効果があると実感している。

8.結びに代えて
いま日本の産業界は、グロ―バリゼーションの嵐の中で激動期に有る。各企業の営業の最前線で働く海外派遣員には、業績面で従来にも増して大きな負担がかかっている。
また、個人生活の面でも、子どもの教育問題や老親介護の問題など、これまで以上に大きな負担が派遣員・家族に対してかかってくる。

会社としてメンタル面でも従来以上のケアを提供することが必要とされているが、それによりメンタル不調に起因する各種のトラブルが未然に防止できる事で、会社にとっても大きなメリットがあると日々の業務を通じて確信している。

最後に、弊社でも海外での活動の展開を考えるにあたり、JOMFニューズレターの小川原純子医師の連載記事(今年3月まで)を大いに参考とさせて頂いた。
メンタル関連のサポート施策についても、内地側の各会員企業の担当者間での情報交換・ノウハウ共有が活発に行われるようになる事を願っている。