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ニュースレター(機関紙)

駐在員メンタル不調は経営リスク(2)痛みのサインを見逃さない
NL11050107
海外派遣、メンタルヘルス

駐在員のメンタルヘルス不調は経営リスク
(2)痛みのサインを見逃さない

株式会社MD.ネット代表取締役社長
医学博士 精神保健指定医 精神科専門医 
佐野秀典

海外駐在員、ご家族の方々との健康に関するやりとりで気が付くのは日常的な「痛み」を抱えている人が多いことだ。歯の痛みは別にして、首、胃・腸、頭、腰の順に多い。

首は、頭なのか肩なのかよくわからないのけど、首の付け根、肩の付け根のあたりが痛いという訴え。
胃腸は、きりきり痛むというものではなく「鈍痛」。しかも慢性的でいつも不快感を抱えている。時間が経過すると、胃なのか腸なのか、はたまた背中なのか本人もわからなくなってくる。
頭は、まさに頭痛。ある時間になるとズキズキするという。
腰は、ほぼ80%がゴルフの後(苦笑)である。
先日のコラムでも述べたが、我々は、「痛み」をメンタルヘルス不調を判断する上で非常に重要なサインとして捉えている。

「うつ病」に先行する身体症状
「うつ病」では、その発症前に何らかの身体症状が先行して出現することが多いが特に海外駐在員に注意しているのが原因のはっきりしない「疼痛(いたみ)」である。
これまでこれは、気分が落ち込んでいるから、あるいは疲労が溜まっているから、体調が悪いと考えられてきたが、最近の研究では、脳機能の乱れ初めの身体的な表現であるというのが通説となっている。

最近、それを裏付けるような興味あるデータを見つけたので、参考にしてもらいたい。これは、日本の診療報酬請求書(通称レセプト)の分析結果である。レセプト病名は、往々にして真の病名と異なり、投薬や検査などのために便宜的に付けられることもあるが、その結果は私にとってはかなり生々しいものであった。


この調査では、まず、うつ病が確定するまでの期間、徐々に増加してくる疾患、あるいは状態を分析している。期間は、2008年7月~2009年6月の1年間で、対象は、全て初発の「うつ病」と後で確定された20歳から59歳までの患者2500人である。ここでは、それらの各患者の「うつ病」発症直前の2年間を半年単位に分割し、疾患の出現率(当該疾患出現数/母数患者数)を調査している。

A) うつ病の2年前から徐々に増加している疾患
B) 直前の半年(グラフでは前6カ月を表示)で、出現率が3%を超える疾患

この調査の考察のなかで、著者は、年齢により自然に増加する疾患も含まれるとしながらも、「うつ病」の発症直前に急激に増えている疾患や状態は、年齢補正を行なった結果、加齢との相関はなかったとしている。出現率の高い疾患との因果関係や背景情報の詳細は不明とはいえ、参考になる結果である(図1)。



(上記の図をクリックすると拡大表示されます。)

まず、上記の条件に該当した疾患の中で、「うつ病」の診断名がつく直前の6カ月間に出現率が高かった疾患の1~20位までのランキングは上記の通りであった。
また、直前の半年間における出現率の上位20疾患には、精神・神経系の疾患から生活習慣病、消化器疾患までさまざまなものがあったが、トップは不眠症。胃炎などの消化器疾患も複数ランクインしている。また、「うつ病」の確定診断前2年間の出現率の増減カーブは疾患により異なるが、精神・神経系の疾患は、診断確定の直前で急増する傾向があった。
駐在員だけでなく、国内の社員においても、メンタル面の健康管理でお役に立てば幸いである。


(つづく)