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ニュースレター(機関紙)

〔最終回〕海外メンタルヘルスの現場から(93)海外から母国を思うということ
NL11030102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

〔最終回〕海外赴任者のストレス~海外から母国を思うということ

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

東北関東大震災にて被災された皆さん、また、今も余震や原発の不安を抱えながらも日々の生活を頑張っている皆様に、海外にいる私たちも沢山の気持ちを持っています。遠くにいるからこそ、何も出来ないからこそ揺れた赴任者の気持ちをお伝えします。

大きな震災の出来事が、私たちに「大変なことが起きたんだ」という実感として伝わってくるのには、少し時間が掛かりました。「大変な地震が起きたらしいよ」という伝聞が、本当の実感となるのには、「1日か2日掛かりました・・」という患者さんもいらっしゃいます。
被害の全容を報道で知るにつれ、心の中のザワザワとした気持ちが収まりません。どのニュースを見ても、被災者の皆さんは、みんな大泣きしてしまいたい程の被害を受けているのに、「自分なんかが泣いている場合じゃない。もっと大変な人が沢山いるのだから・・・」という気持ちが、ビンビンと伝わってきます。ニュースを見ている私達も心が震え、涙が出そうになる事もありました。私たちは、日本から6000Kmも離れて、目の前に広がる平常な生活とザワザワとした不安と緊張の入り混じった気持ちが大きく解離し、心から笑うことは出来なくなりました。実生活と感情の解離は、震災から3~6日目がピークであったように思います。この頃、親の緊張した表情を子供達が感じ取って、「こわい・・・」「一緒にいよう・・」「一人じゃ眠れない・・・」等と不安を口にしているケースもありました。
一方で、自分の夢や自分の意思で来星している人の中には、日本の家族や友人と、一緒に苦労を分かち合っていないことに、「罪悪感」を感じ、今すぐにでも地元に戻って、何か役に立ちたいという気持ちを口にする方も多くありました。こういった気持ちが、当地での義援金活動やチャリティーコンサートなどに繋がっていきました。

私自身、自分の母国が苦しい現実に立ち向かっている時に、在外にいるということは、このように心がザワツキ、傷ついた人々や国の為に、こんなにも力になりたいと思うものであるのかと実感しました。実際には、自分達が帰国すれば電力を使用し、余分な混乱を招くだけであり、在外にいる者が帰国をして実質的にサポートできることは多くはないのですが。
震災後1週間以降では、冷静に今後の対応を考えようという動きも出ています。今、私が思う自分にできることは、余分な心配を掛けないように、健康に気をつけ、しっかり今の生活に向き合うこと。そして、可能な限り家族や仲間の不安を聞いてあげることと、義援金には協力したいと思います。シンガポール在留邦人の動きとしては、この春の日本への一時的帰国を控えた方は、多くいらっしゃいます。また、ご家族で日本帰国を迎えるはずであった方々の中には、お父さんだけが辞令通りに帰国され、奥さんとお子さんは滞在を延長し、時期をずらして帰国されるケースも出始めています。場合によっては、今後、親御さんをシンガポールに呼び寄せる家族も増えるかもしれません。

自分の気持ちがいつでも戻る場所である母国日本。何年という月日が掛かったとしても、また力強く笑顔溢れる国になって欲しいです。私たちが、海外で自信を持って生活できるのは、やはり日本という国の国力が背景にあるからです。在外にいて、母国が平穏で元気であるということは、言葉では言い尽くせない心強さがあるものですから。

私事ですが、2011年3月を持ちましてシンガポール日本人会クリニックを退職いたします。今まで支えてくださった皆様には感謝の気持ちで一杯です。ニュースレターも卒業です。長い間、有難うございました。




編集部より
小川原先生には長い間シンガポールからの報告をいただいてきました。感謝申し上げますとともに今後のご活躍をお祈りします。

●「海外メンタルヘルスの現場から」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/html/jigyou_iryou2_4.html#j