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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(91)海外赴任者のストレス~お母さんの気持ち:海外子育て奮闘(2)
NL11010102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~お母さんの気持ち:海外子育て奮闘(2)

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

【12月掲載 お母さんの気持ち:海外子育て奮闘(1)の続編です。】

子育て中のお母さんの気持ちは複雑です。出産後~10年以内に、精神的不調・不安定になる女性は少なくありません。育児の時期には、睡眠時間の減少(不規則化)や活動範囲の制限・身体的拘束時間の長時間化などが、女性として生き方の変更を余儀なくされます。自分で決めるのではなく、すべてを子供に合わせる生き方は、時に息苦しくもありますが、育てなくてはいけないのですから仕方ありません。先月に続き、子育て期間ごとに、お母さんが感じる葛藤をまとめてみます。

4:産後4カ月~6カ月:平安期
赤ちゃんは、ベッドの上で手足をバタバタ・寝返りゴロゴロ。この時期、赤ちゃんの活動範囲は狭く、安全だけを確保しておけば大きな心配は要りません。お母さんと視線も合うようになりますが、赤ちゃんはまだまだ意思表出は少なく、コントロールし易くもあります。夜泣きにより、お母さんの睡眠は頻繁に分断される場合がありますので、時々は家族が夜のミルクを代わってあげると、お母さんの疲労が回復し易くなります。週に1度でも、連続的に6~8時間の睡眠をとることは、精神的疲労の回復にも非常に効果的です。

5:産後7カ月~1年10カ月:
つかまり立ちから自力歩行が始まります。ケガには要注意。養育者は、とにかく危険を先に察知し、排除しなくてはなりません。今までならとてもオシャレリビングも、この時期ばかりは、ソファーを壁際に移し、電化製品のボタンは触られないようにテーブルでブロックし、『赤ちゃん仕様』に大変身。お母さん自身は自分の趣味や健康より、「子供を優先する生き方」がいよいよ本格的に始まります。

ベビーカーからも、自分の意思で降りたがります。「ベビーカーから降ろして~・・・」とメソメソ泣く子は可愛い方です。「ここから降ろせー!」「抱っこしろー」と云わんばかり、のけ反って大騒ぎになる子もいます。お母さんは、子供が降りてしまえば、手が塞がってしまいますから、作業効率は著しくダウン。家事や買い物は全く進んでいないのに、体はとっても疲れています。

ここに、後追いが始まると、お母さんはトイレもシャワーも独りになる事が出来ません。子供は、本当に体調の悪い時に、強くお母さんを求めます。初めての発熱など、昼夜なくお母さんは振り回されます。子供に求められることで、母親としての自信が強まりますし、精神的に安定しますが、一方で身体的には「疲れた~」と感じる時期です。子供の体重も増えてきますし、お母さんの腰痛・肩こりなども、深刻な問題です。
子供が笑顔だとすごく幸せな時期なため、おじいちゃん・おばあちゃん・お父さんなど周囲の人の出番です。赤ちゃんが笑顔で過ごせるように楽しく遊び相手をしましょう。赤ちゃんが笑顔=お母さんが笑顔とも言えます。

新米お父さんには、「赤ちゃんのペースで遊ぶ」ことは結構難しいかもしれません。例えば、積み木は積み上げて遊ぶものですが、赤ちゃんは、「積み上げたものを壊すこと」が大好き。お父さんが、作ったタワーを足で踏んで壊してゆく怪獣君です。この時に「わ~、やられた~」と喜んであげることは、大人には難しいことですよね。「ほら、こうやって遊ぶんだよ。」と積み木の積み方などを教えても意に介しません。3歳までは、子供が喜ぶ遊び方が正しい遊び方と割り切って、大人の方が、頭を柔軟にしましょう。
お父さんが、いい調子で遊べるようになれば、お母さんは家に残して、遊び場や散歩に出てみましょう。意外ですが、赤ちゃんも「おや、今、ここにママはいないのね。」と納得すると、「現在の養育者=お父さん」と認識し調子を合わせる様になります。

シンガポールでは、育児の時期にお手伝いさんを使う人が少なくありません。お母さん自身の病院受診や上の子の授業参観・買い物などでは、子供を預けて数時間外出するのですが、1歳前後の子供では「お手伝いさんと二人の時はとってもいい子。お母さんが帰ってくると、とっても我がまま。」という変身が認められます。赤ちゃんも、誰が養育者か見分けて、しっかりと態度を変えているのですから、恐れ入ります。

赤ちゃんの頃、自分がどれ程に愛されたか、皆さんは覚えているでしょうか?稀に、1歳代の記憶が残っている人もあるようですが、ほとんどの皆さんは一切覚えていないものです。でも、自分が小さい頃のことを、楽しそうに懐かしそうに愛おしそうに話す父母の顔を思い出せる人は少なくないのではないでしょうか?自分が如何に幸せな幼少期を過ごしたのかは、後に父母の記憶から知るものなのかもしれません。
実は子育ての主役は、子供ではなくその作業を共に行う若いお父さんお母さんなのです。苦戦しても笑顔を忘れずに育てられるといいですね。応援しています。