• ホーム
  • 基金について
  • 海外医療情報
  • お勧めリンク集
  • よくある質問

ホーム > 海外医療情報 > ニュースレター(機関紙)

ニュースレター(機関紙)

〔新シリーズ〕海外勤務者のための予防接種Q&A その1 予防接種の基本 
NL10100105
医療情報、海外渡航、予防接種

〔新シリーズ〕
海外勤務者のための予防接種Q&A その1 予防接種の基本


渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
株式会社 渡航医学センター 代表取締役
日本渡航医学会 副理事長
大越裕文

2010年9月8日東京、9月15日大阪において、JOMF主催セミナー“海外に人を派遣する企業の為の予防接種Q&A ”の講師を務めさせていただきました。今回のセミナーは、日ごろ予防接種でお悩みの担当者にできるだけ役立つように、あらかじめいただいた質問に対して回答する形式で行いました。いただいた質問は、実務的な話から、医療的なレベルまで多岐にわたり、予想以上に多くの質問をいただきました。日ごろ担当者の方々が予防接種でご苦労されているあらわれだと思います。講師である私自身にも大変勉強になるセミナーとなりました。
今回のセミナーで行われた質疑応答をより多くの会員の方々に知っていただきたいと思い、いただきました質問と回答の一部をニュースレターで紹介することにいたしました。
詳しくは>>
 ・東京会場http://www.jomf.or.jp/html/doc/seminar201009_1.pdf
 ・大阪会場http://www.jomf.or.jp/html/pdf/20101025_00.pdf



第1回目は基本的事項に関する質問です。


Q)一般的に、予防接種の目的は何でしょうか。
A)予防接種の目的は、個人の感染予防と地域に感染症を広めないための社会防衛です。例えば、黄熱病のリスクのある国では、渡航者が感染してしまうことによって起こる都市部での流行を回避するために入国時にワクチンを要求します。また、アメリカなどの先進国では、学校内さらには地域で感染症が広まらないように、入学時に多くのワクチンを要求してきます。


Q)企業において、海外勤務者・帯同家族に対する予防接種を行う意義は何でしょうか。
A)まず、入国・入学に予防接種を要求されている場合は、指定された予防接種は海外居住に必須となります。次に、予防接種は海外事業を成功に導く重要な対策の一つととらえるべきです。途上国において、多くの邦人在住者がA型肝炎、B型肝炎、腸チフスに罹患し、そのほとんどが予防接種を受けていないことが明らかになっています。これらの感染症に罹患した場合、少なくとも1-2カ月の入院加療が必要になり、適切な治療が受けられない場合は、医療搬送になるケースも発生するため、海外事業に大きな影響を与えることになります。重要なことは、種々の健康対策の中で、ワクチンで予防できる病気(Vaccine Preventable Disease)に対して予防接種を行うことは、確実に成果がでる対策であるということです。


Q)予防接種は義務化すべきですか?
A)黄熱ワクチンなど入国に必要なワクチン以外は勧奨とすべきでしょう。副作用があるからです。なお、黄熱ワクチンを含め、アレルギー等の理由で海外渡航に推奨されている予防接種ができない社員に対しては、海外勤務について慎重に判断すべきでしょう。


Q)海外勤務予定者が予防接種を受ける際の注意を教えてください。
A)できるだけ早く、予防接種を開始し、医療機関受診の際には、過去の予防接種の記録を持参するように指導してください。出発までに時間的余裕がなく、必要な予防接種が複数になる場合には、同時接種を行ってくれる医療機関を紹介してください。(同時接種は医師が必要と認めれば可能です)また、必要なワクチンが日本で未承認の場合は、欧米の輸入ワクチンを扱っているトラベルクリニックへの受診することをお勧めします。そして、接種したワクチンの記録を残し、次回の接種時期を確認しておきましょう。


Q)複数のワクチンの同時接種はどのように行われるのですか?
A)同時接種は医師が必要と認めたときに可能となります。接種するワクチンを決めた後に、通常2-3種類のワクチンを異なる部位に接種します。接種ワクチンと製造番号、接種部位がカルテに記載されます。


Q)渡航先の予防接種情報をどこから得ることができますか?
A)外務省、厚生労働省検疫所、CDCのホームページをご参照ください。
外務省・渡航関連情報  http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/index.html
厚生労働省検疫所  http://www.forth.go.jp
CDC http://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/list.aspx


Q)途上国赴任に対して接種が望ましいワクチンを教えてください
A)A型肝炎、B型肝炎、破傷風に加え、流行状況、医療レベル、現地での活動を勘案し、日本脳炎、狂犬病、腸チフス、髄膜炎菌、ダニ脳炎、ポリオワクチンを選択するのが一般的です。 また、渡航先には関係なく、冬季にはインフルエンザワクチンも接種すべきワクチンです。


Q)日本人渡航者は、どのようなワクチンを接種しているのでしょうか。
A)海外長期滞在者に対するアンケート調査では、A型肝炎、B型肝炎、破傷風のワクチンが多く、次いで日本脳炎、狂犬病ワクチンとなっています。腸チフスは、日本製がないこともあり、接種率が低く、腸チフスに感染する人も少なくないようです。


Q)先進国に赴任する場合に必要なワクチンを教えてください。
A)通常、破傷風ワクチン(トキソイド)が推奨されています。最近日本も含め先進国で、成人が百日咳に罹患し、小児に感染される事態が発生していることから、成人渡航者が百日咳ワクチン(海外製、Tdap )接種を希望される方が増えています。また、地域的に推奨されているワクチンは、南欧や米国南部でA型肝炎、ドイツ・オーストリア・ロシアなどの森林地帯でダニ脳炎が推奨されています。注意として、赴任国だけではなく、赴任中に出張する国も考慮に入れることを忘れないでください。


Q)日本で日本製のワクチンを接種し、海外で追加接種を受ける場合、ワクチンが異なっても問題ないのでしょうか
A)日本製のワクチンと海外のワクチンの互換性に関するデータがないため、問題がないとは明言はできませんが、海外で追加接種を行った後に感染症に罹患したケースはあまり聞いたことがありません。追加接種を忘れて感染してしまったケースは経験があります。また、日本で接種したワクチンが海外でなじみがないために、最初から接種をやり直されたケースもあります。大切なことは、追加接種をいつ、どこで受けるのかを明確に指導し、ワクチンの接種記録を日本語・英語併記で持参させることです。渡航先で追加接種することが決まっている場合は、接種時期渡航先で接種できる欧米製のワクチンあるいは互換性を有した海外製ワクチンを日本のトラベルクリニックで接種することも可能です。


Q)妊娠している帯同家族の予防接種はどうすればよいですか?
A)生ワクチンは、胎児への影響を考慮して、全妊娠期間を通じて接種は行うべきではありません。 なお、不活化ワクチン、トキソイドの接種が胎児に影響を与える確証はないため、これらは接種を受けることが適当でない者の範囲には含められていない(予防接種ガイドライン)。 しかし、ワクチンの説明書には、妊婦には接種しないことを原則とし、有益性が危険性を上回ると判断されるときにのみ接種することとなっています。 会社の立場としては、地域別の推奨ワクチンを紹介した上で、妊娠中は担当医と相談して決めるようにとした方が無難です。
ちなみに、アメリカ疾病予防センターは、必要があれば、A型肝炎(不活化)・B型肝炎(不活化)・破傷風(トキソイド)、インフルエンザを接種することを推奨しています。
http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2010/chapter-8/traveling-while-pregnant.aspx


今後もみなさんからいただきました質問をご紹介いたします。


◇編集部より◇ 今年9月開催のセミナーは大越先生を講師にお迎えして、お陰様で好評を頂きました。セミナーでの活発なQ&Aをもとに、これまでのシリーズ「渡航医学のABC」、「海外勤務者のための渡航医学」に引続き「海外勤務者のための予防接種Q&A」として連載頂くことになりました。


読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。

著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#abc
「海外勤務者のための渡航医学」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#yomo