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ニュースレター(機関紙)

第10回 ジャカルタ小児の発達・子育て相談会
NL10080110
小児科、発達

第10回 ジャカルタ小児の発達・子育て相談会

元ジャカルタカウンセリング代表
精神保健福祉士・社会福祉士
柴田 真紀

2010年7月17日18日19日の3日間、インドネシアの首都ジャカルタで、第10回小児の発達・子育て相談会が行われました。今回は10回の区切りとして、今までの振り返りをすることでご報告とさせていただきます。

ジャカルタでの相談会は2001年度から毎年行われ、私は1995年~2007年の12年間、ジャカルタに在住しており、2003年度の第3回から相談会にかかわっています。
相談会の始まりは、1997年に立ち上げられたジャカルタカウンセリングの初代代表が帰国するにあたり、それまで年2回のペースで行ってきた幼児健診ができなくなることを危惧して、当時の在インドネシア日本大使館の医務官に相談、JOMFを紹介され、小児科医師を派遣していただいたことに端を発しています。当初はジャパンクラブが主催者となり、日本人学校幼稚部で一斉健診を行っていました。

その後、現在のスタイルである個別相談が中心になりました。第5回までは派遣が一般の小児科医師であったためか、相談者も乳幼児を持つ母親が大多数で、相談内容も疾患や日常生活上のことが多くを占めていました。当時私は、受付の手伝いで相談室には入っていませんが、発達の問題として取り上げられるケースは少なかったのではないかと思います。また、相談内容にかかわらず一律一人20分という時間配分となっており、十分聞いていただくには短かったようでした。
第4、5回の相談会では、日本人学校幼稚部で子どもの健康をテーマにした講演会も開かれましたが、演題の内容について関心が薄かったためか、園児数に対して参加者が少ないという状況でした。一方で、私自身はジャカルタカウンセリングの活動を通して、発達の問題や悩みを抱えている親子に何人も出会い、また、週1回自宅に来てもらい個別の対応をしていた子どもたちもおり、発達の専門医の派遣を強く望んでいました。

第6回を開催するに当たり、それまで主催であったジャパンクラブから、「生活習慣病等に比べ優先度・重要度の低い小児の相談会は行わない」と言われました。一度中断すると再開が難しくなると危機感を抱いておりましたので、なんとか継続する手立てがないものかと模索しておりましたところ、JOMF小山様の計らいでジャカルタカウンセリング主催でも医師の派遣をしていただけることになりました。以来、第6回から今回に至るまで、小児精神・神経科医の広瀬宏之医師を継続して派遣していただいております。また、この時の相談会を機に、現地の邦人向けである<じゃかるた新聞>紙上で、広瀬医師による育児相談も始まりました。

私自身は、帰国後の第7回目からは広瀬医師のサポートとして相談室に入り、或いは親と子どもを分ける必要がある場合、子どもを連れて場所を移し、遊びや話をすることを通して子どもたちが心をほぐし、少しでも自分の気持ちを出せるかかわりを心がけてきました。現在、日本の療育の現場では、チームを組むことは当たり前になっていることですが、他の都市を含めても、小児相談会においては、この時が初めての試みだったかと思います。

年1回、同じ医師が相談を受けてくれるということで、複数回相談にみえる保護者の方々もおられ、6回目以降連続して発達に関する相談をされている方からは、
「毎回、冷静に自分の子育てを振り返るきっかけになっているような気がします。本来ならもっと短いスパンで経過を診ていただければベストなのでしょうが、定期的に良い先生に診ていただける機会というのは大変ありがたいことです。今回は、子ども自身もどうしたら良いか困っている様子で、母親としても、どう対応すればよいのか自分で判断できず、悩んでいましたが、直接先生にご相談することが出来て不安が軽減されました。」
という感想を頂いています。

個別相談を行う一方で、回を重ねるにしたがい、日本人学校及び幼稚部教員からのニーズも増してきています。幼稚部では、事例検討会が恒例となっていますが、内容は、教員からの相談に対するアドバイスから、今回、広瀬医師が直接子どもたちの様子を見たうえでコンサルテーションを行うというように、より現場のニーズに則したやり方に変化してきています。第9回に開催された、子育て・発達をテーマにした講演会に100人ほどの保護者が聴講していることからも、広瀬医師による相談会が定着し、保護者の方々の関心も高まっていることがうかがえます。第10回の相談会では、小学部の特別支援学級に在籍する子どもの保護者及び教員からの相談という枠が新たに設けられました。

子どもの発達支援のうち、6割は親への支援と言われています。年1回の相談会のようなスポット的な支援のほかに、親自身のエンパワメントを活かす手法を取り入れること、子育ての具体的なスキルを学ぶ場を提供するといった支援を行うことで、仲間を作り子育て環境を豊かにすることに、少なからず寄与できるのではないかと思います。私自身のジャカルタでの子育て経験からも、困っていてもどこに相談すればいいのか、どんな方法があるのかわからず、SOSを出すことさえ難しいことがあると実感しています。今後、個別相談をベースにしつつ、支援する側が様々な手法を試みていくことで、現地に合った支援の仕方を見つけていけると良いのではないかと考えています。

10回の相談会を経てみると、6回目以降、保護者に近い立場のジャカルタカウンセリングが主催となってからは、よりニーズに見合った形に変わってきていますが、ボランティアが全てを担うには負担が大きいことと、スタッフが駐在員の家族という立場上、安定した運営が困難であることも事実です。今後も相談会を継続して開催するためには、公的機関に担っていただくことが望ましいとは思いますが、関心が高く、柔軟に対応でき、積極的に取り組んで頂けるところであれば、民間の医療機関等が主催となることも、選択肢の一つとして検討しても良いのではないかと思います。

最後になりますが、現地で相談会のみならず、他機関との調整にもご尽力下さいました、河西様を代表とするジャカルタカウンセリングの皆様、毎回相談会の医師派遣のためにご準備・ご配慮下さいます専門科目ご担当の小山様はじめJOMFの皆様、ご多忙にもかかわらず継続して相談会にかかわって下さる広瀬医師に、この場をおかりし深く感謝の意を表します。また、海外で暮らす子どもたちが健やかに育ち、保護者の方々が安心して子育てできることを心より願っています。