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ニュースレター(機関紙)

海外勤務者のための渡航医学 その7 医療帰省
NL10070105
医療情報、海外渡航

海外勤務者のための渡航医学 その7 医療帰省

渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
株式会社 渡航医学センター 代表取締役
日本渡航医学会 副理事長
大越裕文

海外で疾病にかかった勤務者をいつ帰国させるのかという判断は容易ではありません。多くの場合、傷病者本人あるいはご家族から早く帰国させてほしいと頼まれたことがあるのではないでしょうか。しかし、搬送にリスクを伴うのではないかと担当者は悩まれることでしょう。
海外で傷病になった人を帰国させることを医療帰省(repatriation)と言います。医療帰省は、本来、戦争で負傷した兵士を本国へ搬送することを意味していましたが、海外渡航者の増加とともに、今日では旅行者や海外勤務者が治療途中で帰国する意味にも用いられるようになりました。なお、発症後早期に最寄りの医療レベルがより高い国(地域)に搬送する場合は緊急搬送(evacuation)といいます。

医療帰省の多くは、回復途中のため、搬送中も医師による治療と処置が必要となります。搬送手段としては、専用ジェットが用いられる場合もありますが、多くは定期航空便が用いられます。
近年、海外勤務者の増加に伴い、海外勤務者の医療帰省ケースが増加し、日本の航空会社も1年間に100例以上のストレッチャー搬送ケース(重症ケース)を取り扱っています。筆者は、航空会社に勤務していたことから、このようなケースの相談を受けることが最近多くなってきています。今回は、この医療帰省についてご紹介します。

医療帰省に伴うリスク
傷病の急性期に航空機で移動する場合の身体的負荷は、病状を悪化させる可能性があることをご認識ください。まず、空港までの移動。筆者も医療搬送に付き添った経験がありますが、救急車での移動はかなりの負荷になります。加えて、出国手続き中の待機、機内への移動、飛行中の機内環境、他の乗客への気遣い、現地到着後の病院までの搬送、病室移動などは患者の病状を悪化させる危険があります。
また、医師が同伴しているものの、救急車の車内や機内では思うような診療ができない点です。 図1は、機内に設置されたストレッチャーの写真です。カーテンは、患者さんだけ見えないように取り付けられているために、機内で医療措置を行うことは困難を伴います。また、病状が悪化しても、空の上ですので、治療行為のレベルも限定されてしまいます。
したがって、現地で適切な治療が行われている場合には、病状が不安定な急性期の帰省は避けるべきでしょう。

図1 機内ストレッチャー


図2 機内から救急車への移動



航空機の移動にリスクが伴う時期
航空機の搬送時期については、種々のガイドラインが出されています。代表的なものとしては、アメリカ宇宙航空環境医学会の基準、IATAの基準があります。表1は、IATAの基準の一部です。この基準をクリアしたから大丈夫ということではなく、最低限この基準をクリアした上で、エアラインの判定が行われることをご理解ください。

搬送時期は、基礎疾患、年齢、空港までの移動時間、飛行時間、日本の空港からの移動時間などを総合的に勘案してご判断いただきたい。できれば、日本の専門医師の意見も参考にすべきでしょう。


表1 航空機搭乗が不適な状態(IATA資料より一部抜粋)







◇編集部より◇ 昨年までの連載「渡航医学のABC」は、1月より新シリーズ「海外勤務者のための渡航医学」として引き続き大越先生にご執筆いただいております。読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。

著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
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