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ニュースレター(機関紙)

北京の街角から~中国医療現場からの報告~第25章「医師になるために」
NL10070104
医療情報、中国


北京の街角から~中国医療現場からの報告~第25章「医師になるために」

北京天衛診所顧問歯科医
中華人民共和国 歯科認定医
田中健一

もしあなたが日本の厚生労働大臣だったら、医師不足の解消に向けた取組みを(入学定員を変更しない制約の中で)行なうとします。2つの選択肢のうちどちらを選択しますか?

1.医師国家試験の合格率を高くする。医学知識においてレベルの低い医学生が合格し医療現場に出ることになるが、不足解消のためには致し方ない。

2. 合格率を上げ医学知識の低い学生にまで医師免許を提供するような調整はしない。医師の質を下げてまで医師不足の解消を行なう必要はない。

結論からいうと、1.を採用しているのが日本、2. を採用しているのが中国です。日本の場合、医学生の国家試験合格率は95%、医師不足の中、仮に今年の医学生の医学知識のレベルが低下していても、試験の合格率を下げようものなら業界を超えて大反響を起こしてしまうこと必定です。一方の中国、医師国家試験の合格率は30%程度です。

人口10万人あたりの医師数は日本では250人、中国では110人(中国の医師数は1,555,658人-中国衛生統計による)ですから、中国の方が日本より2倍以上医師不足は深刻です。そのような中でも、医師国家試験の合格率は30%ということから勘案すると、中国衛生当局は質の担保のない人数の確保は行なわないというメッセージをだしています。30%という数字は何もできの悪かったある一時の年のことではありません。暦年の国家試験の合格率はグラフ1のような結果です。


グラフ1 合格率の推移

こんなに合格率が低かったら不合格の医学生は医師になれないじゃないか、と北京大学の周小児科教授にいうと、周教授は「国家試験の合格率を上げたら質の悪い学生まで医師資格を有してしまうから、これは患者、ひいては社会のためにならない」と喝破しました(学生時代、試験のたびに苦しんでいた私のような人間にとっては耳の痛いコメント・・)。質を担保するという点において、中国は医学界側と行政側が安易な合格率の上昇で医師を確保することはしない、という点において同じ歩調にたっていることがわかります。

合否は筆記試験だけで判断されず、合格のためには実技試験もパスしなければなりません。私がデータをもらった2006年をみると、実技試験によって下の1/3がふるい落とされ(61万/84万人)、筆記試験により、61万が24万人になるのです。筆記試験の成績はグラフの2のように成績順に分類され、どこで合格ラインにするかが決められます。こうなると、中国の医師国家試験は資格試験(自動車免許のようにある点数を取れば合格)ではなく、競争試験であることになります。


グラフ2 受験者数の分布(2008年)

医学部の6年教育を受けたものだけが、医師になれる日本に対し、専門学校の卒業でも別途卒後研修を積み試験に合格すれば医師になれる。しかし、その試験は日本人の想像を超えた難しさ、どちらの制度が良いかとなると、判断はわかれますが、中国の制度のほうが実際に医療を受ける国民にとっては良さそうに思うのですが、皆さんの判断は如何に?

いずれにせよ、このような実情がわかってくると、 2000年に正規の医師国家試験制度が導入されて以来、北京において医療資格を持つのは非常に困難であることが朧げながら理解できてきます。昨年の医師国家試験を振返っても受験した外国人医師15人のうち、合格したのはわずか5人のみでした。よく、この点について北京で働く外国人医師と意見交換すると、異口同音に「おれたち外国人でホント良かった」という話になるのです。



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