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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(85)海外赴任者のストレス~海外出張とパニック発作
NL10070102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~海外出張とパニック発作

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

シンガポールの海外赴任者は、業務の一環として、当地を拠点に海外出張に出かける方が少なくない。ビジネスの拡大か世界が狭くなったのか、一月の半分以上の時間を海外出張に費やす方もいる。ある商社勤務の責任者は、ある国の出張からシンガポールに戻って、自宅でスーツケースを詰め替えて、同日に他の海外出張に向かわれることが、しばしば。
移動距離を考えれば、身体的疲労は著しいであろうと想像するが、意外にも、この海外出張をストレス源として訴える受診者はほとんどいない。そういえば、9年間の心療内科勤務の中で、「私には海外出張が最もストレスです」と強く訴えられた患者さんはいないかもしれない。

6月の中旬に南アフリカに個人旅行に行ってきた。シンガポールから、直線距離で1万キロ。直行便は、値段が高くて利用できず、バンコク乗換えの飛行機を選択した。シンガポール→バンコク→ヨハネスブルグ→ケープタウン 乗り継ぎの関係もあり24時間を要した。
「24時間」という移動時間を思ったときに、「一体、この時間をどうやって過ごすべきなのだろう」と重たい気分になり、この時間の重さに、旅の喜びが半減していた。ところが、24時間のフライトは、意外にも、あっという間。持参した本・雑誌・映画・ゲーム・睡眠と食事で、全く負担にならずに過ぎてしまった。問題は、移動中の運動不足と食べすぎ。意識して体を動かし、食事を計算すれば、さして負担にならなかったのである。

むしろ、携帯電話は鳴らず、問題対応に追われず、ビジネスマンにとって『飛行機の中』は、結構な安全地帯なのかもしれないと思う。飛行機内のノイズは、同乗者の会話を遮る。直ぐ隣に、全くの他人がいるので、声を高く仕事の話をすることも不可能である。同僚と共に出張に出たとしても、仕事の案件を話し合うことが、可能な環境ではない。

海外出張は、Majorなストレス源でないことは了解できたが、気をつけなくてはならない事がある。閉所や高所に置かれることによるパニック発作である。搭乗前後から、不安感が高まり、「ドアが閉まったら、自分はここから出られないんだ」ベルトサインが付くと、「もうトイレにも行けない」「ここから動けない」と不安が出てきてしまうと、動悸を強く感じ、呼吸困難感から過呼吸となって、手足の痺れや冷感・時には『このまま死んでしまうのではないか?』という強い恐怖感に襲われる。一度この発作を経験すると、不安感の余韻が残り、同じ状況に置かれたときに、不安を再現して感じてしまったりする。

搭乗前夜には、十分な睡眠を取ること。これは、必須である。また、フライト前夜の、過度のアルコール摂取を控えること。仕事に忙殺され、運動不足が長期間続いていることも好ましくない。アルコール・チョコレート・コーヒー・辛い食べ物などを、過量に摂取しないこと。このような、出張前後の体調調整は重要である。また、日頃から、運動によって心拍数を上げることも体にはよい訓練となる。世界でビジネスをするためには、自己管理と体力が欠かせないということであろう。