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ニュースレター(機関紙)

海外勤務者のための渡航医学 その5 勤務地での医療機関受診の支援
NL10050105
医療情報、海外渡航



海外勤務者のための渡航医学 その5 勤務地での医療機関受診の支援

渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
株式会社 渡航医学センター 代表取締役
日本渡航医学会 副理事長
大越裕文

日本人は、一般的に海外の医療機関を受診したがりません。特に開発途上国の場合、それが顕著です。その結果、悪性腫瘍の発見が遅れるケースや生活習慣病の悪化による心筋梗塞などを併発するケースが発生しています。代替要員が乏しい海外勤務者の病気は、海外事業に大きな影響を与えるリスクがあります。病院への受診は個人の責任という考え方は、医療事情の違う海外においては危険です。自発的な行動を期待するよりも、積極的に海外の医療機関を受診しやすい環境を作ることが大切です。今回は、医療機関を受診しない理由とその対策について考えてみたいと思います。

なぜ医療機関を受診しないのか
かなり前の話になりますが、私自身が海外の病院を受診した際に、診療費、検査費用、薬代、病院の施設使用料などが別々に請求されたことに驚きと戸惑いを感じました。まるでだまされたような感じでした。医療職である私が戸惑うわけですから、一般の方々が戸惑いを感じるのは当然のことでしょう。
実際、多くの日本人が海外の医療機関に不満を感じています。医療システムが違う、言葉が通じない、医療レベルに不安、医療費が高い、薬の安全性に不安を感ずる、が主な不満内容のようです。

まずは医療システムの違いを理解
医療システムに関して言えば、日本の医療システムの方が特殊です。海外では、救急車は有料、医療費に病院間や医師間に差があり、請求は別々、専門医はかかりつけ医の紹介なしでは簡単に受診できることはできません。人間は、知らないことに強い恐怖を感じます。環境の違う海外で、未知なシステムに戸惑わないためには、日本との違いと具体的な受診方法を赴任前に教えることが大切です。

医療機関情報
医療レベルは、経済状態や衛生状態と相関すると思いがちですが、途上国では貧富の差が大きいため、富裕層や外国人向けの医療施設は医療技術のレベルは低くはありません。したがって、外務省などの情報を参考に、赴任前あるいは現地到着後に医療情報を提供することが大切です。日本人が多く利用しているというだけではなく、医師がどこで教育を受けたか、薬は先進国のものを使用しているか、欧米人が利用しているかなどの情報も加味して判断してください。中国では、1級病院、2級病院より3級病院の方が格上ですので、ご注意ください。ただし、日本のようなホスピタリティーと診療方法は期待できないかもしれません。

自己負担分は?
海外は、医療費が高いから医療機関に受診したくないという方がいます。事実、医療費は、開発途上国においても日本より高額です。ここで、ポイントになることは、自己負担分が日本よりも高いかどうかということです。海外で病気になると、健康保険(日本)、現地の保険、旅行保険などで支払われます。自己負担分がどのくらいになるのかを教えてあげることが大切です。日本と同じレベルということであれば、安心されると思います。

受診準備
次に大切なことは、医療機関を受診する準備をしておくことです。医学用語は、たとえ語学に堪能な人でも、すぐに理解することは困難です。いざという時に困らないように、診断書あるいは健康診断結果などを英文で持っておくことを勧めてください。持病、内服薬、アレルギーなどの情報があるととても診療がスムースになります。

現地に着いたらかかりつけ医を決める
現地に着いたら、まず受診する医療機関を決めるように指導してください。一般診療でかかるホームドクター(General practitioner, family doctor)と救急病院を決める必要があります。救急病院は、ホームドクターが紹介しくれる場合もあります。具合が悪くなくとも、早めにかかりつけ医を受診し、心配なことを相談しておくことが大切です。

率直に伝え すぐにイエスと言わない
医療機関で症状などがうまく伝わらなかったら、身振り手振りで伝えることが大切です。調子が悪いところは指でさせば十分に通じます。それとともに、英文の医療情報を見せてください。また、医師の説明が分からなかった場合は、すぐにイエスと言わないようにしてください。これは危険です。理解できなかったら、できるまで説明してもらってください。日本語と現地の言葉や話すことができる知人の助けを借りたり、日本にいる医療関係者に内容の解説を頼むことも大切です。誤解が生じないように説明された内容を紙に書いてもらってください。

日本から定期的にフォローアップ
治療継続が必要にもかかわらず、赴任後治療が中断するケースもしばしば見受けられます。したがって、治療継続が条件の勤務者に対しては、健康管理スタッフから定期的に連絡を入れるべきです。血圧・体重・食生活・運動習慣・通院状況・薬の名前・検査結果などを確認してください。その際に、医師からの説明に対して解説してあげると、通院がスムースとなるでしょう。




◇編集部より◇ 昨年までの連載「渡航医学のABC」は、1月より新シリーズ「海外勤務者のための渡航医学」として引き続き大越先生にご執筆いただいております。読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。

著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
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「海外勤務者のための渡航医学」索引コーナー
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