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ニュースレター(機関紙)

海外勤務者のための渡航医学 その4 海外勤務者に対する健康管理体制
NL10040105
医療情報、海外渡航

海外勤務者のための渡航医学 その4 海外勤務者に対する健康管理体制

渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
株式会社 渡航医学センター 代表取締役
日本渡航医学会 副理事長
大越裕文

今回は、海外勤務者への健康管理体制について述べさせていただきます。
海外勤務者の健康リスクは渡航先の環境や勤務者自身の健康状態などに左右されますが、一般的に日本で仕事をしている時に比べ、リスクが高くなるととらえるべきです。また、病気になった場合に適切な医療が受けにくいことを前提にすべきです。したがって、明確な体制を整えておくべきです。

健康相談

海外勤務者およびその帯同家族の心配事の多くは健康に関することですので、健康について気軽に相談できるような体制を整えておくことが大切です。そのためには、勤務者と海外担当者・産業保健スタッフがネットワークで結ばれていなければなりません。しかし、社内ですべての相談に対応するのは限界があります。個人情報を会社に知られたくないという相談者も少なくありません。メンタルヘルスの相談などは、むしろアウトソーシングがベターかもしれません。また、帯同家族の場合は、企業の担当者では対応が困難でしょう。JOMFのメール相談等を含め、外部機関を上手く利用すべきです。

海外医療巡回も有効な相談手段となります。医師、歯科医師、看護師、保健師などによる医療巡回は、勤務者やご家族にも好評です。相談内容は健康問題・医療問題だけではなく文化や地域社会、日本人社会との軋轢など多岐にわたるようです。企業側も、勤務者や家族の健康問題の現状把握、現地の医療機関、衛生状態などの情報を確認するよい機会とすべきです。

健康診断
労働安全衛生法では、国内の事業所で働く労働者について、事業者が毎年1回、定期健康診断を実施することを義務付けていますが、海外勤務者にはこの法律が適応されません。しかし、安全配慮義務という観点から、派遣元となる事業者が年に1回は定期健康診断と同様の検査を実施すべきです。日本に一時帰国させて検査するのが理想ですが、近年は海外でも日本式の健康診断を提供する医療施設が増えてきているので、うまく活用すべきでしょう。ただし、海外で受けた健康診断結果については、日本にいる社内の産業保健担当者が事後措置を行う必要があります。

一時帰国の際に健康診断を受ける場合は、再検査や精密検査が日本で受けられるように帰国後早期に健康診断を受けるべきです。

生活指導
海外生活には、糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病の悪化要因がたくさんあります。赴任が決まると準備で忙しい中、連日のように送別会が開かれます。現地では歓迎会や商談など外食の機会が増え、食生活が乱れがちになります。赴任前後は忙しいため通勤などに車を使うことも多く運動不足になります。
大事なことは勤務者に、生活習慣病は海外生活によって悪化するという認識を持ってもらうことです。そして、食事や運動に十分注意していただくことです。

食事は、できるだけ和食中心にし、運動はウォーキングなどを勧めてください。気候や治安に問題がある場合はスポーツクラブやスイミングプールなどの施設で行うように指導してください。戸外や施設での運動が困難な場合は、家の中でできるストレッチや筋トレなどを勧めてください。

産業保健スタッフによる治療状況の確認
赴任前の健康診断で、治療条件が赴任可能と判定されても、赴任後に治療を中断するケースが多いことが報告されています。したがって、本人の管理だけに任せるのはきわめて危険です。

できれば、赴任前に英文の紹介状を用意し、受診できる医療機関を予め教え、定期的に産業保健スタッフや委託された外部機関のスタッフが医療機関の受診状況、運動習慣、食生活などについて確認と指導を行ってください。経過観察の方法は原因疾患によって様々ですが、体重の測定は定期的に行うよう指導してください。検査による経過観察が必要なケースでは、現地の検査結果を確認することも重要です。

緊急時の対応
社員が海外で病気やケガをした場合に備えて、危機管理体制と緊急時対応マニュアルを作成しておく必要があります。
まず、病院への受診が手遅れにならないように、緊急で医療機関に受診すべき症状や状態を教育しておく必要があります。次は、勤務者に緊急連絡先と緊急時に受診可能な医療機関のリストを明確にしておくことです。開発途上国では、情報の迅速さ、正確さが患者の病後の経過を左右することがありますので、24時間体制で海外からの情報が伝達できるシステムを構築しておきます。病院における診断情報も迅速・正確に収集しなければなりません。

米国や欧州の医療レベルの高い国では、病状が落ち着くまで治療を継続し、医療搬送で帰国することも、軽快してから補助なしで帰国することもできます。医療レベルの低い地域では、治療が十分でなく患者の容体が悪化することが予想された場合、患者を医療レベルの高い病院へ緊急搬送する必要があります。

海外で医療を受けたり医療搬送帰国をしたりする場合は、高額な費用がかかります。あらかじめ、その費用の支払方法を決めておくことも重要です。海外での健康危機管理対策は、一企業だけの取り組みでは限界があります。関係する保険会社、アシスタンス会社、海外での医療機関、国内での医療機関、航空会社、患者搬送車会社などと連携して進めるべきでしょう。





◇編集部より◇ 昨年までの連載「渡航医学のABC」は、1月より新シリーズ「海外勤務者のための渡航医学」として引き続き大越先生にご執筆いただいております。読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。

著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
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「海外勤務者のための渡航医学」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#yomo