• ホーム
  • 基金について
  • 海外医療情報
  • お勧めリンク集
  • よくある質問

ホーム > 海外医療情報 > ニュースレター(機関紙)

ニュースレター(機関紙)

渡航医学のABC その13 時差ぼけ
NL09080105
医療情報、海外渡航



渡航医学のABC その13 時差ぼけ

渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
日本渡航医学会 副理事長
元日本航空インターナショナル 主席医師
大越裕文

渡航医学のABCを開始して早や1年。お付き合いいただきまして、ありがとうございます。これで、終わりかなと思っておりましたが、海外邦人医療基金さんのご厚意で、もう少し延長させていただくことになりましたので、よろしくお願いいたします。
今回から、環境の変化による健康トラブルを取り上げてみたいと思います。まずは時差ボケ。

現代病 時差ボケ
海外に頻回に渡航する方々の悩み。その代表が、時差ボケです。時差ボケは、むかし、船で海外へ行っていた時代にはありませんでした。ゆっくりと移動していたために、体が滞在地の時間に慣れる時間的余裕があったからです。

航空機が登場してから、この時差ボケの問題が出てきたわけです。とはいっても、航空機が登場してすぐの時代には、航空機の性能も悪く、何回も乗り換えなくてはならなかったため、旅行の日程はゆったりとしたものでした。したがって、時差ボケ対策はとにかく現地の時間にあわせることに徹していました。私が駆け出しの頃、後輩とヨーロッパのバーゼルに行ったことがあります。そのときは、成田からソウル乗り換え、バンコック、ジェッダで給油、チューリッヒ乗り換え、やっと目的地のバーゼルに到着しました。ソウルの乗り換えは、安い航空券だったためですが、バーゼルまで移動に1日以上かかったように思います。

ところが、最近は航空機の性能がよくなったため、海外の目的地に直接あるいは1回の乗り換えだけで行けるようになり、滞在期間もどんどん短くなってしまいました。日程が短期化する中で、以前のような時差ボケ対策では全然寝れずに、帰国翌日から出社ということもあり得ます。時差ボケ対策は、時代とともに変化しています。最近の考え方を紹介いたします。

時差ボケとは
時差ボケは、出発地と時差が5時間以上のところへ短時間で移動した時に起こります。これは、我々の脳の中にある体内時計と現地の時間に大きな差が生じたためです。オーストラリアや東南アジアは時差がほとんどありませんので、時差ボケは起こりません。

以前、血液中のコルチゾールというホルモンで、どれくらいで現地の時間に我々の体内のリズムが順応するかどうかを調べたことがあります。結果は、時差1時間に対して、1日かかるということがわかりました。時差が8時間のところでは、現地の時間に合うのに、8日かかるということです。時差の大きいところへいったら、すぐには現地の時間で寝ようと思っても寝れない。あるいは、せっかく寝たのに夜中に目が覚めてしまう。これは、当然のことなのです。

時差ボケがひどい人
時差ボケの程度は、渡航する方向でかなり違います。アメリカなど東へ飛行をした場合、現地の到着日が短くなるために、滞在中の時差ボケがひどくなります。我々は、一日を短くするのは苦手なのです。遠足に行く前日に早く寝ようと思っても寝れないのと一緒です。ヨーロッパは、夜なべをした感じで夜が長くなるだけですので、滞在中はそれほど時差ボケを感じません。逆に、帰国してから時差ボケが起ってしまいます。

また、高齢者は時差ボケに弱いといわれています。ご高齢の方は、朝型で、規則正しい生活をしているために、体内時計のリズムががんこでなかなか現地の時間に合わないからです。時間にルーズな若者が一番時差に強いでしょう。また、持病がある人、旅慣れていない人は時差ボケがひどくなるといわれています。

睡眠不足を補うことから
残念ながら、いまのところ時差ボケの特効薬はありません。メラトニンという薬が海外で市販されていますが、使い方を間違えると時差ボケがひどくなることもありますから、あまりお勧めできません。

時差ボケは、そう簡単に克服することができないので、大切なことは睡眠不足をいかに補うかです。例えば、短時間の昼寝を移動中やホテルでするなどして、睡眠をこまめにとることです。アイマスクや耳栓を使用すると、どこでもよく寝れます。お酒は控えめにすることも大切です。お酒はすぐ眠くはなりますが、熟睡はできなくなります。皆さんもご経験があると思いますが、深酒をした後、たくさん寝ても睡眠不足な感じがしたことを。飲酒後は、よく寝ていないのです。お酒は、ほどほどに。

滞在期間にあった過ごし方
それと、滞在する期間によって現地での過ごし方を変えてください。
長期間の滞在の場合は、できるだけ現地の時間に順応するように、睡眠、活動、食事時間などを早くから現地時間に合わせ、日光浴などをします。

一方、1週間未満の滞在の場合は、無理に現地の時間にあわせないほうが無難です。アメリカやヨーロッパでは数日では現地の時間にはあいません。滞在期間が短い場合は、現地の時間は気にせず、仕事に影響のない範囲で寝ておくのが現実的対応です。

以前の時差ボケ対策は、とにかく現地の時間に合わせて睡眠をとるようにと指導されてきましたが、直行便が増えて旅行日程が短縮化された今日、時差対策も修正する必要が出てきたわけです。また、高血圧などで薬を常用している人は、移動する日の薬の使用方法について担当の先生と相談しましょう。


時差ぼけ対策のチェックポイント




参考)私が事務局をやっております研究会で時差ボケを取り上げたときの報告書です。ご参考までに。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsasem/sora_tabi_meeting/2003_2.html



編集部より:昨年8月より渡航医学の専門家によるシリーズを開始しました。ご執筆頂く大越裕文先生は航空医学の専門家でもあります。読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。

著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#abc