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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(75)海外赴任者のストレス~性格は変えられる?(その2)子供の性格を受け入れる。
NL09080102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外メンタルヘルスの現場から(75)
海外赴任者のストレス~性格は変えられる?(その2)子供の性格を受け入れる。


シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

**「変わりなさい。」といわれるストレス**
9歳くらいまでの子ども達と接していると、本当に、人には色々な個性があるものだなあと感じます。楽天的な子・慎重な子・なんでも目立ちたい子・周りを見てから行動する子・自分の思い通りにしたい子・負けたくない子・負けても気にしない子・自分の気持ちを分かって欲しい子・自分の気持ちを通すより、トラブルの方が嫌いな子。 
この性質を、大人になるまで根底にもってゆくのですから、性格ってすごいものです。

元来持った個性を、否定されることは、誰にとってもつらいことです。一方で、親として自分の子供だからこそ、もっと、より良い性格になって欲しくて、「そんな考え方をしていると、お友達がいなくなるよ。」「もっと、積極的にならないと、いじめられるよ。」「もっと、相手の気持ちを理解しないと・・・。あなたのことを思って、注意してくれるのだから。」等と、言いたくなってしまう時もありませんか?
親の愛情が、否定的なメッセージとして子供に伝わり、「自分は、こんな性格だから、上手く行かないんだ。変わらなきゃ。自分が変わらなかったら、友達からも、親からも好かれない。」こんなメッセージとして、子供が一生背負ってしまっては、本当に大変です。

**「どうせ俺なんか・・」**
人間が本質的に持つ性格や個性は、努力しても変わらないものです。親が期待するように、親に愛されるように、自分の行動を変える努力をしてみても、自分が心地よいと思えないのです。元来、じっくりと自分のペースで過ごすことが好きなT君が、誕生会を開いてもらいました。たくさんの友人を呼んで、自分が中心になって遊んでいいのに、3-4人の仲間とカードゲームに熱中していて、全員を楽しませたり、盛り上げたりはできません。
しびれを切らしたお母さんが「ほら、Tちゃん、みんな追いかけっこしているよ。」などと促してみますが、集団の中には出てゆきません。会が終わったあとには、お母さんは何故か不機嫌です。「こんなんだったら、誕生会をやった意味がないじゃない。」T君は不思議です。「僕は、楽しかったよ。僕の誕生会だから、僕が楽しかったら、いいんじゃないの?」正しくその通り。T君の個性を受け入れきれないお母さんの空回りでした。

自分の期待通りに動いて欲しいために、こんな展開になってしまうのです。お母さん「どうして、みんなに加わらないの?」「カードばかりやっているからでしょう・・」「カードは取り上げよ。」T君は、誕生会を境に、カードもカード仲間も失いました。これで、T君は、お母さんの期待通りサッカーに参加し、活発な性格になるのでしょうか?

このような繰り返しの中で、子供たちの自己肯定感は低くなり、「どうせ、俺が悪いんだろう。」「どうせ、駄目に決まっている。」などと、口にするようになるのです。気づきの早い子だと、小学校4年生くらいから、「どうせ・・・」と口にするようになります。

**この子・この人の良さと社会の居場所**
人には、それぞれの良さを生かす役割や居場所があると思います。自分の個性を受け入れて、それを生かせる役割につくことがとても重要です。多様性のある社会で生き抜いてゆく中で、「自己を受け入れる」という作業は非常に大切なことなのです。誰でも、集団のリーダーになれるわけではありません。リーダーをサポートする役・リーダーが動きやすいように気配りする役が似合いの人もいるわけです。また、じっくりと取り組むことが得意で、世間の評判や周りの意見に振り回されず、地道に仕事を重ねてゆくことが得意な人もいます。とても凝り性で、妥協が許せない人もいるかもしれません。その個性が、最も伸びる仕事や役割を見つけ出すことが重要なのではないでしょうか。

**良さを十分に伸ばした上で、欠点を修正する**
カードゲーム好きなT君は、カードについては、外国の人と会話することも恥ずかしがりません。カード好きを生かして、徐々に友達が増えていきます。お母さんは、カード禁止を解除して、カードを利用して、T君を伸ばしていこうと考えました。雨の日は、近所の友達を自宅に呼んでもよいことにし、一方で、会話が弾むように英語の勉強を一日15分することを約束しました。英語といっても、カードの説明の仕方や技の種類についてなど、本人が興味を持ちそうなものからです。T君は、生き生きと生活しています。時には、カードに飽きた友達の誘いに応じて、みんなと公園に出て遊ぶこともあります。「あー、走ったらお腹空いた。」こんな言葉を聞くと、お母さんは嬉しくなります。お母さんが、好きなことを取り上げて、無理やりにやらせようとしていたことが、こんな風に達成されたわけです。

T君は、凝り性ですから、カードゲームに飽きたら、また、なにか別のことに熱中するでしょう。その時に、こんな風に仲間に恵まれ、共に語り合えたら、T君はずっと幸せなんじゃないかなあ・・・と、お母さんは気づきました。お母さんに「Tは、いつも仲間がいて幸せね。好きなことが共通の友達なんて、最高ね。」と言われて育ったことが、T君の心の一番深いところの自信になりそうです。


私たちの視点が、自分の家族あるいは会社の同僚の欠点に固着すると、どうしても、相手にそれを認めさせ、改善させたくなってしまいます。欠点もその人の一つの性格です。そして、見方を変えると、周囲の人に有益な役割を果たしてくれる性質になるかもしれません。「○さんたら、また、××だわ・・・」と思った時、ほんの少し考えに幅を持たせてください。『家族や同僚を、うまく生かすこと。』周囲と摩擦なく生きている人は、こんな考え方を意外と上手にやっているのかもしれません。