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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(74)海外赴任者のストレス~「変わらなきゃ」「変わりなさい」性格を変える?
NL09070102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~「変わらなきゃ」「変わりなさい」性格を変える?

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

「先生、私のこの考え方がダメなんです。変わらなきゃ・・・」心療内科の外来で、患者さんから、よく聞く言葉です。自らの心配性を嘆いたり、自らのネガティブ思考を嘆いたり、あるいは、自分の完璧主義を嘆いたり、人の悩みは様々です。
ある楽天家の男性:Aさんは、こんな悩みを抱えていました。「先生ね、僕は失敗したことを、『あまり引きずらない』性格なんですよ。だから、女房にいつも似たようなことで小言を言われます。その度に、『そうだそうだ。こんなこと、こいつは前から気にしてたっけ・・・』と思うのですが、『まあ、たいしたことじゃないし、今回は上手く切り抜けたから、まあいいや~』と思った瞬間、立ち直ってしまってますからね・・・」隣で話を聞いていた奥さんは「まったく、羨ましい性格です。」と大きなため息をついています。

過度に心配性の奥さん:Bさんの場合はこうです。「他人から見れば、私たちは、比較的安定した平穏な暮らしをしている方だと思います。ところが、私は、未だ何も起こっていないことを心配しては、考えてしまうクセがあります。『もし、急に日本帰国の辞令が出たら、子ども達は、日本の勉強についてゆけるかしら?』『もし、子供がデング熱に罹ったら・・』『もし、旅行先で病気になったら・・・』」「実際には、意外と何も起こらないんです。でも、『もしも』の心配を解消したくて、子供に勉強を強制したり、旅行先を限定したり、本当に家族に迷惑をかけています。」

こういった性格は、実は、幼少期から変わっていないという人がほとんどです。また、家族内に、似た個性を持つ人がいることも多くあります。では、何故、成人になってから問題が顕在化するようになるのでしょうか。Bさんの場合、学生の頃は、この心配性が良い方向に作用していました。テスト前には、自分の不安を消すために、きちんと学習に取り組み、成績は常に上位。社会人になってからは、書類作成にミスは無く、期日に遅れることも無く、周囲の評価は良好でした。Bさんの個性が、社会人として、大いに役立っていたわけです。ところが、家族を持ち、子供を持ち、そして、狭小な海外の日本人社会で他人の生活を垣間見るようになると、Bさんの不安の矛先は、すべてが子供や家族の健康・自分の将来に向けられるようになってしまったのです。

**「あなたはあなたのままでいい」自分をしっかりと受け入れること**
15年来の診療を通して感じることは、人が元来持って生まれた個性というものを変化させることは、非常に難しいということです。Bさんは、自分の個性が良い方向に発揮されていた時期には、自分にあまり問題を感じていませんでした。ところが、ここ数年、現実生活で自分の個性を良い方向に利用できなくなったために、自己嫌悪に陥るようになったのです。「こんなんじゃダメだ。もっと、強くならないと・・・」「もっと、こだわらないようにしないと・・・」こんな風に思えば思うほど、自分自身が見えなくなってしまいます。自分の個性を、しっかりと自覚し、その良さも悪さも自分自身が引き受けるしかありません。
「じゃあ、先生、このままで我慢しろと、いうことですか?」
たしかに、こんな困った状況のままで良いわけはありません。自分を上手く生かせる方法を探すことです。送別会の幹事は無理でも、Bさんなら会計係は、誰よりもきちんとできるでしょう。書類作りの能力を生かして、PTAの係りを引き受けても良いかもしれません。

**開き直ってはダメ**
「ほら。性格は変わらないんだって。だから、自分はこのままでやってゆくから、よろしくね。」こう開き直ってしまう人がいるとしたら、これは、正しくあなたの欠点です。あなたの性格や能力・あなたの価値観を他人に押し付けては、あなたの大事な家庭のパートナーや仕事仲間に我慢を強いることになるのです。誰しもその人なりの素晴らしさがあるけど、それと同じように周囲に迷惑をかけているのかもしれません。
自分の短所・欠点を知り、そこをサポートしようとしてくれる周囲の人には、大きな感謝を払う必要があります。引っ込み思案で話し下手の自分に、いつも話題を振ってくれる同僚・細かい支払い請求や経費清算が下手な自分に、いつも期日を思い出させてくれるスタッフ・仕事に集中すると片付けが疎かになり、忘れ物をしやすくなる自分に一声掛けてくれる家族・いつも楽しい企画をするのが好きな自分、そして、それにいつも快く付き合ってくれる仲間。自己の欠点を知ると、誰が本当に自分を補うサポートをしてくれているのか、実によく分かるようになるものです。Key Personを大事にすると、あなたの欠点が、みるみる目立たなくなってゆきます。

海外生活では、企業の中でも、日本人社会の中でも、人間関係の距離が密接で、お互い同士を深く関わり合うようになります。とても上手に海外勤務・海外生活を楽しむ同僚や隣人と自己を比較するのではなく、あなたらしく、しっかりと生活することを忘れないで。あなたらしさを受け入れられたら、トラブルも不安も欠点も、少しずつ減ってゆくようです。