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ニュースレター(機関紙)

渡航医学のABC その11 海外渡航と生活習慣病
NL09060105
医療情報、海外渡航



渡航医学のABC その11 海外渡航と生活習慣病

渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
日本渡航医学会 副理事長
元日本航空インターナショナル 主席医師
大越裕文

海外では生活習慣病は悪化しやすい
海外での生活は、糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病が悪化する要因がたくさんあります。まず、食生活が乱れます。赴任が決まると、その準備で忙しい中、連日のように送別会が行われ、現地では歓迎会や商談などで外食する機会が多くなるでしょう。

それに加え、運動不足になります。赴任前後は忙しくて、現地での通勤も車を使うことことから確実に運動不足となります。このような状況では、生活習慣病が悪化するのは当然です。さらに悪いことに、日本で受けていた薬物治療を海外赴任後に中断することがしばしばみられます。海外での医療機関を信用していない。あるいは、面倒だ、時間がないなどの理由があるようです。
まず、大切なことは、海外赴任で生活習慣病は悪化するという認識をもつことです。

適切な治療とその継続
生活習慣防によるトラブルを防止する一番効果的な方法は、企業がコントロール状態の悪い生活習慣病を持っている人を海外赴任の人選から外すことでしょう。しかし、これは現実的ではありません。昔と違って、健康面だけで人選する余裕はないため、リスクの高い人も選ばれるでしょう。したがって、リスクの高い人をいかに適切に医療を受けさせるかが大切になってきます。

そこで、海外赴任が決まったら、今までの健康診断の結果を持って、健康管理室あるいはかかりつけの医師に行かせるようにアドバイスしてください。薬物治療を開始した場合あるいは十分なフォローアップが必要な場合は、赴任者は担当医に英文の紹介状を書いてもらいましょう。受診可能な医療機関は前任者の情報あるいはJOMFの情報などを参考にするとよいでしょう。

もちろん、現地の事情に合った食事や運動を行うことも大切です。日本との習慣や物価の違いを上手く利用して、アフターファイブや週末に運動するのがよいでしょう。気候や治安の問題で外での運動が難しい場合は、自宅でもできるような運動を見つけることです。食事は、何と言っても野菜が不足します。自宅での食事には野菜を多く取るように心がけることも大切です。

ノーケアな海外出張者
いままでは、海外赴任者の話をしましたが、最近問題となっているのが海外出張者の健康トラブルです。海外赴任者は、赴任前健康診断が義務付けてられていることから、健康問題を把握するチャンスがありますが、海外出張者は、そのような機会がないため、産業保健スタッフが気づかないうちに出張し、海外で病気になっている場合が多くなっています。最近の出張者は、ベテランの社員が多く、タイトなスケジュールで繰り返し出張にいていることから、定期的な健康診断や病気などの復職時に、海外出張の可否や条件について産業医の意見を参考に会社として検討すべきです。

出張の可否は航空機搭乗の基準を参考に
それでは、どのような基準で検討すべきかということになりますが、海外出張の可否基準は、3つの点から判断してはいかがでしょうか。まず、日本は海外に渡航する場合には98%航空機を利用することから、航空機の搭乗基準を参考にすることです。日本航空の基準を紹介します。これらの基準は若干航空会社によって差がありますのでご注意ください。

表1 航空機搭乗に適していない健康状態(日本航空のホームページより一部抜粋)
             (http://www.jal.co.jp/jalpri/pdf/medif_jal.pdf

1.重症心不全、不安定狭心症、急性心筋梗塞(発症後6週間以内)、コントロール不良な重症不整脈などを持つお客さま、心疾患術後(カテーテル手術を含む)の病状不安定期のお客さま。
2.無治療の深部静脈血栓症および肺動脈血栓塞栓症のお客さま。
3.重症呼吸不全、重症慢性閉塞性肺疾患、重症気管支喘息のお客さま。
4.脳卒中急性期(発病後4週間以内)やコントロール不十分な痙攣性疾患のお客さま。
5.重症貧血のお客さま。
6.吐血、下血、出血の危険のある消化器疾患(胃潰瘍・十二指腸潰瘍急性期)、腸閉塞、大腸検査当日、大腸ポリペクトミー術後1週間以内のお客さま。
7.耳鼻咽喉科疾患急性期、重症副鼻腔炎、重症動揺病を有するお客さま。
8.頭部、胸部、腹部手術2週間以内。
9.他の人に伝染する恐れのある感染症


2番目は、症状が悪化した場合、出張者ご本人で薬剤などを使用して対応できるかどうか。対応できるとしても、最悪医療機関を受診しなければならないことを想定して、3番目は医療機関を受診した場合の医療費が旅行保険でカバーされるかどうか。この3点から少なくとも評価することをお勧めします。

下痢、発熱などで悪化
海外で生活習慣病のコントロール状態が悪くなる原因は、食生活の悪化と運動不足、治療の中断、滞在中のストレスなどです。ここで注意して頂きたいのは、生活習慣病の方に、ひどい下痢、発熱、脱水などの症状が起こると、コントロール状態の急激な悪化や心血管系の合併症を引き起こしやすいということです。発展途上国の場合、これらの原因の多くは感染症です。予防接種、下痢対策をはじめとする感染症対策をしっかりやっておくことが大切です。また、脱水時の適切な水分補給も合併症予防に有効です。効果的な水分補給については次回ご紹介いたします。



編集部より:昨年8月より渡航医学の専門家によるシリーズを開始しました。ご執筆頂く大越裕文先生は航空医学の専門家でもあります。読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。

著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#abc