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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(73)「海外赴任者のストレス~~感染拡大と不安拡大」
NL09050102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~~感染拡大と不安拡大

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

現在、急速に感染拡大している豚インフルエンザ。今のところ、シンガポールに滞在する海外赴任者の間に、大きな精神的動揺は広がっていない。来院される患者さんおよび発熱児を抱えた家族でも、冷静に対処している様子である。今回のインフルエンザは、弱毒性で、健康な人が罹患した場合には、症状が比較的軽症で終わることも現場の混乱を生んでいない要因であろう。しかし、もう一方では、当クリニック内科医師およびスタッフが、感染に備えて、出来うる限りの準備をしてきたことも関係している。医師数名のクリニックであるからこそ、今までは、海外出張の多い患者さんやその家族の状況を理解して、各人に合わせた対応してきていた。ところが、今回の豚インフルエンザについては、医療を必要とする人の数が急速に増える可能性もあり、患者対応の統一化・治療方針の統一化などが必要であった。日暮医師の指導により、クリニックスタッフは元より、各在星企業関係者に、新型インフルエンザ感染拡大時の対応について、折に触れて説明を行ってきている。こういった過去の努力のお陰で、現在の現場は、混乱を免れていると実感している。

最も大切なことは、海外赴任者にも感染状況やウィルスの危険性について正確な情報が行き渡ることであろう。海外赴任者を派遣している日本企業には、日本での情報を早めに伝える努力が必要である。海外では、日本大使館や日本人学校あるいは各日本人会など公共性が高い組織ほど、危機的な場面で精神的依存度があがり易いように実感している。こういった組織との連携も重要である。

また、各企業・機関が用意してきた対応マニュアルも重要な役割を果たしている。アメリカに赴任している友人から「会社から、『フェーズ4になったら、家族は帰国』と言われています。」という、メールが届いた。彼女と子ども達は、現在もアメリカから動いていないようだが、フェーズ4以降は、いつでも「緊急帰国」を指示される可能性があるという心構えは、精神的動揺を減らす一助になっているように感じられた。判断基準を決定する上で、感染の段階で区切る・体温で区切る・年齢で区切る・日数で区切るなど、一つの目安として数字を用いることは混乱や不安を防ぐ方法である。例えば「24時間後の情報を見て判断します。」と言われれば、この24時間は不安が軽減されるであろう。

マニュアルのみでなく、物質的な準備、例えば、予防用具(マスク・消毒液など)や治療薬があれば、憂い無しである。海外赴任者が安心して掛かれる医療機関の把握や万が一の時に帰国の手配をして貰える人的ネットワークなどが確保されていれば、より危機に強い組織といえるであろう。