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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(72)「海外赴任者のストレス~他罰・・・家庭の中での勝負」
NL09040102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~他罰・・・家庭の中での勝負

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

自分の不都合な事が生じた時に、それを誰かのせいにしたくなるのは、人間の共通した心理かもしれません。例えば、ずっと前から定位置に在るドアに、足を強くぶつけました。仕事の期限に追われ、考え事をしながら歩いていた本人の不注意です。
ところが「誰だ!ドアを半開きにしておいたのは!みんな、だらしないなあ!」と、ムラムラと怒りが湧き上がってきた、といわれても気持ちは分かります。
自分が数日間もテーブルに置きっぱなしにしていた書類が、肝心な時に、見当たりません。「ここにあった封筒知らない?(イライラ)」「ここに私はちゃんとおいておいたのに・・・!」「もう、誰が動かした?今日必要な大事な書類なのに!」イライラ・不機嫌オーラを振り撒きながら、まるで、「自分は完全に正しくて完璧なのに、封筒が見つからないのは周りの人に非がある」と、言わんばかり。周りの人の気分はしらけ、「そんな大事な書類なら、きちんとしまって置けばよかったのに・・・」などと冷静な指摘を受けたりすると、怒りが飛び火して、とんでもない衝突にまで発展してしまいます。

「他人の中では、格好よく振舞っていたい。」という願望が生じる年齢から、この傾向は強くなるようです。思春期に入った子供たち・失敗したくない人間関係や仕事を抱えている大人や他人の前で完璧に振舞いたい願望の強い人・自分の失敗を人に指摘されたくない人たちは、家族への八つ当たりが強く出ます。家族への甘えの一種とも考えられますが、家庭の中だけで、態度が豹変し、横暴になるので、近所の人や周囲の人には苦労が分かりにくいのが問題です。

場合によっては、「予定通りに行かないこと」が、すべて家族のせいにされてしまうことがあります。週末、家族でショッピングモールに出掛けることになりました。運転はお父さん。お父さんも、週末の外出に反対だったわけではありません。ところが、初めての場所で、駐車場入り口がなかなか見つからないのです。現地に着いてから、かれこれ15分くらい駐車場を探しています。「何なんだ、このショッピングセンターは!」「標示が不親切だ!」「このショッピングセンターじゃなきゃ、だめなのか?」「俺はこんな所、来たくなかった!」車の中の雰囲気は、最悪です。子供たちも、なるべく巻き込まれないように、別々に窓の外を見ているのが精一杯。奥さんは、どうしてもう少し優しい口調で会話ができないのか、うんざりしてしまいます。ひどい場合には「どうしてお前たちは俺をイライラさせる態度をとるんだ~!」と、何事も人のせい。「俺」は、いつでも正しいようです。

お母さんは、長男の子育てに苦労していました。活発で日常のしつけがしにくい6歳のお兄ちゃんは、良くも悪くも目立ってしまいます。ある時、学校でどうしても自分が勝負に勝ちたくて、かなりしつこく主張し、お友達の女の子を泣かせてしまいました。このようなトラブルが頻繁に起こるようになり、折角、仲良くなってきたママ友達にも、気を遣い、距離を感じるようになりました。
お母さんは、「あなたのせいで、みんな無くしてしまうじゃない!」「どうして、仲良くできないの?」と、子供を責めたててしまいます。
ご主人が、「そんな叱り方をしなくても・・・」と取り成すと、お母さんは逆切れしてしまいます。「あなたは、私の苦労が分かってない!この子のせいでみんな影響を受けるのよ!いつだって、そうだったじゃない!あなたには、私のつらさが分からないのよ。」「あなたが、そうやってこの子をかばうから、この子はどんどん私の言うことを聞かなくなるでしょ!」

一人でいきり立ち、すべての原因を他人に求めようとする姿は、なんとも見苦しいものです。そして、不機嫌オーラに曝される周囲の人を著しく疲労させます。仕事や大事な場面では、白黒はっきりつけ、勝負をすることも必要となるでしょう。ですが、平凡な日常生活の中では、うまく運ばない事象すべての原因を探り、白黒はっきりつける必要はありません。

夫婦・親子で、「どちらがいかに正しいか『勝負しない!』」という心がけが肝要です。万が一、自分の身近な人が、怒りが抑えられず、あなたに当たってくる時には、「勝負」を買わない事が大切です。お互いが落ちつた時には、案外と簡単に理解し合える可能性だってあるかもしれません。