• ホーム
  • 基金について
  • 海外医療情報
  • お勧めリンク集
  • よくある質問

ホーム > 海外医療情報 > ニュースレター(機関紙)

ニュースレター(機関紙)

渡航医学のABC その7 狂犬病
NL09020105
医療情報、海外渡航



渡航医学のABC その7 狂犬病

渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
日本渡航医学会 副理事長
元日本航空インターナショナル 主席医師
大越裕文

狂犬病は発病した場合、ほぼ100%死亡する恐ろしい感染症です。いままでに発症して助かったのは、わずか数名のようです。日本では、数十年間国内での発生がなかったことから、狂犬病に対してあまり注意がなされませんでした。ところが、2006年にフィリピンで犬にかまれた日本人が狂犬病で死亡するという事例をきっかけに、狂犬病の怖さが再認識されるようになりました。しかし、まだまだ狂犬病やその予防法に対して正しい認識がなされていないようです。

注意するのは犬だけではない
狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した動物にかまれたり、傷口、目や口の粘膜をなめられたりすることによって感染します。犬に噛まれた結果の感染が多いのですが、他の哺乳動物からも感染する可能性があります。アメリカではアライグマやスカンク、コウモリ、ヨーロッパではキツネ、アフリカではイヌ、ジャッカルやマングースから狂犬病が感染します。また、ネコや馬、牛なども感染し感染源になることがあります。

水が怖い
狂犬病の潜伏期間は、通常は1~3カ月程度です。症状は、発熱、頭痛、全身倦怠、嘔吐などで始まり、筋肉の緊張、幻覚、けいれんが起こります。水を飲みこむことができなくなるために、ひどく水を怖れるようになります。狂犬病が恐水病とも呼ばれている所以です。最後は、呼吸麻痺が起き死亡します。

まず、動物に近づかない
日本人旅行者は、犬や猫を見ると無防備に手を出したり、なでたり、エサをあげてしまいがちです。これらの行為は、極めて危険です。小犬だからといって安心してはいけません。小犬も狂犬病にかかっている可能性は十分にあります。また、犬の前で、急な動きをしないようにしてください。


予防接種をうけましょう
狂犬病の流行地域で、野外活動や動物と接触する可能性のある場合は、事前に狂犬病ワクチンの接種をうけておきましょう。そこで、問題となるのが、日本のワクチン接種方法です。現在、日本製のワクチンは慢性的な品不足状態が続いている上に、通常の接種方法では3回接種するのに6カ月を要します。したがって、多くの渡航者は出発までに3回接種を完了することができません。2回接種だけでは、数カ月でその効果は落ちてきてしまいますので、お急ぎの方は、海外のワクチンの接種(最短3週間で3回接種終了)をお勧めします。 また、日本製のワクチンでも海外と同じように1カ月以内で3回接種しても、6カ月の場合と同様の効果があるとの報告があります。担当の先生と相談して、接種スケジュールを決めてください。

かまれたら、すぐに傷を水で洗い病院へ
狂犬病が流行しているところで、動物にかまれたら、すぐに傷口を石けんと水でよく洗い、できれば消毒してください。そして、至急病院を受診し、狂犬病ワクチンと破傷風のワクチンの接種をうけてください。
注意として、傷口の血液を口で吸い出さないようにしてください。また、事前に予防接種していた場合も追加のワクチン接種が必要です。

世界の流行状況
日本ではなくなった狂犬病ですが、世界ではまだまだ狂犬病は発生しています。狂犬病の感染者数が多いインドと中国の狂犬病事情を紹介します。

インド
インドは世界で最も狂犬病による死亡者が多い国で、2006年度の死亡者は2万人弱です。インドでの動物に咬まれる事故の90%以上は犬で、その大部分は野犬です。その他、サル、ウシ、ウマ、ネコ、ヤギ、ネズミ、ウサギなどからも狂犬病ウイルスが分離されている。

中国
中国は、近年の経済発展に伴いペットとして飼犬が増加しましたが、これらの飼い犬に対するワクチン接種率が極めて低いために、狂犬病で死亡する人が増えています。中国保健省の発表では、2006年には3207名が狂犬病により死亡したと報告しています。また、中国ではワクチン接種の信頼性にも問題があるようです。ワクチンを水でうすめたり、偽造ワクチンが使用されたケースが報告されています。 ワクチン接種を受ける場合は、信頼できる医療機関で外国製のワクチンの接種をうけてください。
参考)狂犬病の発生状況
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/pdf/03.pdf

狂犬病の注意のまとめ
1.狂犬病は治療方法がない。
2.むやみに動物に近づかない。
3.リスクがある場合は、事前に予防接種を受ける。
4.動物にかまれたら、傷口を洗って、すぐに病院を受診。事前に予防接種を受けていてもワクチンの追加接種が必要です。
5.海外で予防接種を受ける場合は、信頼のおける病院で接種する。


編集部より:昨年8月より渡航医学の専門家によるシリーズを開始しました。ご執筆頂く大越裕文先生は航空医学の専門家でもあります。読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。
ニュースレター連絡コーナーhttp://www.jomf.or.jp/ninq/index.htmlからご連絡お願い申し上げます。

著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#abc