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ニュースレター(機関紙)

北京の街角から~中国医療現場からの報告~第12章「医療保険と保険料 その2」
NL09010104
医療情報、中国


北京の街角から~中国医療現場からの報告~第12章「医療保険と保険料 その2(1元=13円)」

北京天衛診所顧問歯科医
中華人民共和国 歯科認定医
田中健一

先月のお話で、北京で外来を受診する際には自身に貯えられた口座から費用を支払うことを紹介しました。日本の制度に慣れた私としては、保険とは名前だけで個人の財布から外来費用を支払うことであると理解すると、より合点がいきました。今月は保険料と入院について紹介します。

もし、あなたの属している健康保険組合が、「もし良い病院に入院したいなら、保険から給付を減らします」と言い出したら皆さんはどうしますか? きっと、自分の好きな病院に入院させろよ!というのが多くの人の考えることではないでしょうか。さらに、健康保険組合が支払うのは年間で5万元を上限とする(超えた分は自己負担)、と言い出したら、しっかり保険料を払っているんだからいちいち指図を受けたくない、と思うのが実際でしょう。

北京の医療保険は個人医療口座と大額医療互助から成りますが、入院時の医療費の支払いに使うことができる保険(大額医療互助)こそが、日本の保険制度と同じ仕組みです。とはいえここでも合理性が優先されています。日本の制度では給与に対する定率(給与の多い者が多く払う)ですが、中国では定額(給与の多い者でも少ない者でも同じ金額)です。つまり、被保険者である労働者は給与の中から3元(たった3元!)拠出し、雇い主である保険者は給与の1%を拠出します。私はこの制度を理解するにつれ、給与の多寡に関わらず同額の拠出というのは、平等ではあるけど公平なのだろうか?と思いました。より多く収入を得ている者はより多く支払うのが当然という中で慣れ親しんできたからです(この考え方って日本ではコンセンサスを得ていませんか?)。でもちょっと考えてみると、同じ保険であっても海外旅行保険や自動車保険では給与に関わらず保険料は一定額であることからすると、被保険者が定額を拠出する中国の制度にも一理はあると思うのです。

日本円に換算して40円で何ができるんだ!と思います。さらに、保険者である企業も多くの額を出しているのかと思えばこちらもわずか1%、さらに日本のように政府から(つまり税金)の財政支援もない中、どう制度を運営しているのでしょうか? 以下の3点に集約されます。

1.650元以下は保険給付がないこと
自動車保険における物損のように自己責任部分を入れ安易に保険を使うことに抑止力をかけているのです。

2.大額医療互助により給付される年間の総額は5万元であること。
医療費が天井知らずにならないように、そしてその高額な医療費を支給することによる保険財政の破綻を避けるため、上限を設定しています。上限を超えたらあとは自身の積立て部分である個人医療口座を使うなり、自己資金を使うなり家族でお考え下さいね、ということです。

3.病院により給付される割合が異なること
どうせ入院するなら医療機器も揃い、医師や看護師のレベルも高い3級病院(レベルに応じて1級から3級に分類され公表されている)にしたいのは当然です。日本でも同様の傾向があります。混雑緩和のため日本では紹介状という縁故が幅をきかすことができる余地を残す制度を取り入れています。
一方、中国では保険の給付率を変えているのです(表1参照)。つまり、良い病院は医療費も高く、保険からの還付割合も低いです。自ずとものをいうのは自己資金です。

表1 自己負担率
 3級病院2級病院1級病院
~1万元20%18%15%
1~3万元15%13%10%
3~4万元10% 8% 5%
4万元~ 5% 3% 3%


この制度があるから1%+3元で制度設計ができるのです。ちなみに、外来であれば、2000元を超えた部分の50%を大額医療互助でカバーすることも可能です。なんだかんだいって最後にものをいうのがお金なのです。共産主義ってとても合理的にわかりやすいですね。

保険により給付される入院費に上限制を設ける法案改正を提案しようなら、誰が政権にいても政権がひっくり返ることは必至です。とはいえ、安易な受診や重複の受診を減らすため、基準額以下は保険給付を行わない(免責)制度にすれば、その分保険料が安くできるため手取りの収入が増えます。そのお金を別に使うなり、入院用の民間保険を購入することなどができ、魅力に思え、一考に値すると考えますが、皆さんは如何考えますか?



○北京の裏道から~交通渋滞緩和の方策

交通渋滞を緩和するためにはどんな方策が考えられるでしょうか?オリンピックを開催するにあたり、交通渋滞問題は北京市政府に突き付けられた大きな課題でした。選手を乗せたバスが会場に遅刻などしたら取り返しのつかないことになるからです。

この問題に対して交通行政を監督する部局が出した結論は明解そのものでした。一般車両の運行を規制する、具体的にはオリンピック期間中ほぼ1カ月、奇数日は奇数ナンバー、偶数日は偶数ナンバーの車しか北京市内の通行を許可しないというものです。いきなり隔日にしか車の運転ができなくなったのです。そんな無茶な!と思ったのは私のような一部の外国人などごくわずかです。大方の中国人はオリンピックの開催のためには、当然だ、致し方ない、と考えたのです。

せっかく車を持ったのに半分の日は使えず、車の価値が半減するわけだから、その損失分を保証しろ、なんて要求が出ないの?と新しく車を買った蘇看護師に聞いてみたのです。すると、彼女は平然として「世紀の祭典であるオリンピックを控え、そんな私事をいう人間は反社会的であり中国国民ではない!」と答えたのです。自分というものを日本人より全面に出す北京人がこれで納得するかなーと私は思ったのですが・・・。私の予想に反し、車が乗れないことで大きな混乱は生じませんでした。お金持ち達は偶数と奇数のナンバープレートの二台の車を所有し、一台だけの人(それでもお金持ち)は、車に乗らないことが国家に貢献しているということに満足して協力していたからです。
このような政策が実行できることを中国政府の強権とみるか、宣伝がうまいとみるかは分かれます。日本だったら当然のこと道路交通法改正を含め、なんやらかんやらで国会決議までいくだけでも大混乱になるよ、と説明したのです。そもそも、今回の法改正は国会決議(中国でいう全国人民代表会議)など経ていないと私は理解しています。執行部で「これしましょう」、「そうですね」、「じゃあしましょう」、「はい決まり」というのが流れです。

無事オリンピックは終了しました。私は車の規制が解除された後の運行はどうなるのだろうと関心をもってみつめたのです。元の通り自由に戻してしまったのでは交通渋滞に拍車がかかる、かといって今のままでは道路は空いているけど(車を運転しない私にとっては便利この上ない)、市民生活に犠牲が大きすぎます。当局の決定は月曜日には1、6ナンバーの車が通行不可、火曜日は2、7ナンバー、水曜日は・・・というように週一日を使用禁止としたのです。土日はもともと混雑が少ないから通行自由です。為政者はうまい決定をするなーと思いました。これなら車の所有者には公平ですし、通行量を減らすこともできます。そもそも中国では日本のように法的裏付けのないノーカーデーやら努力目標やら推奨など曖昧なことは言わない、これがルールだ、として確立してしまうのです。

北京市内における運行を規制される末尾のナンバー
曜日禁止ナンバー
0、 5
1、 6
2、 7
3、 8
4、 9
土、日制限なし


個人個人の都合なんて聞いていたら、発展が望めない。公共の利益だと考えれば西洋諸国から強権的と非難を受けようとも実行する、これが中国式合理主義です。この考えが如実に現れたものが今回の車ナンバーにかかわる一件だったのです。

以前はこのような為政者の姿勢に対して拒絶感のほうが強かったのですが、最近は公共の利益を第一義とする言い分にも一理あるような気がしてきて、私も中国式思考回路になってきたのかな、と苦笑する昨今です。




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●「北京の街角から~中国医療現場からの報告」索引コーナー
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