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ニュースレター(機関紙)

北京の街角から~中国医療現場からの報告~第9章「医療スタッフにはランクがある」
NL08100104
医療情報、中国


北京の街角から~中国医療現場からの報告~第9章
「医療スタッフにはランクがある」


北京天衛診所顧問歯科医
中華人民共和国 歯科認定医 田中健一

患者の立場になると誰でも良い治療を受けたいと思います。良い治療を受けるため日本でも「名医のいる病院」などといった本が出版されています。しかし、日本の場合、本に掲載される医師の基準が非常にあいまいで、明確な基準がないと聞いています。一方、この種の本は中国にもあり、掲載に対して明確な基準があります。あたかも星の数によってレストランのランクがわかるように、中国の各医療従事者はそれぞれ自身の医療レベルに応じた星をもちます。この星の基準は、自分が治療した症例数、執筆した論文の内容により評価されます。
 
ここまでの内容でしたら医療制度だけの範囲の内容で終わってしまいます。制度論で終わらないのが今の中国です。日本では名医として名前が本に出ても自身の給与のアップに直結するわけではありません。また、患者にしても、名医を受診したからといって支払うコスト(治療費)がアップするわけではありません。
中国は受診に際し指名料という形の市場原理を持ち込んでいます。星の数(役職名として医師の場合は、医師,主治医師,副主任医師,主任医師、看護師の場合は、護師,主管護師,副主任護師,主任護師)や専門性により指名料の価格を決定したのです。

免許を取得した後も高い技術や診断能力を持った医師や看護師になるため、医療従事者は時間と費用を使って学会や研修会に参加し研鑽を積みます。この費用を患者側に転嫁しても良いのではないか、良い医師を受診したいなら、医師側が支払った費用の一部を患者が負担するべきでないのか、という考えが中国で掛号費(指名料)の背景にあります。副主任医師以上になると、自身のいる病院のランクおよび自身の専門分野に応じて指名料を設定することができます。どの病院の受付にも名前、顔写真、専門、職位そして指名料を掲載した看板が掲げられています。副主任医師で10元程度ですが、主任医師になると指名料は300元-500元になります。

この指名料の半分はボーナスとして医師の給与に上乗せされますので、医師として指名してもらえるよう患者に良い医療を提供しようというインセンティブになっているのです。指名料のうち残りの半分は病院に入った後、収支が黒字の場合にはボーナスとして他の医療従事者にも還元されます。

私と議論した多くの中国人医療従事者は、日本では資格を取得した後、昇進や昇級における明確な基準がないことを不思議に思っていました。技術や理論を学ぶために多くの時間と費用を払っているのに、なぜ治療費が専門外の医師が診察した場合と同じ値段なんだともよく聞かれました。ここに私は共産主義としての日本の医療制度の根幹をみるのです。

経済的事情によりこの指名料が払えない人はどうすればよいのか?と私は中国人スタッフに聞いたことがあります。指名料がかからない医師、主治医師を受診すれば良いだろと、一刀両断のもとに論破されました。副主任医師、主任医師による医療は上乗せ、横出しの医療という考えに至ったら、なぜか合点がいきました。

日本の医療機関では朝早く並べば誰でも名医の診察が可能です。ただ、こんな社会というのはいつまで継続できるものなのか?と思います。腕に自信があるなら患者に指名料を課すことを可能にしても良いと思います。そして、そのことを理解できる受診者が増えてきてほしいと思います。

こんな私の考えは皆保険、全国統一料金の日本の制度を危うくする暴論なのか、日本の近未来像を写し出したものなのか、読者の皆さんと意見交換できればうれしいです。


<医師、看護師における職位別分類>








○北京の裏道から~現代版コピー事情


今回の北京オリンピックを通じて、最も私が感銘を受けたことは、驚異的ともいえる記録がでた100m走でも、多くの人を魅了した水泳でも、いわんや野球などではありません。オリンピックに対する私の関心は競技の外にありました。

私がオリンピック開催に際し注視したのは、ぬいぐるみ、Tシャツ、などオリンピックのロゴを冠したオリンピック関連グッズのコピーははたして出回るのだろうか?ということです。
今の中国では至る所、多くの商品でコピーが氾濫しているのが実際です。北京で私が知的所有権を重視し、常にコピーはコピーのものしかない、コピーをそのまま使うのはもってのほかだとスタッフに話すのですが、コピーされてこそ一人前の会社になった証しですよと、そんな目くじらたてなくても良いじゃないですか、と中国人スタッフは私に言います。
さらに「良い商品で値段が安ければコピーであっても良いと思います」などと真顔で言われてしまうと、二の句がつげなくなってしまうのです。服や靴は可愛いもの、時計にはじまる精密機器でもコピーはあります。挙げ句の果ては、医学会などの学会でも発表内容をわけてくれ(コピー)と悪びれずに言った学会参加者もありました。

そんなお国柄ですから、私はオリンピックロゴのついた商品が必ず出回るものと考えていました。
この点はIOCも危惧しており、コピー商品を出回らせないよう、厳しく中国オリンピック委員会(とりもなおさず中国共産党そのもの)通達したのです。

聖火リレーに続く開会式、そして閉会式と時間は流れていきました。私は北京の街を何気なく見て回りましたが、マスコット人形などは1つ100元します(コピーのドラエモンは10元)。コピーをよく扱っている(というよりコピー商品しかおいていない)店に入ってもありません。「マスコット人形ないの?」と聞くと「鳥の巣なら買えるよ」という答えでした(これはオリジナルだ)。結局、私が知る限り、オリンピックを通じて関連グッズのコピーは一切見つけられなかったのです。

そんなことから、私は以下のように考えると合点がいくのです。オリンピック開催は中華民族100年の夢、だからこそ、IOCからの言葉には毛沢東の言葉と同じ価値が今の中国にはあるのではないか、と私は思ったのです。
IOC会長がオリンピック関連グッズのコピーに懸念を示せば、中国オリンピック委員会は、その言葉を諾として上から下まで従う、コピーを作っている工場も中央か地方かの違いはあるにせよ、どこかで共産党が関与しているわけだから、足並みを崩そうなんて決して思わない。
その結果が今回のコピー製品が皆無という事態なのです。やればできる、これが今の中国なのです。
やるとなったら(良い意味でも悪い意味でも)早い、これこそが今の中国の最大の強みだと私は思っています。

そんなことを考えながら、日本に一時帰国した際、ある奇妙な経験をしました。
ひょんなことから、某先生(ここではこの先生の名誉のため実名は伏せます)の講演会の裏側を覗いてしまったのです。その講演会は歯科のS先生が主宰する勉強会です。費用は★万円する高額なものです。しかし、配付する資料(レジメ)はある業界誌に掲載された、全く関係ない先生の評論をまるまるコピーしてホチキスで製本したものです。

私は唖然とし、(言わなければよいものを)これで研修を受けに来る人がいるのですか?と聞いたのです。
S先生は怪訝な顔をしながら、他の研修会に比較すると私のは講習費が安いから、大入り満員ですよ、会場に入りきれないのでキャンセル待ちになっているくらいですから、と悪びれることもなく言ったのです。私は、これが大学の講師、そして客員教授までした人間がすることだろうか、学問に対する尊厳はどこにいったのだろう?講習費というお金を取るのであれば、元ネタは他人が開発したものであっても、どこかに自身の解釈とかオリジナルを入れないといけないのではないか、自分の資料はないのだろうか?などと書生のような事を考えてしまったのです。

出版物の無断転用、名義の不正使用を自分のそばで見てしまうと、これじゃ中国以下じゃないか(中国でのコピー商品は外装はとてもきれい)と思ってしまったのです。さらに、そのような会に多くの医療関係者がきてしまう、ということに沈みゆく日本を見たような気がしてしまったのです。こう言ってしまうと、私も善人のように聞こえてしまいますが、かくいう私も学生時代はずいぶんコピーのお世話になったので、人のことは大手をふって言えないのが悲しいところなのです。


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