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ニュースレター(機関紙)

続・話題の感染症18「毒をもった身近な生物(3)有毒海産動物」
NL08100103
感染症

続・話題の感染症18「毒をもった身近な生物(3)有毒海産動物」


海外邦人医療基金(顧問)
長崎大学熱帯医学研究所(客員教授)
日本医師会(感染症危機管理対策委員)
おおり医院 院長(神奈川県)
大利昌久

最近の海洋レジャーブームに伴い、有毒な海産動物と接触する機会が増えた。海岸での心停止が溺れでなく、触手がまつわりついていたことから、クラゲに刺されたのが原因だったという報告もある。

海産動物は、約50万種以上いるようだが、いまだ明らかでないことが多い。有毒な海産動物については、被害が出るたびに、その恐さがわかり、大騒ぎになるのが実情。その有毒海産動物にふれた。
海産動物による被害は、1)食べて中毒をおこす、2)刺されて中毒をおこす、の2種類に分けられる。

1) 食べて中毒する
フグによる中毒は有名。日本ではフグ料理の調理師免許制度があり、フグ中毒は減ったが、近隣諸国でのフグ料理店は安心できない。フグ毒は、テトロドトキシンという神経毒である。タンパク毒素でないため、煮ても毒性は失われない。

2) 刺されて中毒する
熱帯、温帯の珊瑚礁は美しい。野暮な私でもインド洋に浮かぶセイセルズ島を訪れた時は、ため息が出た。こんなに素晴しい世界があったのだと夢中になり、数回訪れた。しかし、珊瑚礁には、クラゲ、イソギンチャク、オコゼ、ウニ、ヒトデ、イモガイなど美しい海産動物がいて、それがほとんど有毒なのだ。

①腔腸動物(刺胞に毒がある)
腔腸動物は、ロート状の体をもつグループで、クラゲ、イソギンチャク、珊瑚が含まれる。クラゲの毒は不安定であまり解明されていないが、イソギンチャクの毒は神経機能と心機能の抑制をきたすことが知られている。皮膚壊死や中枢神経抑制なども起こすとされている。
局所所見は、皮膚と接触した部分に一致して痛みを伴った線状(クラゲ)、地図状(イソギンチャク)の赤くやや膨隆した皮疹を生じる。時に水泡を形成し、潰瘍となる。

②魚類(棘に毒がある)
地球上の魚類は約2万種といわれ、うち200種が害をおよぼすとされている。被害は魚の体にある防御器官というべき毒棘によっておこる。毒棘は背びれ、腹びれ、尻びれにあるが、鰓や肩にあるものもいる。

魚の毒は熱で分解されやすい。動物実験では、血管を弛緩させて低血圧を生じたり、人では肺水腫の報告もある。刺されるとただちに激しい痛みを生じ、創は最初蒼白となり、次いで発赤を伴った暗赤色となり、腫脹、局所熱感を生じる。水泡形成から、皮膚壊死に至るのも稀でない。

魚類には、オコゼ、アイゴ、ゴンズイ、エイ、サメ、ダツなどの被害がある。

③棘皮動物(棘に毒がある)
有毒のウニ、ヒトデが知られている。棘が刺さり毒が注入される。毒の成分はタンパク毒素で、棘が刺さった瞬間から痛みを生じる。細い棘の場合には、折れやすいので人の皮膚に残ることが多い。刺さる棘が多ければ全身症状も生じる。

④軟体動物(神経毒がある)
イモガイ類は、補食時に口内から毒を充した銛状の歯舌歯を射込む。最危険種アンボイナガイは、平均殻長10cm強。毒は3種のペプチド混合物で、随意運動障害、呼吸筋麻痺が死因となる。海中で刺されたら麻痺発現前に陸上に移動し、声を出せるうちに人を呼び、溺死を避けること。

応急処置

1) 全身状態の把握
クラゲに刺され、心肺停止状態で病院に搬入される例がある。これらは刺傷後数分以内に心肺停止となる。バイタルのチェック、刺傷部の皮膚病変や症状を観察し、加害動物を推定する。

2) 毒の排除
パニックになり動き回ると毒の吸収を促進させるので、陸に上がり、安静を保つ。
①クラゲ
 触手が患部にまとわりついている場合は、海水で洗い流し、ゆっくり丁寧に剥がす。沖縄のハブクラゲによる刺傷には、多量の食酢を患部にかけ触手を除くと楽になる。
②オニヒトデ
 皮膚に残っている棘は、注意して取り除く、決して患部を擦らないこと。
③アンボイナ、イモガイ
刺された患肢を緊縛、吸引する。動物実験では毒の拡がりが抑えられることが確認されている。

3) 鎮痛処置
現場でできる徐痛法は、冷却と加温がある。
① 腔腸動物による刺傷には、冷却法
・ 氷や冷水での15分冷却を繰り返す。
・ 毒による皮膚の炎症を抑え、痛みを軽減。
② 魚類、棘皮動物による刺傷には、加温法
・ 42~45℃の温湯に30~90分間患肢を浸す。
・ 毒が熱によって不活化され、痛みが和らぐとされている。

4) 対症療法
① 刺胞に毒をもつ生物
・ 皮膚局所を生食水で洗い流し、異物が残っている場合はこれを除去。ステロイド軟膏を塗布。
・ 疼痛に対して鎮痛剤投与、経静脈的投与が必要なときもある。
・ 痛みが激しい場合は、神経ブロックも考える。
・ 必要ならば破傷風トキソイドを筋注する。
・ 腫脹した患肢は、挙上安静を保つ。
・ 手足の痺れがある場合は、呼吸障害がなくても、観察入院させる。
② 神経毒をもつ生物
・ 皮膚局所を生食水で洗い流し、歯舌歯が残っていれば除去。
・ 症状はないが、刺されたり、咬まれたといって来院した患者は8時間観察したほうがよい。

5) 入院治療
心肺停止状態で搬入した場合は、救命救急処置を施す。



編集部より

続・話題の感染症の索引コーナー
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