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ニュースレター(機関紙)

渡航医学のABC その2 航空機旅行をより快適に(I)
NL08090105
医療情報、海外渡航


渡航医学のABC その2 航空機旅行をより快適に(I)

渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
日本渡航医学会 副理事長
元日本航空インターナショナル 主席医師
大越裕文

今回は、航空機をテーマに取り上げたいと思います。日本は、島国ですので、海外へ渡航するときに利用する乗り物は99%が航空機です。今日では、すっかりおなじみの乗り物となった航空機ですが、意外と知られていないのが飛行中の機内の特殊な環境です。油断をすると機内で思わぬ病気になってしまう危険があります。飛行中は、お酒をたくさん飲んで、あとは寝るだけという方もいらっしゃるかもしれませんが、大変危険です。機内で病気にならないためには、まずは、機内の環境をご理解ください。

飛行中の機内は、富士山の五合目  そして砂漠

1) 低い気圧
航空機の上昇とともに、機内の気圧は低下し始め、最大0.74気圧まで下がります。これは、富士山の五合目と同じ気圧です。したがって、肺の病気・貧血・心臓の病気などの持病がある人は、飛行中に病状が悪化する危険がありますので、事前に担当の先生にご相談ください。また、飛行中にたくさんお酒を飲みますと低酸素状態になります。下のグラフは、飛行中の血液中の酸素濃度です。私のものです。赤の線が酸素濃度です。離陸後、酸素濃度は、徐々に低下し、巡航高度に達すると、酸素濃度は92-3%でほぼ一定の値をとります。しかし、突然急激に下がっているところがあります。ここは、お酒をのんで寝ていたときです。機内でお酒をたくさん飲んで寝るのは大変危険な行為であることがお分かりになると思います。機内のお酒はほどほどに!!



2) 気体の体積の変化
気体の体積は、気圧に反比例して変化します。航空機が上昇すると、膨張し、下降すると収縮することになります。そのため、気体を含んでいる中耳、副鼻腔や胃腸が影響受け、耳や顔が痛くなったり、おなかが張ったりします。下の写真は、飛行中に飲み終わったペットボトルの写真です。こんなに凹んでしまいます。耳がおかしくなるのはこのせいです。耳抜きだけはマスターしましょう。



3) 低い湿度
機内に取り入れている空気が乾燥しているために、機内の湿度は、飛行時間が長くなると20%以下まで低下します。機内の乾燥は、アトピー性皮膚炎の悪化、鼻や喉の粘膜の障害を招きます。また、コンタクトレンズを着用されている方は角膜(目の表面)に傷ができやすくなります。めがねを着用した方がベターです。

4) 揺れ
航空機は、気流が悪いところを通過する際に揺れます。まったく雲のないところでも大きく揺れることがあります。これが晴天乱気流です。飛行機の揺れは、ケガや空酔いの原因になりますので、着席時はシートベルトを着用しましょう。最も揺れが大きいのは機体後方です。

5) 長時間の着席
長時間機内で身体を動かさないで座っていると腰や背中が痛くなるだけではなく、旅行者血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)になってしまう危険があります。また、痔の悪化や前立腺肥大の人の尿閉(尿が出なくなる)の誘因となります。ちなみに、機内で長時間着席しているパイロットの方で多い病気は、腰痛と痔です。

参考)旅行者血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)
長時間下肢を動かさずに座っていると、大腿の奥にある静脈に血の塊(血栓)ができ、最悪の場合は肺に移動して急死してしまいます。他の交通手段(車・バス・列車など)でも起こるため、旅行者血栓症という名称で注意喚起がなされています。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsasem/news/ecs.html
血栓症の既往・手術後・けがをしている人・心臓疾患がある人は、事前に医師と相談してください。予防は、薬物療法、弾力ストッキングの使用と飛行中の一般的な注意を守ることです。

6) 感染症
機内は、人が密集しているために、感染症にかかってしまうのではないかと心配される方が多いと思います。SARSが流行しているとき、皆さんマスクを着用されていました。でも実際に、機内に感染症が蔓延するケースはほとんど報告されていません。それは、すぐれた換気システムが飛行中は機能しているからです。ただし、近い距離で直接飛沫が飛んできたり、ウイルスや細菌に接触した場合は感染しますので、手洗い、うがいは必要です。また、自分の身を守るためにマスクを着用することも効果があります。

今回は、機内環境の話をいたしました。次回は、航空機内での一般的注意のポイントをお話しします。


編集部より:先月より渡航医学の専門家によるシリーズを開始しました。ご執筆頂く大越裕文先生は航空医学の専門家でもあり今月からは航空機での旅がテーマです。
読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。webmaster@jomf.or.jp 宛にメールでお送りください。
著者のサイト:渡航医学センター 西新橋クリニック
http://www.tramedic.com
「渡航医学のABC」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#abc