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ニュースレター(機関紙)

続・話題の感染症17「毒をもった身近な生物(2)海外で出会う有害虫」
NL08090103
感染症

続・話題の感染症17「毒をもった身近な生物(2)海外で出会う有害虫」

海外邦人医療基金(顧問)
長崎大学熱帯医学研究所(客員教授)
日本医師会(感染症危機管理対策委員)
おおり医院 院長(神奈川県)
大利昌久

ロッキー山脈でのキャンプ、熱帯のサバンナ観光などが、容易に実現できる時代である。それだけ、日本にはいない有害虫に出会う機会が増加したことになる。

有害虫の人への影響

有害虫が人に及ぼす影響は次の通りである。

① 感染症を媒介する
吸血されることで病原体の感染を受ける。カ、ブユ、サシチョウバエ、ヌカカ、アブ、サシガメ、ダニ、マダニなどによるマラリア、デング熱、日本脳炎など、深刻な疾患が多い。だが、予防接種で防げるものもある。

② 寄生を受ける
皮下に寄生するノミ(スナノミ症)、ハエ(ハエウジ症)などである。

③ 病原体を伝播させる
ハエ、ゴキブリなどは身体に細菌をつけて運搬する。イエバエによる0-157病原性大腸炎は有名。イエバエが飛び交う発展途上国での外食は要注意である。

④ 皮膚炎の原因となる
カ、ブユなどの吸血や毒などの接触による皮膚炎。これは、それほど重症でないが、極めて被害が多い。抗ヒスタミン薬や昆虫忌避剤を準備する。

⑤ 中毒、アレルギーの原因となる
アリ、ハチ、クモ、サソリなどによる中毒症状、アレルギー症状をいう。特に社会性ハチには注意を要する。クモやサソリでは、抗血清療法が必要なことがある。

代表的な有害虫

1) 蚊
蚊は、吸血昆虫の中で、最も重要なグループである。吸血すると同時に、マラリア、デング熱、日本脳炎を含む各種の脳炎の媒介者でもある。

マラリアは、ハマダラカの仲間によって媒介される。媒介種と発生源(発生する水域)は、地域によって異なる。

デング熱は、ヒトスジシマカやネッタイシマカなどのヤブカによって媒介される。これらの発生源は、居住地の内外が主で、空き缶、水瓶、古タイヤ、花瓶などあらゆる小水域である。

蚊の吸血活動が盛んな時間帯は種によって異なる。ハマダラカやアカイエカは主に夜間活動するが、ヒトスジシマカやネッタイシマカなどは昼間または薄暮時に活動が盛んになる。

蚊の吸血から身を守る方法は、昔からさまざまな方法が考えられてきた。
その方法は、
①網戸や空調設備を完備して蚊の侵入を防ぐ、②蚊帳を使用する、③殺虫剤を用いて屋内に侵入してきた蚊を殺す、④昆虫忌避剤を塗布する、などがあげられる。

2) ヌカカ、ブユとサシチョウバエ
ヌカカ、ブユ、サシチョウバエは蚊と同じ仲間で、自然環境で発生する吸血昆虫である。したがって、都市内ではほとんど見られない。被害を受けるのは、春から夏にかけてで、熱帯地域よりも欧米でのキャンプや渓流釣りなどの際である。

ヌカカは、体長1~2mmの微小な吸血昆虫である。体が小さいので、衣服の中、頭髪の中や蚊帳の目もくぐって侵入してくる。発生の時期は大体決まっているが、遭遇すると被害は多きい。

ブユの類は、体長約3mm。ヌカカよりもやや大きな吸血昆虫である。幼虫が渓流や小川で発生する。アフリカでは、大きな河川で発生し、フィラリアの一種であるオンコケルカ症を媒介する種(Simulium damnosum)が生息している。

サシチョウバエは、翅に鱗毛のある小さな吸血昆虫で、蚊の仲間である。リーシュマニア症という原生動物が病原体である病気の媒介者であるが、都市内で生活している場合は、あまり問題とならない。

これらの吸血昆虫類に刺されると、局所に掻痒感の激しい皮疹がみられる。また、掻くことによって、二次感染の原因となる。特に熱帯地では、化膿するので注意が必要である。これらに刺されないようにするには、昆虫忌避剤(DET:Diethyl-toluamide)を塗布しておくと、ある程度は有効である。

3) アブとハエ類
アブの仲間は、自然環境内や牧場などでみられるが、都市などにはほとんどいない。西アフリカには、ロア糸状虫症というフィラリアの一種を媒介するメクラアブが生息している。

ツェツェバエは、アフリカ睡眠病の媒介昆虫として恐れられている。睡眠病の患者数は少なくなっているが、吸血昆虫としても人を悩ませる。生息地は、アフリカの北はセネガル南部とエチオピア南西部を結ぶ線と、南はアンゴラとモザンビーク南部を結ぶ線である。この範囲には、ケニア、タンザニアなどに多くの国立公園があり、野生動物をみるサファリ・ツアーなどに参加する場合には、忌避剤などの準備も必要である。

4) ドクガ類
外国、特に熱帯の国々には、ドクガ、チャドクガなどの激しい皮膚炎を起こす種が生息している。毒針毛を持つ幼虫に接触する機会は、屋外の森林の周囲、公園、庭などであるが、成虫の場合は夜間に灯火に集まってくる。

ドクガは中国大陸、台湾、東南アジアなどに多く、ヨーロッパや北米東部にはヨーロッパドクガが分布する。北米の南部から中南米にかけて生息しているフランネルガの仲間は、幼虫の体全体に毒針毛が密生している。これらによる皮膚炎の症状は非常に激しく、激しい痛み、頭痛、吐気、リンパ腺炎などの症状がみられる。

5) 有害甲虫類
甲虫類のなかには、体液中にカンタリジンやベデリンなどの毒物質をもち、それに接触すると皮膚炎を起こす種がある。夜間に灯火に飛来するアオバアリガタハネカクシが危険である。この仲間は、東南アジア全域、インド、パキスタンからアフリカにも分布し、被害者が多い。

6) ハチとアリ
危険なのは社会生活を営むスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなどの仲間。ハチ刺傷では個人差があり、局所症状のみですむ人がほとんどであるが、アナフィラキシー・ショックで死亡する場合もある。

熱帯の森林内やその周辺には、多種のアリ類が生息している。米国南部の牧場や草原にマウンドのような巣を作っているファイアアントは、鋭い大顎で噛みつくうえに針で刺すので極めて危険である。アリを刺激しないよう巣を崩したり、蹴飛ばしたりしない。熱帯地域のゴルフ場では要注意。

7) ダニ類
ダニ類には、大型のマダニと小型のダニがある。マダニ類は、ロッキー山紅斑熱、ライム病、極東ロシア脳炎などの感染症を媒介する種がいる。東欧諸国ではダニ脳炎ワクチンが普及している。なお、適切な治療をしないと死亡することもある。
小型のダニには、ツツガムシ病やQ熱、日本紅斑熱を媒介する種がいる。
ツツガムシ病は中国東北部でよくみられ、診断が遅れると重症化する。
日本で日本紅斑熱の死亡例が出た例もあり、油断できない有害虫である。


編集部より

続・話題の感染症16「毒をもった身近な生物(1)クモとクモ毒」はこちらです。
http://jomf.or.jp/include/disp_text.php?type=n100&file=2008070103

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