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ニュースレター(機関紙)

健康相談レポート~専門科目(歯科)医療相談についての報告
NL08080106
医療相談、歯科

編集部より:当基金では毎年海外医療相談を実施しております。2007年度はクアラルンプール、ジャカルタ、バンコク、デュッセルドルフ、フランクフルト、マニラ(実施順)の6都市で医療専門家による相談を開催いたしました。
今回は各地で歯科相談を行った萩原麻美先生(東京小児療育病院)のレポートをご紹介します。歯科は海外渡航に際して予防が何よりも重要です。海外での受診は信頼できる情報無しにはなかなか困難であり、医療通訳を介しての治療でも医師の技量よりも日本語通訳がついてるからという条件が選択基準となるケースもあります。2007年度の歯科相談や講演の機会に行ったアンケート調査から在留邦人の歯科医療に関する悩みや要望、今後の課題などを考察して頂きました。派遣する方、派遣される方いずれの立場にも重要性を理解していただく手がかりとなれば幸甚です。
なお、今年度の相談予定は7月にクアラルンプールが終了、他の地域につきましてはホームページのお知らせコーナーでご案内しております。





健康相談レポート~専門科目(歯科)医療相談についての報告



社会福祉法人鶴風会東京小児療育病院
萩原 麻美

財団法人海外邦人医療基金では海外在留邦人とその家族を対象に小児健康相談と併せて2002年度より歯科健康相談および歯科健康教育を実施しています。今回、2007年度に実施したマニラ、デュッセルドルフおよびフランクフルトにおいて歯科保健についてのアンケート調査を実施しましたのでその結果についてご報告致します。


①財団法人海外邦人医療基金では海外在留邦人とその家族を対象に小児健康相談と併せて2002年度より歯科健康相談および歯科健康教育を実施しています。実施目的は日本人専門医師による日本語での医療相談、日本人会診療所への業務支援や診療所のPRです。そして、実施内容は小児、歯科および皮膚科の相談です。

専門科目医療相談
実施目的  
(1)日本人専門医師による日本語での医療相談
(2)日本人会診療所への業務支援、診療所のPR

実施内容
小児相談:小児健康相談、小児発達相談、母親育児相談
歯科相談:歯科健康相談、歯科健康教育
皮膚科相談:皮膚科診療、皮膚科


②現在までの実施状況を示します。
当初はアジア諸国が医療不安を抱えていると考え、ジャカルタ、バンコク、クアラルンプールで実施を開始しました。しかし、欧米における必要性が認識され、2006年度よりドイツ・フランクフルト、2007年にはデュッセルドルフにおいて小児発達相談および歯科相談を実施しています。





③この報告の目的は2007年度に実施したマニラ、デュッセルドルフおよびフランクフルトにおいて小児発達についての講演会参加者および歯科健康相談会の参加者に歯科保健についてのアンケート調査を行い、それぞれの赴任地における在留邦人の歯科保健の現況を把握し、改善点を検索することです。

アンケート内容は・赴任期間および赴任形態・赴任前後の歯科受診状況・口腔疾患の予防と全身とのかかわりについての知識・海外邦人医療基金の巡回歯科医療相談において希望する内容 など15項目で、合計159世帯、547人の回答が得られました。





④以下に代表的な質問についてご報告いたします。
赴任形態については全体の93%が家族帯同世帯でした。





⑤赴任地での滞在期間はすべての都市で過半数が3年未満でしたが、マニラではデュッセルドルフ、フランクフルトと比較すると5~10年と比較的長期に滞在している人が多い傾向となりました。
あとどれくらいの期間滞在するのかはすべての都市で半数以上の人がわからないと回答しました。このことは、特に歯科においては長期の治療期間を要する歯並びの問題が生じた場合に治療を開始するタイミングについて悩む原因になるようです。





⑥年齢については、子どもは6から12歳の小学生が、成人では40歳代、30歳代が多いという傾向を示しました。





⑦派遣者および家族が赴任地で歯科受診の経験があるかどうかについての質問に対してはデュッセルドルフ、フランクフルトでは半数以上が「ある」と回答したのに対してマニラでは滞在期間が長い傾向を示したにもかかわらず、「ない」人のほうが多い結果となりました。





⑧受診時の会話形態についてはデュッセルドルフ、フランクフルトではそれぞれ85%、75.7%が日本語あるいは日本語の通訳を介していました。一方、マニラでは英語による会話が66.7%であり、そのためか十分にコミュニケーションできなかったと感じている人が多い結果となりました。





⑨マニラ、デュッセルドルフ、フランクフルトいずれの都市においてもほとんどの人が歯の悩みを相談したいと思ったことがあると回答しましたが、半数近くの44%がすぐに歯科を受診せずにそのままにしていたことが明らかになりました。そして、その割合はマニラにおいて高い傾向を示していました。





⑩そして、治療が必要になった場合には全体の半数以上(57.6%)の人が日本での治療を希望しており、歯科受診率の低いマニラでは約90%の人が日本での治療を希望していました。





⑪次に口腔疾患の予防と全身疾患とのかかわりに関する知識についてですが、
子どもの虫歯の予防にフッ素剤が有効であることについてはほとんどの保護者が知っていましたが実際にフッ素を使用しているのは半数以下であり、自宅で使用している場合には使用方法が誤っているケースも認められました。





⑫日本では妊婦に対しては保健所や病院で母親教育があり、母親自身の口腔内清掃の重要性を学んだり、歯科検診の機会があるのですが、海外に在住している場合はそのような機会がありません。今回の調査で専門家の話を聞いたことがあるのは半数以下であり、妊婦の歯周炎が切迫流産や低出生体重児のリスクを上昇させるということについてはほとんどの人が知りませんでした。





⑬また、口腔疾患が糖尿病や心疾患と関連があるということを知っている人は3分の1以下でした。





⑭定期健診の受診率は50%以下であり、その理由としてマニラではどこの歯科医院を受診すればよいかわからないと回答した人が42.5%と多く認められました。





⑮最後に海外邦人医療基金の巡回歯科相談に対して希望する内容としてはむし歯や歯周疾患および矯正についての相談と並んで歯科検診、ブラッシングによるフッ素塗布などの予防的処置や知識についてが多く、邦人の口腔疾患の予防に対する興味が高いことが示されました。





⑯今後の課題
(1)実施都市の選定
(2)内容:口腔疾患に関する予防知識の普及
      全身疾患との関連についての知識の普及
      口腔疾患の予防処置の実施
(3)現地歯科医院との連携
(4)運営の効率化、受益者負担

今回のアンケート調査の結果、マニラ、デュッセルドルフ、フランクフルトすべての都市において大多数の人が歯の悩みを相談したいと考えていることが明らかになりました。
海外在留邦人は口腔疾患に関する予防知識の普及、予防処置を希望していました。

今後は、74%の人が必要性を感じている歯科健康相談を継続すると共に、上記今後の課題について検討をし、小児科、内科などの他科と連携しながら相談を充実させることが望まれていると考えられます。

まとめ(企業へのメッセージ)

海外に在留する日本人の数は年々増加傾向にあります。一般的に先進諸国では現地歯科医療に対してある程度の信用があるため、開発途上国に比べて在留邦人の歯科医療に対する不安も深刻ではないと考えられがちです。しかしながら、今回のアンケート調査の結果、赴任先においては先進国、途上国にかかわらず、ほとんどの人が歯の悩みを日本人歯科医師に相談したいと希望していることが明らかになりました。さらに、赴任先において口腔内にトラブルがあってもすぐに歯科受診をせずにそのままにしてしまうケースも多いようです。

国民の罹患率が90%を超える歯科保健はその高いニーズにもかかわらず、赴任者に対する管理体制が派遣元企業において十分とはいえず各人のセルフケアにゆだねられているのが現状です。労働者を6カ月以上海外に派遣する場合、健康診断については1989年より義務化されていますが、歯科健康診断についてはいまだ全面的に義務化されていません。

今後海外赴任者の歯科保健を改善するためには
① 歯科医療相談の継続の必要性、
② 歯科疾患の予防について、歯科疾患と全身疾患とのかかわりについての知識を広める必要性、 
③ 歯科疾患の予防的処置の必要性      が認識されました。



フランクフルトのオペラハウス