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ニュースレター(機関紙)

渡航医学のABC その1 トラベルクリニックの積極的活用
NL08080105
医療情報、海外渡航


新連載 渡航医学のABC その1 トラベルクリニックの積極的活用



渡航医学センター 西新橋クリニック 院長
日本渡航医学会 副理事長
元日本航空インターナショナル 主席医師
大越裕文

渡航医学と企業の健康リスクマネージメント
海外渡航は、以前から比べればはるかに容易になりましたが、日常とは異なるストレスを受けることには変わりありません。下痢、発熱、時差ボケ、持病の悪化、メンタルトラブル、デング熱、マラリア、旅行者血栓症(エコノミークラス症候群)などなど・・・日本にいる時には経験しない様々な健康問題のリスクが生じます。当然、企業から派遣される方々もリスクがあります。むしろ、最近は渡航者が中高年化し、渡航先も衛生状態の悪い地域が増加してきていますので、リスクが高くなってきているととらえた方がいいかもしれません。特に、事前にケアされていない出張者にトラブルが多いようです。ここで問題となるのは、同じ疾病であっても、海外で発生した場合には、その対応に大きな労力を要し、場合によっては本来の目的であるビジネスの成否にも影響を及ぼす危険があることです。

そこで、渡航者の健康問題対策として注目されてきているのが渡航医学(travel medicine)です。渡航医学とは、渡航中の健康トラブルを予防する医学であり、感染症だけではなく、ほぼすべての医学の分野をカバーする新しい医学の分野です。新型インフルエンザ対策も渡航医学が扱っている分野であり、企業を対象としたセミナーなどが数多く開催されているのはご承知の通りです。

この渡航医学の知識をうまく活用し、渡航者自身の健康リスクを小さくすることが企業の健康リスクマネージメントとして今求められています。欧米では、健康リスクの高い地域へ渡航する場合には、健康スクリーニングやワクチンの接種、マラリア予防薬の内服を義務付けている企業も認められます。今後、日本でもこのような対応をとる企業がでてくるでしょう。
ということで、日本ではまだまだ馴染みの少ない分野ですが、これからしばらくの間、渡航医学の中で特に企業の方々に必要な情報を定期的に提供していきたいと思っています。




自己紹介
さて、前置きが長くなりましたが、ここで、私の自己紹介を簡単にさせていただきます。私は、昭和56年東京慈恵会医科大学を卒業し、消化器内科勤務、米国留学を経た後、航空会社で14年間、社員の方々の健康管理を担当してまいりました。在籍中は、航空機内にAEDを搭載するプログラム、乗務員教育、お客様の健康問題対策を担当させていただき、渡航医学の重要性を深く認識するようになりました。このたび、もっと自分の経験を生かして渡航医学を日本に普及させたいと考え、海外渡航者向けのクリニック(トラベルクリニック)を港区西新橋にオープンいたしました。
◆渡航医学センター 西新橋クリニック http://www.tramedic.com

海外赴任や出張の方々は出発までの時間が限られておりますので、予防接種、生活習慣指導、英文紹介状を1回の来院で提供できるプランを準備しております。また、狂犬病ワクチンや腸チフスワクチンは海外の一流メーカーから輸入したワクチンを常備し、マラリアの薬で副作用の少ないマラロンも輸入手続き中です。今後は、メールマガジン、帯同家族への各種セミナーの開催や講師の派遣も提供していきますので、お気軽にご相談ください。

トラベルクリニックとは?
第1回目のテーマは、トラベルクリニックです。トラベルクリニックとは、海外渡航者に対して、渡航先の医療情報提供、ワクチン接種や健康指導などをサービスするクリニックです。その起源は、ヨーロッパの航空会社がお客様のためにワクチン接種やマラリア予防策を提供することを目的として設立したクリニックとされています。今から40年ほど前のことです。現在、欧米ではたくさんのトラベルクリニックが存在しています。渡航者は、気軽にトラベルクリニックを受診し、渡航前に必要なサービスを受けています。例えば、チューリッヒ大学病院では、年間2万人の方が受診しています。ちなみに、日本でトラベルクリニックの先駆的な役割を果たしている海外勤務健康管理センターの受診者は年間4千人です。日本では、まだまだ受診者の数は多くはありませんが、次第にその有用性が認知されるようになり、ここ数年国公立の病院にトラベルクリニックが設立され、私のような個人のトラベルクリニックも都市部を中心に出現しはじめています。
◆日本渡航医学会 トラベルクリニックリスト http://www.travelmed.gr.jp/



トラベルクリニックのメリット
企業において、渡航者に対する健康対策は、おもに健康管理部門が担当することになります。しかし、企業内診療所で提供できるワクチンも限りがあるため、すべての渡航者や帯同家族に対応することは不可能です。したがって、外部の医療機関を利用せざるを得ないわけですが、困ってしまうのがその紹介先です。日本では、まだまだ一般の医療機関では、渡航医学に通じた医師はいらっしゃいません。
そこで、お勧めしたいのがトラベルクリニックです。
そのメリットをいくつか紹介いたします。

1.渡航者に特化したクリニックである。

2.信頼できる豊富な渡航先情報をもとに、渡航医学の専門家がアドバイスしてくれる。情報源は、世界保健機関(WHO)、アメリカ疾病予防センター(CDC)、外務省、厚生労働省の情報を使用しているようです。私は、迅速かつ効率よく情報を提供できるように、世界中で広く利用されている有料情報サイトTropimedを使用しています。

3.企業が対応困難なラストミニッツ・トラベラー(急に渡航が決まり、出発までに余裕のない渡航者)に対しても、迅速に対応できる。
(ア)ワクチンの種類が多く、ワクチンを常備している。
(イ)海外では接種することが常識となっている未承認のワクチンも接種することができる。渡航後、現地でワクチン接種を受ける選択肢もありますが、渡航後は接種する方は少ないようです。そのためか、腸チフス(ワクチンは日本未承認)に感染する方が多いようです。できるだけ、渡航前に接種すべきです。

4.帯同家族に対応してくれる。

5.英文診断書を作成してくれる。英文診断書は、糖尿病などの慢性疾患や喘息、アレルギーなどの環境の変化により急激に悪化する可能性のある疾患を持っている渡航者の医療情報源として極めて有用です。また、現地の医療機関を受診する際には、必須のものです。

クリニックによりサービスに差がありますので、事前にホームページやお電話等でご確認ください。
私が所属しております日本渡航医学会では、さらに専門家・トラベルクリニックを増やすために、医師・看護師・薬剤師・歯科医師などへの研修会を積極的に行っていきたいと思っております。


編集部より:今月より渡航医学の専門家によるシリーズを開始します。ご執筆頂く大越裕文先生は本文の自己紹介にもあるように航空医学の専門家でもあります。
島国である日本では、海外渡航のほとんどが航空機利用となります。乗り物の中でも特に健康状態の条件が制限される交通機関です。海外渡航には不可欠の航空機による旅に関しても今後テーマに取りあげて頂く予定です。
読後の感想、意見、質問および今後取り上げて欲しい話題のリクエストなどを受け付けます。webmaster@jomf.or.jp 宛にメールでお送りください。