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ニュースレター(機関紙)

北京の街角から~中国医療現場からの報告~第7章 「医療機関にはランクがある」の巻
NL08070104
医療情報、中国


北京の街角から~中国医療現場からの報告~第7章 「医療機関にはランクがある」の巻



北京天衛診所顧問歯科医
中華人民共和国 歯科認定医 田中健一

 病気になった時、皆さんはどこの医療機関を受診しますか?アクセスの良い医療機関、評判の良い医療機関、知合いのいる医療機関、本などで紹介されている医療機関、このあたりが多くの日本人が共通に考える 受診する際の基準だろうと私は考えています。

 誰もが保険証があればどこの医療機関でも受診できる権利を持っていると日本人は考えます。そして、この私も保険証があれば、どこの医療機関であっても受診でき、保険治療を受けることができると(北京に来るまでは)思っていました。まさか、自分が受診できない医療機関がある、病院によって支払う医療費に違いがあるなどとは夢にも思っていませんでした。

 マルクス、レーニン、毛沢東が生きていれば泣いて喜ぶ共産主義制度こそ、今、私達が享受している日本の医療制度です。 全国一率、どこの医療機関でも同一料金で受診できる、こんな日本人にとって当たり前のことを北京の人に説明すると大いに驚きます。皆、同じ料金なら競争をしてより良い病院になろうとするインセンティブがどこにあるのだ、とは中国の医療関係者から何回も私に発せられた質問です。この制度こそが、日本の常識は世界の非常識の際たるものだと理解するには非常に多くの時間がかかりました。

 今回は中国(ここでは北京基本医療制度)で受診・入院に際し、医療機関はどのような枠組みになっているかを紹介します。
 北京市の戸籍を持ち北京市にある企業に雇用されている労働者は北京市の提供する公的医療保険に加入します。この労働者が医療機関を受診する際には、自身の居住する場所や勤務する企業により、自分が受診できる公的医療保険が適応になる医療機関が指定されます。一般に、公的医療保険を使う場合には、近隣の4つの医療機関の中から受診先を決めます。指定以外の医療機関を受診した場合は公的医療保険は適応外になります。
 この4つの医療機関の他に、重篤な場合や精査が必要な場合のために、三級医院を1つ、二級医院を1つ受診することができます。中国では医療機関ごとにランクがあり、その中から患者は医療機関を選択するのです。あたかもフランスのレストランが星の数によって評価されるごとく、医療機関にも歴然とした明確なランクがあり公表されています。以下、ランクの紹介です。

◆三級医院:
規模が大きく技術水準が大きい病院。例えば北京協和病院、北京大学人民医院、北京大学第三医院、首都医科大学北京同仁医院など。
◆二級医院:
区や県(日本の市レベルの行政区に相当)の中心になる医院や眼科、皮膚科、中国医学などの専門病院などの中規模病院。
◆一級医院:
通常の医療を提供する一般公的病院。

 なお、このようにランク付けされると、一級医院はレベルの低い病院と認識されがちですが、衛生部(日本の厚生労働省)により一級医院にも指定されない病院も多く存在することを付け足しておきます(表参照)。そして、公的医院でありながら、衛生部によってより良いランクに認定されるため、病院は切磋琢磨をくり返すのが今の病院事情です。

(表)中国の全病院のうち一~三級病院の占める割合



 患者はより良い医療を求めてまっ先に三級医院を受診しないのでしょうか?答えは一概に即三級医院とはなりません。保険によってカバーされる範囲が異なっているので、うまくできているのです。つまり、かかった医療費が1万元までの場合、一級医院なら85%保険がカバー(自己負担は15%)しますが、三級医院では自己負担は20%に増えます。ランクが上なら個人負担も多い、自分の懐具合と病気の程度により患者は受診する病院を決定するようになっているのです。

 医療保険を使う場合にはこのような制約があります。これは民間の営利を目的とした医療保険であれば、私にとっても理解できるのですが、公的医療保険がこのような非常に制約の多い制度であることに当初は非常に違和感がありました。しかし、家庭医を持つこと、重複受診を避けること、などからすると、ある面、合理的な制度であるとも考えるようになりましたが、如何でしょうか?日本ではより良い医療を受けるため、新幹線や飛行機を使って受診する患者があると聞きます。このような人にまで、医療費を公的に支給する必要があるのかどうか、最近は自分の中で明確な基準が揺らぎだしています。

 こう紹介してくると、中国の制度はより良い医療を保険で提供されたいなら、自身の負担も大きくなる点で合理的であり、考えれば考える程、理に適っていると思うようになりました。日本も医療制度にほころびが見えだした昨今、全国同一医療費(同じ疾患名なら医療機関に影響を受けない)、フリーアクセス(どこの医療機関でも受診できる)にメスを入れることを考えても良いのでは、と言ってしまうと、皆さんから医療に資本主義を持ち込もうとしている、「日本の公的医療保険制度の敵」と切って捨てられてしまうでしょうか?皆さんの御意見がいただければ幸いです。



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●「北京の街角から~中国医療現場からの報告」索引コーナー
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