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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(65)「海外赴任者のストレス~大人だって褒められて育つ(続)自分の存在意義」
NL08070102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~大人だって褒められて育つ(続)自分の存在意義

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

会話でのコミュニケーション
人間としてコミュニケーションを図る時、言葉はもちろん大切な役割を果たしますが、言葉以外の「態度」「視線」「会話を発するタイミング」などもその人の気持ちを示す、重要なコミュニケーション手段となります。
夫婦喧嘩をしている時、(夫)「普通は、こう考えるだろう?!?」と大きな声で話し、一つため息を付きました。これには、暗に『こんなことも、考え付かないわけ・・・?大人として、有り得ないでしょう?』という非難と侮蔑が含まれています。こうなると、奥さんは、夫の意見が正しいか正しくないかよりも、『自分の存在や努力を、頭ごなしに否定された』という気持ちから、素直に非を認めたり、誤ったりすることが出来なくなります。
(妻)「・・・・だって、あの時はこういう状況だったんだよ・・・。あなたには、私の気持ちが伝わらないわけ・・・?」
(夫)「気持ちとかじゃないでしょう・・・普通はこうしないって言ってるの!!全く(舌打ち)・・・」
(妻)「あなたは、いつもそうやって言うけど、あなただって、あの時こうしなかったじゃない!」
二人は、「実際に、どこが二人の意見のちがいか?」という事柄よりも、「自分の存在価値を否定された」ことに腹をたて、言い争い、相手を深く傷つけてしまっているように感じます。

子供達は、よく失敗をする小さな人間です。だから、大人から注意を受けたり、叱られたりすることも少なくありません。例えば、お友達とけんかをし、先に友達を叩いてしまった子供に「どんな理由があっても、人を叩いてはダメだよ。」と目線を合わせて、しっかり注意をすることは、決して子供の心にダメージを与えません。
こんな場合はどうでしょう。
いつも段取りの悪い小学校6年生のお姉ちゃんと小学校2年生の妹の就寝前のことです。妹は、低学年ですし宿題も少なく、すっかり翌日の時間割も準備が出来ていました。一方、お姉さんは、自分のやりたいゲームや遊びを優先し、就寝時間になっても、アタフタと宿題をやっています。(母)「お姉ちゃん、どうして小学校6年生なのに、こんなことも出来ないの。妹を見てみなさい。あなたは、本当にいつもこうなんだから・・・(ため息)・・・一体、何回言ったら分かるのかしら。」
子供を注意することや叱ることは、とても大事なことだと思いますが、その言葉や言外の態度は十分に気を付けなければならないでしょう。

『自分の存在・努力』を認められたいのは、大人だって同じこと。
仕事の中では、上司から部下へ指導が不可欠な場合もあるでしょう。厳しく指導を受けたとしても、その人の存在やその人の意見あるいはその努力だけでも、きちんと評価して貰えれば、その人は、実力を発揮する努力を続けていくことが可能になるのではないのでしょうか。
夫婦だって同じこと。お互いの問題点を指摘しあい、「どうして分からないかな・・・」「あなたは、いつだって、こうなんだから・・・」と、お互いの足りない所を責め合うのは、お互いの存在価値を損ねることになるようです。時間や社会的役割として自分には絶対に出来ない部分を、相手が担ってくれていたら、そこを大いに評価しましょう。

自分が認められたければ、相手を認め、褒めてみよう
仕事場では厳しい上司でも、例えば、週末ゴルフに、後輩が長時間運転してくれたことを労うことは出来るでしょう。「いや~長距離運転お疲れ様。家でゆっくり休んで、また、月曜日から一踏ん張りよろしく。」過剰に褒める必要はありません。ただ、正当に評価し、感謝することです。「いや~やけに時間掛かったなあ。サッカーの試合が見たかったのに・・・始まっちゃったかなあ?じゃあ、お疲れ様。」こんな風に気持ちを伝えては、片道3時間の運転をした後輩は、残念な気持ちになるにちがいありません。

「口下手」という表現がありますが、褒めることが下手な人・お礼の下手な人・謝るのが下手な人など、会話でのコミュニケーションが下手な方は、結構いるようです。こんな方には、文字での交流が適していることもあります。会話が上手でないからこそ、一言、メールやメモで、気持ちを伝えるのは効果的です。

生活リズムが合わない思春期の子ども達や夜中に帰ってくるお父さんにも、一言メモは絶対に効果があります。用件だけのメモはNG。夜中12時に帰ってきて、「お父さん、明日、○○の支払いお願いします。」というメモを発見したら、お父さんの疲れは倍増しそうです。
「お父さん、今日もお疲れ様。暑かったから、疲れたでしょう。まずはゆっくり休んでください。」「お兄ちゃんへ、毎日、部活お疲れ様。雨の日が多いから、体を冷やさないように、試合に向けて頑張ってね。夏期講習の申し込みが来ています。日曜日の試合が終わったら、ゆっくり相談しましょう。」
最初は、一方通行のコミュニケーションでも、いつかあなたが相手を大事にした分だけ、あなたの存在意義が増し、素敵な関係になってゆくと思います。