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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(64)「海外赴任者のストレス~大人だって褒められて育つ」
NL08060102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~大人だって褒められて育つ

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

「自分はここに居る必要があるのか?」
Wさんは、30代後半の奥さんです。ご主人の海外赴任に伴い、シンガポールに来ました。赴任前研修で、話には聞いて来ましたが、Wさんのご主人の多忙さは、日本で勤務していた比では、ありませんでした。仕事が忙しいというよりも、人生の多くの時間を「仕事に占められてしまっている」という生活です。金曜日の夜に出発して、海外出張。翌週の火曜日に戻ってきて、シンガポールで溜まった業務をこなして、週末は、お客さんとゴルフ。夫は、着替えと睡眠のために帰宅するような生活で、疲労困憊です。Wさんは、元々、かなりの適応力があり、人間関係作りも上手ですが、パートナーが実質的に不在の日常に、さすがに不満が溜まってきています。
「週に1日くらい、私と夫の時間を確保して欲しい・・・」こんなにヘトヘトの夫に、自分が要求は出来ないし、さりとて、このまま3年間、自分はただただ夫を待ち続けて生活するのかしら?「夫の洗濯と着替え、日常の管理には、私は必要かもしれないけれど、それが自分の存在する意味なのだろうか?」

Mさんの夫婦は、精神的にお互いがパートナーとして支え合えない状態が続いています。週末は、夫はひたすら自分のペースで過ごして休息をしたい人。コンピューターやゲーム・昼寝・趣味のマンガなど、自分の世界にどっぷりと浸かりたい人です。外食に出かけても、夫は、週刊誌を眺めながら食事をしているタイプなので、奥さんは理解できずに、口喧嘩も繰り返してきましたが、いつの間にか、「喧嘩しても変わらないのなら、争わずに、二人とも週刊誌を読んでいた方が楽だ!」と思うようになっていました。
海外に赴任した当初は、二人で外食・観光も楽しかったのですが、慣れてくると、結局、元の状態に戻ってしまいました。
他の夫婦は、中々楽しそうに趣味をしたり、友人を作ったり、旅行を楽しんだりしているのに、Mさんご主人は、夫婦共同の人生に興味がなさそうです。奥さんは、寂しいような悲しいような気分になり、「自分は必要とされているのか?」「私が、ここに居る意味があるのか?」考えてしまいます。

Iさんは、30代前半、独身の会社員。日本で大きなプロジェクトの一員として活躍し、シンガポールに赴任となりました。Iさんには、強い上昇志向がありました。「仕事もきちんとやって成長したい。」その為には、残業も気になりません。
ところが、シンガポール勤務は、他の人が羨むほどの「ゆとりのある」勤務です。会社の業務上の問題点を改善しようと、Iさんが提案しても、従業員の問題意識が低く、一向に進みません。「同期の人が、日本でバリバリやっているのに、自分はこんなんでいいのか・・・?」「ここでこのような仕事をしている意味があるのか?」Iさんは、不安になります。

「大人だってほめられたい」
誰かに自分の存在を必要とされたり、誰かに自分の存在意義を評価されたりすると、人間は、「もっと頑張ろう」と思えるから、不思議です。「子供は褒めて育てろ!」ということは一般的な理解となっていますが、大人だって同じこと。「大人も褒められたら伸びる!」ということを、最近の外来診療で痛感します。

同じように「部下を叱咤激励する」社長さんでも、部下に人望がある方と全く部下の心が離れている社長さんの2通りがあります。もちろん、皆さんも前者になりたいと思っているにちがいありません。大事なことは、「部下を褒めること」「部下の働きを評価すること」「その存在を『必要な人だ』と伝えること」小さい子供の子育てでは、「10回褒めて、1回叱る」等と書かれた本も出版されていますが、大人の場合は、10回厳しい話をしても、1回評価すれば、関係が変わってゆくこともあるのです。
夫婦の関係でも同じこと。海外出張で不在がちなご主人から、「出張中は、子ども達のことは全部君に任せきりになって、悪いね。」「仕事に集中できるのは、君のお陰。」と言われたら、奥さんも頑張り甲斐が増すのではないでしょうか。

前述のMさん夫婦はいつも言葉足らず。奥さんが、とうとう耐え切れず、「あなたにとって私が必要ないのなら、私達が結婚を維持する意味は無いんじゃない!」と伝えると、ご主人は「いや困る。僕には君が必要だ。悪いところは直すから・・・言ってくれ。」と大反省。大喧嘩の後、「それならこれからも頑張ろう」と思うのですが、奥さんが提案した休日のプランに、楽しくなさそうに付いてくるご主人を見ると奥さんは更につらくなるのでした。ご主人は、自分の楽しむ時間を削って「妻の喜ぶように」休日を過ごしているのに、なんで彼女が不機嫌なのか全く理解が出来ません。

「褒めるのが下手な人」を認識しよう
Mさん夫のように、相手がどんな言葉を望んでいるのか読み取れない人たちがいます。「学歴は高いのに、相手を気遣う言葉をタイミングよく発せられない人」あなたの周囲にいらっしゃいませんか?Mさんの奥さんは、「夫は仕事では付き合い上手なのに、私の存在を大切に思っていないから、あんな態度になるの?私といることが苦痛なのに、どうして私を必要なんて言うのだろう?家政婦代わりにでも思っているのかしら?」と、どんどん悪い方向に考えてしまいます。ちょっと待って下さい。Mさんのご主人は、元々、相手の気持ちの読み取りが得意ではないのかもしれません。(次回に続く)