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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(63)「海外赴任者のストレス~海外生活に慣れるまで(ホームシックと心の変化)」
NL08050102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~海外生活に慣れるまで(ホームシックと心の変化)

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

シンガポールは現在、大変に蒸し暑い日々が続いています。気温は、32~33度程度ですが、湿度が60~70%で、室内にいてもじっとりと汗が出てきます。来星して、10年目の私でも、「こんな季節は早く終わって欲しいなあ・・・」と思う毎日です。7月8月になると、比較的過ごし易い季節になる事を知っているので、それまでの我慢だと思っています。

この春に、初めて来星された方々は、この蒸し暑さに体がびっくりしているようです。元々夏が苦手なMさんご夫婦。特に奥さんは冷房が苦手で、少し蒸し暑くても扇風機や自然な風の中で生活することを好んできました。Mさん夫婦の今の悩みは、「夜間の冷房調整」です。皆さんも経験がありませんか?熱帯夜の夜は、寝苦しく、どうも眠りが浅くなってしまうのです。どうやったら朝まで快適に眠れるのか?エアコンを夜中に切ってみたり、冷気が体に当たらないようにベッドの位置を変えてみたり、間接的に冷気が入ってくるように、居間のエアコンをつけて、自室のエアコンを切ってみたり・・・
来星2カ月、やっと朝まで熟睡の日が多くなってきたそうです。それでも、週に3~4回は夜間に目覚めて、冷房と格闘中と伺いました。

この暑さで、夏バテ状態となり食欲が上がらないという話も伺います。食材も年中同じで、季節感が無いし、食欲を刺激する要因も少ないのです。初めは、目新しかったシンガポール料理も段々と魅力が薄くなってしまうようです。

こんな時、「あ~、日本に帰りたい。日本だったら、今の時期、こんな様子で、こんなものが美味しくて・・・」と考えてしまうのは、当然でしょう。子ども達も、また、同じ気持ちです。「お母さん、今日は金曜日だから、日本ならポケモンをやってるよ。」「大好きなアイドルのドラマが観た~い。みんなと、テレビの話題で盛り上がって話したいのに・・・」
「コンサート行きたい。日本に帰りたい。」

<ホームシックと心の変化>
元の生活が恋しくて、心細くなっている時に、大人の場合は、「著しい閉塞感」と「これからここで生活を続けられるのか?」という不安感を強く自覚します。「閉塞感」=「シンガポールに閉じ込められている感じ」が強まると、「この生活から脱出したい焦燥感」へと繋がります。心理的に閉塞感があると、ため息が増えたり、深呼吸したくなったりするから不思議なものです。また、些細なことでイライラしたり、他人の楽しそうな生活をみて、急に哀しくなったり、感情が上下し易くなります。

子供の場合には、実際に急に泣き出したり、「私はシンガポールに来たくなかったのに・・・」と激しく親を責め立てたり、兄弟喧嘩が激しくなったりすることがあります。そんな状態でも、学校では明るく普通に振舞い、外出時には楽しそうにしています。
家庭での精神不安定な子供の状態を心配して、学校や塾に相談しても、先生方からのお返事は、「いや~、学校(塾)では、普通です。頑張っていますよ。」ということがほとんどです。大人も子供も、外では普通の顔をして、家庭に戻ってから、感情が爆発してしまうようです。
このような心の変化は、実は、来星した方の多くに起こります。病気というよりは、心の一時的な反応と考えていただいた方がよいかもしれません。

しかしながら、この心の反応が過剰に出たり、長引いたりする時には、是非、専門家に話を聞いてもらうことをお勧めします。海外邦人医療基金のメンタルヘルス相談を利用することも一計です。
今月のシンガポール心療内科の外来は、この春来星された方々の初診が多く見られます。大人も子供も、「今の気持ちを乗り越えたい」という前向きな気持ちと「こんな気持ちがずっと続くのなら、ここでの生活は無理なのかも・・」という不安感が交錯しています。話すこと・気持ちを分かち合うこと・そして少量の薬物療法などで、このピンチを乗り越えられることを願っています。