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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(62)「海外赴任者のストレス~夫婦の意見の相違・価値観の相違」
NL08040102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~夫婦の意見の相違・価値観の相違

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

前回の話題は「夫婦の危機」でしたが、今回のテーマは「夫婦の意見の違い」です。海外生活では、「家族」という単位の密着度が増すように感じられます。夫の会社の方々と家族ぐるみでお食事会をしたり、奥さんや子供のお友達と家族ぐるみでお付き合いをたり、子供の習い事が一緒のお父さん達が親しくなり飲み会を開いたり、夫婦二組でゴルフに出かけたり、家族を通した色々な出会いや人間関係があります。

シンガポールで二人の男の子を持つAさん夫婦は、毎週末、子供のサッカー練習について行き、お父さんはコーチとして、お母さんはサポート係としてそれぞれの役割を果たしていました。日本で生活している皆さんの中には、「わー、子供の活動に熱心な親御さんだな~」と感じられる方もいるでしょう。ところが、ここシンガポールでは、これが週末の一般的な過ごし方の一つとも言えるのです。

Aさんが日本に帰国されて、しばらくして連絡をもらいました。「日本では、サッカー練習は放課後の学校でやってくれます。最初は、シンガポールと同じ感じで、私も練習を見学に行っていました。そうしたら、周囲から『非常に熱心なお母さん』と思われたようです。今は、子供達だけで行かせています。どんな友達とプレーしているのか、以前のように知ることは少なくなりました。」どんな子達と一緒にスポーツをし、そのお父さんがどんな人で、お母さんがどんな人で、家族構成がどうなっているのかまで知っている間柄というのは、海外生活の特徴です。

こんなに家族の関係が近い分、夫婦お互いの意見の食い違いや価値観の違いが大きなトラブルに発展し易いのも海外生活の特徴です。

Bさん夫婦には、6歳の一人娘がいます。この子に、シンガポール在星中にどのような教育をしてあげるのか、夫婦の意見がまとまりません。ご主人は、「数年後には日本に帰国するのだし、子供の性格を考えると、日本人小学校で安心して学ばせたい」と考えています。奥さんは、自分自身も帰国子女である経験から、「折角の機会だから、娘が自信をつけるためにも、インターナショナルスクールで英語教育に触れのびのびと育てたい」と考えていました。お二人とも「娘の将来」を真剣に考えるあまり、話し合いはヒートアップ。いつの間にか激しい言い合いに発展し、ついに(ご主人)「どうしてもインターナショナルスクールに入れるというのなら、お前が子供の将来に責任を取れ!」とまで発言してしまいました。
結局、お嬢さんはインターナショナルスクールに入学しましたが、お嬢さんが学校を楽しめていないと、夫は妻を責めてしまいます。奥さんは、何としても「夫に自分の正しさを証明したい」と、娘の勉強や友人関係作りに必死です。でも、心のどこかに『自分一人が頑張っているという不満』や『夫に自分の努力を認めてもらえない寂しさ』抱えています。

Cさん夫婦がもめるのは、奥さんの友人と家族ぐるみのお付き合いに出掛けた時です。奥さんは、「是非、夫婦揃って楽しみたい!」と張り切っていますが、ご主人は日頃仕事で、沢山の人と関わっているので、週末くらいはゆっくりと過ごしたいと思っています。奥さんは、周囲と同じノリで盛り上がっていない夫にいつも不満が残ります。「どうしてもっと楽しんでくれないの?」と言われても、ご主人は返事のしようがありません。

Dさん夫婦は、小学校2年生のお兄ちゃんの習い事でもめてしまいました。お父さんは、お兄ちゃんを週末のサッカー練習に連れてゆきたいと思っています。ただ、始めるからには少々天気が悪くても、少々本人がグズっても、きちんと続けさせたいと思っています。ところが、Dさん夫婦にはもう二人、4歳と1歳の兄弟がいます。お母さんとすると、毎週日曜日に、お父さんとお兄ちゃんが半日不在になる生活に自信がありません。お父さんが出張や仕事の時には、自分が3人の子供を連れて朝早くからサッカーに出掛けなければなりません。「サッカーやるのはいいけど、私は手伝えないからね・・・それでもいいのよね?」思わずきつい言い方で奥さんは突き放してしまいました。

Eさん夫婦は、来星前からギクシャクしています。それは、『海外赴任』という人生の大きな変化に対して、二人の思いが全くかみ合わないからです。ご主人は、以前から外国での仕事に興味があり、海外赴任に積極的です。来星後も、シンガポールの気候も文化も言語も大いに楽しんでいます。一方、奥さんは、元々、完璧主義で生活の変化を楽しめるタイプではなく、将来の計画やプランをしっかりしておきたい方でした。海外赴任辞令は、想定範囲外。どう受け止めてよいのか分かりません。「赴任期間は3年だけど、延長されることもある」時には10年近く海外勤務であったり、シンガポールの後、別の外国勤務になったりする事もあるそうです。「私は、子供が中学になるときに先に帰国します!!」そう宣言して、夫に帯同してきましたが、すべてが楽しくありません。

夫婦とは、不思議なものです。お互いの意見が合致し協力して物事に当たれれば、その力は百人力です。一方で、ちょっとした意見の食い違いが、精神的な大きな負担になる事もあるのです。お互いの意見をすり合わせる努力は欠かせません。自分がどんなに正当だと感じても、100%正しいとは限りません。相手の意見を取り入れたり、自分の意見を通してもらう期間を限定したり、時には、第三者を含めて話し合ったりすることも良いかもしれません。自分の意見を通させてもらった時には、結果に満足して「ほら、あなたは(君は)反対したけど、私の(僕の)言う通りにして正解だったでしょう。」と言わないこと。人生は、パートナーとの勝負ではないのです。海外生活では、パートナーの存在を大事に思い続けることが、決定的な亀裂を防ぐ第一歩だと感じます。