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ニュースレター(機関紙)

北京の街角から~中国医療現場からの報告~第4章 入院編
NL08030104
医療情報、中国


北京の街角から~中国医療現場からの報告~第4章 入院編


北京天衛診所顧問歯科医
中華人民共和国 歯科認定医 田中健一

 可能性は低いものの、中国の病院に入院することになった場合のことを、中国に赴任する方本人や派遣元企業は心に留めておかなければなりません。入院をコメントする際、病院の技術的レベルと保険の種類による医療費に関わることの2つの側面があります。ここでは医療費に焦点をあてます。

 多くの人は、はたして入院の治療費がいくらかかるのか理解していないのが実際です。私も外来の医療費については日常のことなので他科であっても把握はできていましたが、入院となると全容がわかりませんでした。今回は過去に私達が経験した、他の病院に入院した事例をもとに入院医療費について説明します。

 中国において病院のレベルは、設置されている医療機器や人員の技術により1、2、3級病院に分類されています(3級病院が最もレベルが高い、詳しくは医療制度にて説明予定)。今回は海外旅行傷害保険を使い、3級病院に入院する場合を紹介します。

 治療費に関しては退院時に詳細な明細が出されますが、その中には手術用手袋代1元などという項目も含まれ、明細が膨大な量になります。多くの人にとって、かえってわかりにくいのが実際です。ここでは簡略化してわかりやすくしてみました。物価が安いと思われる中国であってもこのように医療費は決して安くないことを理解してください。


 疾患
事例1
多発性脳硬塞
(9日間入院)
事例2
上腕骨骨折
(プレートを用いた固定術)
(11日間入院)
事例3
心筋梗塞
(stent埋入術)
(15日間入院)


診察費567098
医薬費2864.675918177.5
化学検査費434  
検査費9075963302
放射線費900150 
手術費 1553160
治療費 783849029.7
観察費47.14986.5
ベッド代97415201247.5
その他7729.28910.212518.8
合計(元)13912.628277.574619.9



*その他とは食事代、通訳費、付添い費用を意味します。
*事例1において治療費が空欄なのは、医師による治療がなく検査のみ受けて転院したケースであったためです。
* 1元=16円


<日本との相違>
 入院に際し食事はつかないため食事の手配が必要であること。
 病院が全てをしてはくれないので付添いが必要であること。

<私からのアドバイス>
 日本でも病院に入院する時には、敷金に相当する一部金(中国では押金と言います)を支払います。海外旅行傷害保険を有していても、入院時に提示ができなかったり、全ての病院がキャッシュレスとは限りません。突発的な事態に備えて常に現金を持っていることが必要です。

 この原稿を書くための調査で押金としていくら必要かと当地の医師に聞いたところ、押金は大病院では3000元が相場とのことでした。緊急の入院に備え3000元は用意しておくことを勧めたいところです(押金を払わないと入院はさせてもらえません)。

<展望>
 私が関係している北京の診療所では急患で診療所に直接来て診察した人のみ、転院先の病院における通訳や食事の手配、書類作成などの部分を対応していました。
 疾患を治療するという医療本体からみれば上記のような周辺領域に入れられる部分にも、日系診療所が現地における公共財という観点から、邦人の利便性の向上のために携わっていく時にきているのだと考えます。本稿を読んでいただけている方とは、こんなことを意見交換していきたいと思います。御意見いただければ幸いです。


○北京の裏道から~特別編 餃子中毒事件 続報

 3/26現在、中国の天洋食品製産の餃子に端を発した中国産食品の安全にまつわる騒動はひとまず静かになったように感じられます。そこで、今回は、中国サイドではこの問題についてどのように報道されたかについて、現地で知的階級が読むといわれる「暸望(Oriental Outlook)東方週刊 008/02/28号」で特集された餃子問題に対する報道記事について紹介しましょう。以下の通り報道を時系列に追って記事が展開されます。



1/30 日本の某テレビ局が千葉および兵庫県の3家族,10人が中国 河北省の天洋食品が製造した冷凍餃子を食べた後、嘔吐,腹痛などの中毒症状を起こしたと報じる。
日本の厚生労働省が駐日中国大使館に通知。

1/31AM 国家質検総局(中国)の調査委員会が天洋食品の現場調査を実施し、生産停止および生産物の回収を命じる。

1/31 中国外交部助理が高村外相と、原因の究明と再発防止について会談。

2/1 福田総理が政府間で対話を継続していく旨の談話を発表。

2/2 商務部(中国)のスポークスマンが真相究明のため、日本に調査団を派遣することを表明。

2/5 外交部(中国)のスポークスマンが問題解決のため、調査方法など日本政府の希望を提示してほしいとマスコミ各社に通知。

2/10 中国の調査団は日本から持ち帰った餃子からメタミドホスは検出されなかった結果を公表。

日本の調査団(内閣府、外務省、厚生労働省、農林水産省)は天洋食品で実地調査をし、工場は清潔で管理も行き届き、問題はなかった、と発表。

2/13 国家質検総局が餃子中毒事件は残留農薬がひき起した食品安全事件によるものではないこと、一部の不満分子が毒を注入したことによること、は未確認であると発表。

2/14 飯泉 徳島県知事が餃子袋にメタミドホスが付着しており販売店内で使用された殺虫剤に由来すること、しかし、餃子本体には検出されなかったと記者会見。

2/15 国務院(内閣),国家質検総局が国内外の報道機関を天洋食品の製産工場を公開。生産現場に外部のものを持込むのは不可能だった、とアメリカの記者がコメント。

 当初、中国では餃子問題は報道されていない(隠蔽されている)と日本のマスコミ報道を通じ私は思っていました。しかし、以下のように言われると「田中さん、街中で毒餃子の話をしない方が良いよ、殴られるかもしれないから(診療所の中国人看護師)」、「日本人にこの事件を説明しても聞いてくれないでしょ(中国人事務職)」、「日本で毒が混入したと、ここに書いてあるじゃない(中国人婦人科医師)」、などから判断するに、多くの中国人は餃子問題を知っていたのです。つまり、この事件に関する報道は中国においてもなされていたのです。しかし、報道の内容を調べるにつれ、日本の報道とは質的に異なっていることが分かってきたのです。

 つまり、日本での報道が「中国食品=危ない」に立脚しているように見受けられるのに対し、中国の報道は「毒の混入場所=中国ではない」、さらに「日本のメディア=執拗」というメッセージがあるとも感じました。今回、私が参照した暸望の記事中にある、工場内は清潔で管理が行き届いていたこと、中国では毒性物質は検出されていないが、日本国内で使われた殺虫剤からメタミドホスの検出を徳島県知事が公表したこと、共同通信社が、「日本政府に責任はない」が51.1%、「今後も中国食品を購入する割合」1/4近くと電話調査に基づき発表したこと、を何気なく読んでしまうと、中国に非があるようには思えなくなります。さらに、2/18に暸望の記者が天洋食品を訪問した時、20を超えるメディアが工場の玄関に待ち構えていた、そしてこの原稿の脱稿時にもメディアは立ち去っていなかった、を読むと、執拗に追っかける日本のマスコミを姿を連想してしまいます。



 また、情に訴える内容、たとえば河北省出入境検験検疫局長は毒餃子事件の調査班は正月も返上で集中調査をしたこと、天洋食品工場長による生産停止により工場労働者は仕事に復帰できていないこと、冷凍庫に保管しきれず、返品された餃子が常温の通路に山積みされていること、工場労働者による事件発生前は月給(1000元)がもらえ生活が安定していたし、勤務している工場に愛着があること、を読むと中国側がいじめられているような錯覚を覚えてしまいます。すると、きっと多くの日本人は違和感を持ったであろう、天洋食品工場長が記者会見で述べた「本事件では天洋食品が最大の被害者である。真相が究明された際には、賠償請求も否定しない」コメントも、中国側の文脈で読むとなぜか信憑性を持ってきてしまうのです。

 つまり、この事件を通して、日中間に横たわるマスコミの報道姿勢の相違が如実に表れたと思います。かくいう私も、この中国での記事を読むまでは、日本の報道を基に毒餃子に関する自分の考え(工場で入ったに決まっている、中国食品は危ない)が形作られてきました。しかし、報道そのものを比較すると、両国にそれぞれの言い分があり、事実はどこにあるのか?よりもまず始めに結論ありき、とも受け取れるのです。犯人探しだけでは本質はみえてこないでしょう、真実の究明もさることながら、マスコミの報道をどこかでモニタリングする必要もあると思いました。

 特に中国では当局の検閲等があり自由な報道(Freedom of Press)が制限されています。今回の事件を契機に、両国の報道には相違があるものとして、中国で報道されている内容を積極的に日本で報じるなど両国のメディア報道の相違を埋めていく努力がなされなければならないと感じました。

 結局、今回の事件は餃子というより、もっと深いところに問題が横たわっていそうです。マスコミそのものの報道が違うため異なった世論が形成されるのです、こんな単純なことに今、やっと気がつかされた思いをしています。





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