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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(61)「 海外赴任者のストレス~こんな気持ちはこころのSOS 」
NL08030102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~こんな気持ちはこころのSOS

シンガポール日本人会クリニック
小川原 純子

患者さんとの会話には、心身の不調を早期に発見する沢山のキーワードが隠されています。専門の医療者なら、キーワードをサッと感知して、「この方は体調不良かな・・・」と知ることが出来ます。いくつかのキーワードを知っておいていただくと、赴任者自身やご家族・友人・親戚に、会社の人事の方や同僚の方・上司の方が近くにいる人の心身不調を感じるアンテナが鋭くなるかもしれません。

・ ずっと考えてしまいます。
・ 自分の考えていることが伝わらないんですよね・・。
・ 決断するのに自信がない。
・ 決断に時間が掛かる。
・ せっかく、決断したのに不安になる。
・ やっても、やっても終わらない。
・ 寝ている間も仕事のことを考えている。
・ 朝早くから、仕事のことを考えている。
・ 休日でも、仕事のことを考えている。
・ 簡単な聞き落としをしてしまう。
・ 単純なミスをしてしまう。
・ 自分は前任者のように出来ない。
・ 期待通りに出来ない。
・ あっちもこっちも手をつけて、一つも満足に終わらない。
・ ひたすらその場の仕事に追われていて、大事な仕事に集中できない。
・ 上司の発言が気になる。
・ 上司に気を遣う。
・ お客さんより社内の人間関係が気になる。
・ 休日、寝ている方が楽だ。
・ お酒を飲んでも楽しくない。

「なんだ、こんな深刻なことを相談してくる人は、私の周りにはいないよ。」と思っている読者の方、みんながみんな深刻そうに相談してくれるわけではありませんよ。会話の中に、まばらにキーワードが出てくるので、発見が難しいのです。

Oさんは、2ヶ月前にシンガポールに赴任した方です。今回は日本出張で、久しぶりに以前の同僚と飲みに来ています。会話は盛り上がり、楽しんでいるOさんからこんな話がありました。「いやあ、日本はやっぱりいいね。シンガポールでは、まだ、飲みに行ってもこんなには楽しめないよ。」「そうかといって、単身赴任だからさあ、飲まないと眠れないしね。」「本当に、やること無いから休日でも出勤しちゃうよ。」
おやおや、Oさんは、かなり疲れが溜まっていますね。楽しい会話の中でも、Oさんの疲労を感知できた人は、気持ちの読み取り上手です。この後、会話をどう続けますか?
A:いやあ、日本だって大変だよ・・Oさんは期待されてるから、是非、頑張ってよ!
B:そりゃあ、もったいないね。折角の海外なんだし、ゴルフでもして楽しまなくちゃ!
みなさんもご存知の様に、『うつ病の人には、励ましは禁止。』『がんばれと言ってはいけない。』と、言われていますね。ちょっと、元気の無いOさんには、上記の会話はNGです。

海外営業部のM部長は、とても優秀な方ですが、部下の気持ちを汲むことが得意ではありません。部下を元気付けるつもりで、一生懸命話をするのですがいつも逆効果になってしまいます。海外赴任に出したばかりの部下Yさんが、「最近、熟睡できなくて、疲れが抜けないんですよ・・・」と相談にやって来ました。元気の無いYさんを鼓舞しようと、M部長は考えました。「Yくん、海外赴任に行ったら、病気の一つや二つは当たり前だよ。つらいのは、君だけじゃないんだよ。ここは、君自身の勉強と成長のためだと思って、頑張ってくれよ。」「俺初めて海外に出た頃は、もっと大変だったんだよ。」と、武勇伝が続きます。私が、Yさんだったら、M部長に相談したことを後悔しているでしょう。
では、ほんの少しだけ表現を変えてみましょう。
M部長「俺、初めて海外赴任に出た時は、大変だったなあ・・」
なんだか心への響きがちがうと思いませんか?言葉は魔法ですね。

会話の中に隠れたこころのSOSを感知できるようになるには、練習が必要です。練習とは、「相手との会話・言葉を大切にすること」です。特に、ご自身が部下を持つようになったり、勤務者の管理や組織を管理するようになったら、是非、考えてみてください。