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ニュースレター(機関紙)

ジャカルタ発達・子育て相談 報告記2
NL07110105
小児科、発達

ジャカルタ発達・子育て相談 報告記2

編集部より:当基金では毎年独自の専門科目海外健康相談を実施しております。2007年度はクアラルンプール、ジャカルタ、バンコクの3都市での開催を行い、今後はフランクフルト、デュッセルドルフ、マニラ、シンガポールで実施の予定です。
ジャカルタにおいては、昨年までの小児科専門医の他に、新たに現地の事情に詳しい社会福祉士兼精神保健福祉士がコーディネイターとして加わりました。今回は昨年に引き続き2回目の相談を実施した広瀬宏之先生のレポートをご紹介します。




横須賀市療育相談センター 開設準備室 室長
広瀬 宏之 

 二回目の訪問というのに、スカルノ・ハッタ国際空港から市内への風景はあまり記憶にありませんでした。一度通った風景は大概記憶しているという変な習性があるのですが、前回は思った以上に緊張していて、記憶が無かったものとみえます。

 今回のジャカルタでの相談会は平成19年9月21日から4日間行われました。初日は健診に立ち会い、育児や発達に関する個別の相談に対応しました。大部分のお母様が個別相談も希望され、一時は行列ができて慌てるくらいでした。
 午後は、ジャカルタ日本人学校において「日本における特別支援教育の最新情報:発達障害者支援法の成立を受けて」というテーマでお話ししました。本来であれば半日程度を必要とする内容を小一時間でお話ししたため、十分に意図が伝わったか心配ではありました。その後、幼稚部で恒例の事例検討会も行われました。
 発達・子育て相談は9月22日から3日間、38人のお子さん及びそのご両親と面談をしました。今回は前ジャカルタ・カウンセリング代表の柴田真紀さんにも同席頂き、現地で利用可能な人的・物的リソースについてのアドバイスを受けました。
 相談で多かったのは、発達・行動に関して26件、身体疾患について14件、育児について10件でした。小生は半年前に続いて二回目でもあり、継続で伺った方々も12人いました。発達や子育てに関しては、できるだけ同じ視点で定期的に相談をするのが望ましいと考えられます。日本での発達外来でも最低でも半年に一度くらいの頻度で推移を観察しますので、これくらいの間隔が望ましいと考えられます。

 平成17年4月から発達障害者支援法が施行されました。その第二条では「発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥/多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」となっています。一方、平成18年6月には学校教育法等の一部が改正され、平成19年4月から特別支援教育が実施されています。
 これまでの特殊教育では、障害の種類や程度に対応して教育の場を整備し、そこできめ細かな教育を効果的に行う、という考え方でした。盲・聾・養護学校(993校、約56,000人)、特殊学級(小・中学校の約半数に設置、約105,000人)、通級指導(約41,000人、以上、平成14年の統計)が設定され、約2%がその対象となっていました。
 しかし、対象児童数は年々増加し、発達障害の概念の変化や普及とともに、質的にも多種多様になってきました。その結果、従来の体制では対応が難しくなり、法規なども整備されて新しい特別支援教育が整えられるに至りました。その理念は「障害の種類に応じて支援を分けて考えることなく、個々の教育的ニーズに応じた教育的支援を行う」ということになります。これまでは教育での区分けに障害のある子供たちを当てはめていたのですが、これからは子供の特性に教育的な支援を当てはめることになります。既製服からオーダーメイドになるようなものだと言ってもいいでしょう。
 実際にはまだ日が浅く、十分機能するためにはもう少し時間がかかると思われます。10%内外と考えられる個別指導を必要としている子供達を、普通学級を中心にして教育していくために、現場での体制をしっかり確立していってほしいと考えます。

 今回の相談では、自閉症スペクトラム障害と思われる方が5人、注意欠陥/多動性障害と思われる方が3人、精神遅滞発達と思われる方が2人、その他の診断名がつく方と思われる方が10人いらっしゃいました(文末の統計表を御参照ください)。前回と比べて、受診者の中で発達障害の比率が増えている印象でした。発達障害、特に、自閉症スペクトラム障害のお子さんについては、支援体制が確立していない場合、診断名の告知には慎重にならざるをえません。もちろん、診断名が重要なのではなく、特徴と対応のコツをお伝えすることで、よりよい生活の工夫をしていってもらうことが何より大事なのですが、診断名が一人歩きする危険性もあります。また、家庭だけでの支援では限界があります。柴田さんもお書きになっているように(*)課題は山積していますが、子供達のために、学校も含めた地域全体で支援ができる体制を整えたいと思います。

 小生は発達障害を専門としています。しかし、ジャカルタを訪れるまで、海外在留邦人子弟へのサポートは盲点でした。外務省の統計によると、平成18年10月現在、全世界に在留している日本人の数は106万3695人、前年比は5%で、年々増加しています。小・中学校の統計だけでも5万8千人の子どもたちが海外で暮らしており、乳幼児まで入れると10万人前後の子どもが海外で生活していると考えられます。一方、発達障害に関して、統計は様々ですが、少なくとも人口の数%存在することは確実であり、海外在留といえども無視できないことは確かです。また、必ずしも大企業の社員だけが海外に赴任する時代でもありません。
 在留邦人のうち成人については、国レベルでも海外巡回などで対応をしていますし、子供も、身体疾患の場合はある程度の対応が出来るかもしれません。しかし、発達障害や心理的側面に関しては、海外でのサポートはこれからです。必ず、近い将来に国レベルでの取り組みが必要になってくるでしょう。一方、JOMFはあくまで会員企業の出資によって成立している組織です。しかし、国の対応が軌道に乗るまで、JOMFが海外の子どもの発達や心理的な支援の先鞭をつけることには大きな意味があると考えます。そして、微力ながらそれをお手伝いできるとしたら、これに勝る喜びはありません。

 今回の相談会は、ジャカルタ・カウンセリングの徳丸さんと曽田さんのご尽力で成立しました。お二人にこころから御礼申し上げます。最後になりますが、ジャカルタに暮らしている全ての親子の方々がよりよい生活を送れるようお祈りして、御報告とさせて頂きます。ありがとうございました。




(*:編集部注 柴田氏による報告は来月掲載予定です。)

:編集部より:
先月まで「子育てのこころ」シリーズを執筆頂いた広瀬先生による、小児の健康相談(本年9月ジャカルタで開催)のレポートを掲載致します。
読後の感想、意見、質問などはwebmaster@jomf.or.jp 宛にメールでお送りください。
●「子育てのこころ」索引コーナー
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#q
●「小児医療の現場から」索引コーナー(小児相談担当医によるリレーエッセイ)
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#o
●「2006年度 健康相談レポート」索引コーナー(前回の ジャカルタ発達・子育て相談 報告記 を掲載)
http://www.jomf.or.jp/jyouhou/jigyou_iryou2/jigyou_iryou2_4.html#r