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ニュースレター(機関紙)

バンコク育児相談報告
NL07060105
小児、健康相談

NO.07060105

バンコク育児相談報告



札幌医科大学保健医療学部
教授 波川京子
            
1.育児相談に来られた方々
 2006年12月15~17日、バンコクにて、育児相談を実施しました。3日間の相談者は2ヵ月~6歳までの62人でした。内訳は男児26人、女児36人、出生順位は第1子33人、第2子以上29人、滞在期間が6ヵ月未満13人、6ヵ月~1年未満22人、1年以上26人、不明1人でした。治療中の疾患は呼吸器系、耳鼻科、眼科でした。身体測定をした45人のカウプ指数は、やせ気味(13~15未満)は6人、太り気味(19~22未満)は3人、標準(15~19未満)36人でした。

2.相談内容
 相談内容は年齢とともに変化し、アレルギーに関する相談は2ヵ月~3歳、発育は6ヵ月~5歳、食事に関することは8ヵ月~3歳、呼吸器系は8ヵ月~6歳、育児一般は9ヵ月~5歳、歯科11ヵ月~3歳、眼・視力に関することは1~3歳、発達面1歳~6歳、言葉は1歳3ヵ月~5歳、発育と食事量の両方は1歳6ヵ月~3歳、予防接種に関することは1歳8ヵ月~3歳でした。



 相談内容を図1に示します。発育の相談が約半数を占め、年齢に比べて大きい、小さい、関節や骨格に関することなどでした。  発達面では疳が強い、反抗的、多動、こだわりが強い、ウソへの対応、弟妹とうまく関係を作れないなどの相談でした。
 眼・視力に関することでは斜視、視力、近視、眼鏡使用、色覚、テレビの見せ方などでした。小児眼科での治療や視力検査、眼鏡処方に関する心配が生活の場の選択も含めて出されていました。
 言葉は発語が遅い、発音が不明瞭、語彙が少ない、母国語としての日本語の修得などが出されていました。スクールに2歳前後から入園する子ども達が多い中で、家庭内での言語、スクールでの言語など、日本とは違った言葉に関する相談でした。
 呼吸器系の相談は、喘息や気管支炎に関することでした。治療中の疾患は呼吸器系が大半であったことから、喘息や気管支炎を起こしやすい子ども達の外出時の対応の難しさが考えさせられました。食物アレルギーによる食事制限をしている子ども達のカウプ指数は標準範囲内でした。
  食事に関することは食事量、食物アレルギー、食べさせ方、食材の安全性などでした。発育と食事量の両方を相談した子ども達のカウプ指数は標準か、やせ気味でした。皮膚に関することは発疹や湿疹・汗疹、乾燥肌、蒙古斑、血腫などでした。 歯科に関する相談は乳歯のはえ方、点検みがきの方法、フッ素塗布、歯みがき方法、う歯と関係する食物、咀嚼力、おやつのことなどでした。
 育児一般については身体の洗い方や皮膚の手入れの仕方、トイレットトレーニング、耳あかの取り方などでした。育児の仕方は様々あり、必ずしも育児書と同じにはならないことを納得されていました。子どもの成長にともなって始まる指しゃぶりなどの癖や、反抗期の子どもへの接し方、言葉の獲得や発音、対人関係、運動量など家庭内から家庭外の行動範囲の広がりによる相談内容に変化していました。育児についてゆっくり話しをする過程で育児不安や自信のなさ、心配ごとを母親自身が解消されていたようです。

3.予防接種
 予防接種に関する相談の多くは、日本とタイでの接種方法や回数の違いによる相談が出されていました。乳幼児期の予防接種スケジュールの途中で赴任してきたご家族は、信頼できる病院、小児科を探し出すまでは落ち着かない状況でした。
 予防接種の実施率はBCGとDPTが94.4%、ポリオは96.3%を超え、麻疹87.0%、風疹は83.3%、日本脳炎64.8%、おたふく風邪は51.8%、水痘は46.3%、狂犬病11.1%、A型肝炎16.7%、B型肝炎70.4%、B型インフルエンザ18.5%でした(図2)。



 年齢別では、BCGは年齢とともに実施率が上がり、DPT、ポリオ、麻疹、風疹、おたふく風邪、B型肝炎、B型インフルエンザは1歳以降が高くなっています(図3)。3~6歳で実施率が高くなることは、年齢が高くなれば対象となる予防接種も増えること、通園が開始されることなどが考えられます。



 滞在期間別の実施率ではBCG、DPT、ポリオは滞在期間6ヵ月未満児の実施率20%前後、6ヵ月から1年未満で30%台、1年以上が40%であり、滞在期間と児の加齢に比例して実施率は高くなっていました。滞在6ヵ月未満のおたふく風邪や水痘は10%に満たない状況でした(図4)。これは信頼できる病院や小児科に出会うまでに時間を要している可能性が考えられます。



 同様に滞在期間が長くなれば、子ども達の年齢も高くなり、滞在期間と予防接種の実施率は並行して増えますが、A型肝炎だけは6ヵ月~1年未満での実施率が高くなっていました。実施率が滞在期間6ヵ月未満と1年以上の比較で3倍以上に増加した予防接種は、日本脳炎、おたふく風邪、水痘、狂犬病、A型肝炎、B型インフルエンザでした。

4.育児相談を担当して
 乳幼児健診を希望した方は1~3歳で、半数は第1子でした。日本でほとんどの乳幼児が受診している乳幼児健診への期待は、タイに居住していても大きいと考えられます。子ども達の身長・体重が乳幼児発育曲線のどこに位置するか、月齢や年齢に応じた発達をしているか、遅れてはいないかなどへの関心の高さがうかがわれました。育児相談に期待されていることは発達・発育の確認、自分の育児方法が間違っていないかを確かめているように感じられました。日本と同様に、相談で不安が取り除かれ、育児に自信を持って帰られるときの笑顔は印象的でした。
 相談者の大半が持参される母子手帳は、日本では記載内容の改訂は国からの通達で、市町村が一斉に改訂しています。今回、タイで配布されている母子手帳に日本での改訂が反映されていない箇所がありました。持参資料で対応しましたが母子手帳の改訂情報を海外に伝える方法を考えさせられました。
 また、相談者は日本各地から赴任されてきているため、赴任前、一時帰国で予防接種のことなどが相談できるトラベルクリニックの整備が急がれることを痛感する機会にもなりました。
 育児相談から5ヵ月経ちましたが、 新たな心配事や不安が生じたお母さん達から、メールを介した育児相談が 寄せられています。母親の悩みは続きます。育児相談も続いています。