• ホーム
  • 基金について
  • 海外医療情報
  • お勧めリンク集
  • よくある質問

ホーム > 海外医療情報 > ニュースレター(機関紙)

ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(52)「 海外赴任者のストレス~心のギャップ 」
NL07040102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~心のギャップ

シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

外来で、患者さんから色々な疲労・不安をうかがっていると、「心のギャップ」という一つのフレーズに行き当たりました。「心のギャップ」とは、自分の本音と、実際に周囲に見せている表情や発言・態度との差異を表現したものです。みなさんも、絶対に経験したことがある「心のギャップ」。日頃の生活の中で、こんな経験はありませんか?

大事なお客さんが、シンガポールについて持論を展開し、熱弁をふるっている。自分としては、心から同意できないけれど、表面上、話を合わせていたら、結局、1時間以上、お付き合いするはめに・・・。なんだか。とっても疲れてしまったなあ。
初対面の人と、こどもを遊ばせることになった。子ども達は普通に仲良くしているが、母親同士、何となく話題を探し、必要以上に笑顔で会話してしまう。家に帰ると、楽しかったのだけど、なんだか疲れている自分がいる。
お付き合いで誘われた外出。特に、お断りする理由も見つからず・・・周りの雰囲気とすると、自分は参加したほうが、何となくまとまりそうだし・・・ということで、参加することになったが、当日、家を出る直前まで、どうしても「面倒臭い」「なんだか億劫」な気分が抜けない。

「分かる。分かる。こんな気持ち!」と、非常に共感できる方は、要注意。自分の表情や行動と、自分の本音に大きなギャップが存在したまま生活しているのかもしれません。

納得していないのに、相槌を打っている。
イライラしているのに、平静に振舞っている。
怒られる理由が納得いかないのに、長時間、叱責される。
楽しくないのに、にこやかにしている。
この様な、感情と実際の自分の行動・表情の解離は、当事者の心のエネルギーを著しく消耗させます。
そうは言っても、お客様には、話を合わせることが当然だし、あんまり、周りの雰囲気を壊してまで、身勝手に振舞うのも大人気ないですよね。相手に気分よく過ごしてもらいながら、自分の気持ちを押し殺しすぎない・・・なんてことが、出来るのですから、人間は本当に高等な生き物です。

ですが、この「心のギャップ」がどんどん広がって、自分のペースを見失った時に、心のバランスが崩れます。一番重症なのは、自分の心にギャップが出来ていると気付かないまま、徐々に開きが進行している時です。「ここは、こう言った方が、相手が喜びそう。」「ここは、こんなリアクションの方が、話が弾みそう。」こんなことを、無意識で連続してやっていると、心のエネルギーが著しく減って、ダウンしてしまうのです。しかも、周りの人が、自分の苦労を全く理解していなかったり、あまりにも当然と思っていたりすると、疲労感が倍増します。

ところが、自分のストレスの対象が、「本来、ストレスの対象となるべきでない人」に向けられている場合、人はどうするのでしょうか?
母親にとって、子供がストレス
夫にとって、家族がストレス
自分を抜擢してくれた上司の言動がストレス
自分と親しいはずの友人の言動がストレス
今まで、良好な関係であった「夫の親」「妻の親」がストレス
ありますよね・・・こんなこと。あなたなら、どうしますか?私だったら、「どうにもならないから、表面上上手くやってゆく。」という選択をするでしょう。日本の教育・文化の背景もあり、日本人は、「仕方がないから、受け入れる」という姿勢を好む傾向が、男女共に強くあります。でもそうやって、自分の生の感情を飲み込むと、心が一杯になって「重く」なってしまいます。

では、どう対応すればよいのでしょうか?はっきりと、自分の感情を言葉にすることが、一番効果的です。その場で、当事者に向かって口にする必要はありません。後で、同僚や友人、家族に伝える形で結構です。一度は、自分の感情を頭の中から、外に取り出してあげましょう。口外することが憚られる内容なら、例えば、車の中の、独り言でも結構です。「全く、訳が分からないなあ。」「一体、どういう思考回路をしているのだろう!」「常識がないんじゃない?」「アー、疲れた。いい加減にして!」など等、本当に感じたストレートな気持ちを言葉にして、口にすることが大切です。その他にも、心のギャップを広げすぎないいくつかの方法があります。これは、次回お伝えしましょう。