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ニュースレター(機関紙)

子育てのこころ(6)夜泣き
NL07010104
小児科

子育てのこころ(6)夜泣き
国立成育医療センター こころの診療部 発達心理科
広瀬 宏之

 前回は赤ちゃんと母親の関係発達についてお話をしました。子どもの発達には色々な視点があり、テーマは尽きません。このあとの連載では言葉や記憶、認知の発達などについてお話をする予定ですが、今回は、赤ちゃんの具体的な行動の一つとして夜泣きを取り上げて、その意味と対応を考えるとともに、夜泣きについての最新の研究をご紹介します。

●夜泣きとは?
 子育てには本当に体力が必要です。昼間に元気な子どもの相手をしてくたびれはて、やれ安心と眠りについたのも束の間、夜中に子どもの泣き声で起こされる。眠い目をこすりつつ、手をかえ品をかえあやしてみたけど泣き止まない、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
 子どもが夜に泣くのは生後2ヶ月から2歳位の間によく見られます。その中でも本当の意味での夜泣きは、6ヶ月から1歳、特に9ヶ月前後が一番多いようです。
 正確に言うと、夜中に赤ちゃんが泣くことが全て夜泣きなのではありません。ここでは、「原因がないのに、どうしても夜に泣き止まないこと」を夜泣きと呼びます。濡れているおむつを替えたり、ミルクや母乳を飲ませたりすることで泣きやむ場合は、原因がはっきりしているので、夜泣きとは呼びません。暑い、寒い、ふとんが重い、うるさい、熱があるなどの理由で泣いている場合も、同様に夜泣きとは呼びません。
 一方、3ヶ月前後の赤ちゃんで、午後から夕方にかけてよく泣くことを「コリック」と言います。日本よりも欧米でよく言われるようです。原因がはっきりしないという意味では共通しますが、月齢が早いこと、泣く時間帯が違うことで、夜泣きとは区別して考えたいと思います。

●対応は?
 まずは考えられる原因を取り除くことです。案外と気がつかないことですが、温度は重要な要因です。暑すぎたり寒すぎたりすると、赤ちゃんは大人以上に敏感に反応して機嫌が悪くなり、泣いてしまいます。もちろん、高い熱がある、顔色が悪い、嘔吐や下痢をする、咳や鼻水がひどい、息が苦しそうなど、いつもと違う状態の時は、医学的にも原因を探す必要があります。
 さて、最初の定義に戻ると、夜泣きは原因が思い当たらずにどうしても泣き止まないことを云います。従って、本当の夜泣きには実のところ決定打はなく、その子に合わせたやり方を工夫して見つけていくしかありません。やさしく抱っこして、背中をトントンし、子守唄を歌ってあげる、静かな音楽をかけてあげるなど、子どもの気持ちが穏やかになって眠たくなるようにします。
 それでも泣き止まない場合は気分転換が必要かもしれません。場所を変えて、庭やベランダに出たり、外の空気に当たったりすることで効果があがることがあります。場合によっては、夜中のミニドライブにでるのも良いかもしれません。親御さんがイライラすると、それが子どもにすぐに伝わり、余計に泣き止まないという悪循環になりますから、「一生続く訳ではないからしばらくの辛抱だな」という悟りも必要かもしれません。

●夜泣きは精神的なもの?
 夜泣きの原因の一つとして、精神的な要素が取り上げられるのは、いかにも日本的なようにも思います。欧米と違い、日本の狭い家屋や家族制度がその背景にあるのでしょう。赤ちゃんが夜泣くと、狭い家では隣の部屋に泣き声が聞こえ、パパがイライラし、元々寝不足気味でイライラしているママと衝突します。泣き声が響き、近所迷惑になると小言をいわれ、ますますイライラがつのる。こうして、家族や近所の人間関係がぎくしゃくすることがあるかもしれません。
 また、子どもの昼間の経験が原因となっているという説もあります。外に出て遊ぶ機会が少なくて満足できなかったとか、逆に昼間に受けた刺激が強烈で興奮してしまったなどです。確かに、夜泣きが多く見られる9ヶ月前後の時期は、身体面や精神面での発達が著しく、新しい刺激をどんどん受け入れていきます。その中には不愉快な経験もあるかもしれません。その子なりの心配事も出てきます。勿論、昼間の刺激やストレスによって、赤ちゃんが夜泣きをしているかどうかは本人しか分かりません。しかし、こうした要素も多少は考えておいてよいと思われます。

●最近の研究より
 最近、日本人の夜泣きについての大規模な報告が、国立精神・神経センターの福水先生たちからありました。それによると、厳密な意味での夜泣きは、全体の6割前後の子どもに認めるようです。また、夜泣きがあるお子さんは親御さんと一緒に寝ている割合が多く、歯ぎしりや慢性湿疹が多いことも明らかになっています。精神的原因から夜泣きになるという見解に示唆を与える結果だと思います。
 更に大切なことは、就寝時間が一定でないお子さんでは夜泣きが多く、睡眠時間が10時間前後のお子さんに最も夜泣きが少ないという結果です。また、毎朝きちんと起きることの重要性も言われています。現在の家庭環境からは難しい面もありますが、一定の睡眠リズムを子どもたちに確保してあげることは、夜泣きの防止だけにとどまらず、心身両面の成長に重要だと考えられます。


:編集部より:
「子育てのこころ」は昨年8月より1年の予定で連載を開始しました。広瀬先生は、当基金の会員用相談サービスである小児掲示板相談と電話相談を長年にわたって担当していただいています。
先生からは読後の感想、意見、質問などをお受けしたいとのご希望です。どうぞwebmaster@jomf.or.jp 宛にメールでお送りください。
●「子育てのこころ」索引コーナー
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●「小児医療の現場から」索引コーナー(小児相談担当医によるリレーエッセイ)
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