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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(49)「 海外赴任者のストレス~シンガポールこども発達相談会 」
NL07010102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~シンガポールこども発達相談会

シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

2007年1月18日から20日の3日間、基金の全面的ご協力の下、「第4回こども発達相談会」がここシンガポールで開催されました。今回は、西多摩療育支援センター 施設長の吉野邦夫先生をお迎えして、発達障害児を抱える親の会の皆さん・日本人小学校・中学校の先生方など、グループ別相談会・個人相談を行いました。吉野先生は、本当に精力的に活動してくださり、この相談会に参加した多くの方が、先生の厳しい指導にショックを受けながらも、今後の療育に方向性や展望を見出したことと思います。
こども相談会を1回開催するにあたり、その人選から依頼、日程調整、金銭面の負担など、基金には大変なご負担をお掛けしたことと思いますが、本当に、素晴らしい相談会をさせていただけたことを、感謝しております。

<今回の成功の理由>
シンガポールには、日本人医師が10名以上滞在し、医療の提供にあたっています。その中には、私のように心療内科医もいれば、他院には、小児科の医師もいます。言語聴覚士・心理療法士なども、活動しており、海外拠点としては、充実した邦人医療環境と言えるでしょう。この様な状況を踏まえて、「シンガポールにはこども発達相談は不要である。」というご意見を伺うこともあります。ところが、今回の相談会は本当に大成功でした。

その理由は、「現地邦人のニーズと提供されたサービスが絶妙に合致した」ということではないでしょうか。現地医療だけでは、発達障害の診断や療育の方針が混乱していたことを実感させられました。

吉野先生に指摘していただいたことで最も印象に残ったのは、「『何となく周囲に溶け込んでいる』という状況で、満足してしまうことは、医療と教育の敗北である。」という言葉です。「この子の人格をどう育ててゆくか、考えなさい。」ともご指導頂きました。

海外のメンタルヘルスも全く同じことが目標です。「会社の辞令で海外に赴任になった方々が、赴任してきて良かったと実感できるような健康・仕事の充実・生活の充実を支えること」大人にとって、長い人生の中で、シンガポールの数年間は、後から考えれば一時でしかありません。ところが、人生の形成期にある子ども達にとっては、この数年間は、非常に大切な時期なのです。ですから、養育者の親がうつ病や不安神経症になった場合に、十分なサポートを受けられるようにしたいと考えてきました。

軽度~重度の発達障害を持つ子ども達にとって、「シンガポールで過ごす数年間の間に、人生の中の何を身に付けるべきか?」は非常に大切な問題です。その方向性やプランニングがきちんと出来ていなかったことを、今回は、はっきりと認識させられました。

<今回の成功の次に・・・>
高額な費用を要するこども発達相談会ですが、今回のように、そのコスト以上の有用性を発揮すれば、企業の方々にもご満足頂けるのではないかと考えます。家族に、健康上・教育上・子育て上、混乱や心配を抱える帯同者がいた場合、赴任者自身の仕事のパフォーマンスも低下します。妻や子供が、自信と安心を持って生活していられる保障は、仕事の質を向上させるのに大変重要です。だから、是非、こども発達相談会を基金の活動の中で、継続していただきたいと、シンガポールの現場では望みます。
但し、漫然とやっていては、絶対にサービスの質は向上しません。

(1) 現地のニーズを的確に分析する目を、現場の医療者も基金の担当者も磨くこと。
(2) サービスを受ける「予習」を現地がきちんとすること。基金の担当者の方々は、常に、日本でも最高レベルの専門医師を海外派遣しようと、努力してくださっています。最高級レベルの指導が、浸透するだけの患者さん教育や現場教育を重ねてゆくことが、相談会の質を左右しました。
(3) 開催に際しては、そのターゲットと目的を明確に絞ること。
(4) シンガポールのような環境では、1年に1度、指導していただいたことを基に、親・教師・医療者が勉強を重ねる努力をすること。

今までは、講演会に何名応募があり、個人相談で何人相談を受けられたか等、大衆・数で勝負するような観念が私達にありましたが、シンガポールで望まれる医療は、東京ほどではありませんが、もう少し専門化されたものになってきています。来年、更に良いこども発達相談会にするために、今日から努力をしていかなければならないでしょう。