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ニュースレター(機関紙)

続・話題の感染症4「デング熱とデング出血熱
NL06110103
感染症、デング

続・話題の感染症4「デング熱とデング出血熱」

(財)海外邦人医療基金(顧問)
長崎大学熱帯医学研究所(客員教授)
おおり医院(院長)
大利 昌久


中国衛生部の資料では、2006年中国南部を中心にデング熱の流行があり、7月4人、8月145人、9月502人が確認された。特に、広東省では、陽江・仙山・珠海・湖洲・揚陽などで多発し、9月だけでも492人発生した。

原因としては、今期、梅雨が長く、降雨量も多く、一部、洪水も見られ、高温が長く続いたことでデング熱の媒介蚊、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカの繁殖に有利な条件が整ったものと思われる。もともと、このシマカ属の蚊は、広東省に広く発生している、土着の蚊だったことも大きい要因と言える。



デング熱は熱帯・亜熱帯地方から、世界の100カ国で流行。特に東南アジア・オセアニア・南米を中心に流行中の再興感染症である。
1779年、1780年に爆発的に流行し、このあと200年間、流行と終息を繰り返していたが、最近、再び大流行している。
中国でも例年、海南・広西・広東・台湾などで見られ、今年は、インドネシア・シンガポールでも多数の感染者を出している。   

WHOの資料では、去年約100万人が発病し、約2万人が死亡。
中でも、東南アジアでは、デング出血熱による、死亡率が高い。

デング熱は突然の高熱で始まる。悪寒があり、眼の痛み、(眼窩痛)、顔面紅湖、頭痛、結膜充血などが見られる。この症状に続いて、身の置き場がない、筋肉痛、関節痛が現われる。ひどい背中の痛みのため、これをカバーしようとして背筋をつっぱった歩き方になることから、「ダンディー病」と言われたり、骨まで痛いという感じから「骨折病」などという異名がつけられている。発症3~4日後に、胸、体幹に発疹が現われ、四肢、顔面へも広がり、約1週間位で略治する。
高熱は5-7日経て、一旦解熱したあと、ぶり返すことが多い。(2峰性)
蚊に刺されて、3ー14日間の潜伏期間を経て、発病する。
幸い、中国在住の邦人の発症例は少ない。



デング出血熱は他のウイルス性出血熱と同発に発熱の後、出血を伴う。子供では極めて急激に症状が進み、皮下出血の後、ひどくなると体内の出血もあらわれ、失血状態で血圧が下がり、脈拍が弱くなり、四肢が冷たくなり、ショック症状に陥る。この症状は、「デングショック症候群」と言われ、死亡率は40~50%と高い。死人の解剖では、胸水・腹水などが見られる。

デング出血熱で、亡くなった日本人は今のところいない。
もともと、デング熱はほぼ確実に治る病気だが、デング出血熱は2度目に感染した時に、激しい出血を伴った「殺人病」に変身する。

なぜ、ある人はデング熱で終わり、ある人はデング出血熱にかかるのかについてはわかっていない。今のところ、デング出血熱の病態はウイルスの性質の変化と生体の免疫状態によると説明されている。
つまり、初めてかかったデング熱から回復すると、デング熱ウイルスに対する免疫が出来、免疫細胞が形成される。次に感染した時に、この免疫細胞が作動するが、同じデングウイルスでも、初めの感染では見せなかった強い攻撃力を示すために、人体が対応しきれないで、死を招くという不思議なメカニズムと考えられている。
デングウイルスには四つの血清型(DEN1-4型)があり、人は生涯、四つのタイプのデング熱にかかる危険性がある。



過去を振り返ると、1970年代に東南アジアを中心にデング熱の流行があり、1980年代に台湾と中国本土で、約35年ぶりの大流行をみた。 その時、デング出血熱の流行で多くの人が、犠牲になった。
アフリカ諸国にも飛び火し、1980年、筆者が駐在していたアフリカ、ケニアでも発病が見られ、アフリカ東海岸で「初めてのデング熱発生」と東京大学医科学研究所の関係者に警告を発したことがある。
ケニア・セイシェルズなどアフリカ東海岸に発生したデング熱は、その後モザンビーク・ジプチ・ソマリア・サウジアラビアなどにも飛び火したが、幸いにも、大流行までには至らなかった。



デング熱に対する予防ワクチンは、未だ実用化されていない。
予防の基本は媒介する蚊を、国をあげて駆除することが大切。
中国では、今年広東省を中心にかなりの努力が見られ、積極的に駆除したこともあり、デング熱の流行は終わりつつある。

シマカ属の蚊は、一日のうち、午前9時から11時、午後3時から5時の間に活発に人を刺咬する。
公園、芝生、レストランなどで刺されることが多いので防虫スプレー、防虫クリームなどを用意すると良い。
日頃から、庭の芝生、ベランダなどにある、ペットボトル、古タイヤ空き缶などの蚊の発生源を除くことが必要である。

なお、デング熱、デング出血熱のことを、中国名で「登革熱」、「登革出血熱」と言う。