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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(46)「 海外赴任者のストレス~シンガポールで暮らす子供たち2 」
NL06100102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~シンガポールで暮らす子供たち2

シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

シンガポールで暮らす子ども達の、日常生活やその環境をお伝えする第2回目。今、シンガポールは、とても暑い季節である。秋分以降、気温が高めで、雨が少なく、体調的には「夏ばてがずっと続いている状態」に近い。子ども達に、風邪が流行する季節でもある。現在、シンガポールは「Haze」というインドネシアの野焼き・森林火災の煙で、より一層蒸し暑く、呼吸器の違和感や頭痛を訴える人が増えている。先日、小学校バスから子ども達が飛び降りてきた。「急げ、急げ。今日は、PSI(シンガポール大気汚染指数)が100を越えたから、外にいてはいけないぞ~!」と大急ぎで家に駆け込んでいった。
これが、最近のシンガポールである。さて、本題へ。今回は、当地の幼児教育と幼児を抱えるお母さんの人間関係について。

<シンガポールの幼児教育>
シンガポールで生活する日本人の幼児に対しては、幼児教育の選択肢が多いと思う。日本人幼稚園・日本人の先生を多く抱える日系幼稚園・インターナショナルスクール・地元の保育園・幼稚園に加え、様々なお稽古教室が乱立する。どの園でもバス通学が主流である。

1歳半からバスに乗って通園する子もいるのだから、子ども達もよく頑張っている。お母さんは、近所のバス集合場所まで連れてゆけばよいので、身体的負担は随分軽い。
一方、自分で送り迎えをする場合には、子どもを通して親や先生との交流が深まり、子育ての共有や休日の遊びを約束することも可能である。

子どもを預かる時間も、料金も、教育スタイルも実に様々。一日3.5時間保育で、月に$150というところもあれば、1日9時間保育で月$1500というところもある。学習に力を入れていて、年中さんから書き方の宿題(英語や中国語)が出るところもある。

情報を上手に集めて、子どもに合った、親が満足できる幼稚園を探したいものであるが、実際、滞在の短い海外赴任者には難しく、会社職員家族の口コミや近所の評判で、決定しているようである。このため、評判の良いいくつかの幼稚園に、日本人の子ども達が多く集まっているのが現状である。

お稽古教室は、音楽・体操・絵画・英会話など、色々なジャンルで教室があるし、希望をすれば、個人レッスン・グループレッスンを自宅で受けることも、難しくない。
地元の幼児教育熱が高いことにも後押しされていると思うが、この暑い気候も一因かもしれない。小さい子ども達には、長時間の外遊びは体力的に少々応える環境である。害虫の問題、安全面などから、エアコンの効いた屋内の広いスペースで遊ばせられるところを、親は探してゆく。必然的に、習い事教室になってしまう。
年長さんくらいになると、コンドミニアムごとに、水泳の先生の出張指導をお願いして、水泳教室を行うところもある。日本では、有り得ない発想であろう。親の行動力や情報収集能力が高ければ、意外にも活動の選択肢が多いことが、当地の特徴である。

<ご近所との葛藤:子供と母親>
お母さんの情報収集力・行動力が、色々な活動範囲を広げてゆく機会を増やすので、元来、お母さんが、集団行動が不得手な場合には、情報を入手しにくく、孤立しがちである。近所で、小グループを作って、習い事を始めるときも、声が掛からず、疎外感を感じてしまう人もある様だ。「お母さんが、グループ行動を避けているのなら、誘われなくても、気にしなければよいのでは?」とも思うが、当の親は『自分の子供』が誘ってもらえないことに敏感に反応してしまう。

2~3歳は子供同士で遊んでいても、おもちゃの取り合い・思い通りにゆかない時の大泣きなど、親が関わって子どもの混乱を収拾することが多い。こんな時、自己評価の低い母親の場合、周囲の人間関係や言葉遣い、「自分の子供がどう扱われているか?」「自分の子供が、周囲の子に迷惑を掛けすぎていないか?」など、余分な事ばかり気になってしまう。

少々元気が良くて、聞き分けが出来ない年齢の幼児を持つと、夕方にコンドミニアムの公園に連れてゆくことが、負担になって仕方がないという、お母さんがいた。頻繁に問題を起こしてしまう子供を、集団の中に連れてゆくことが精神的負担になってしまうのである。「公園に連れて行くと、自分の子供から目が離せない。いつ、問題を起こすのか、気になって仕方ない。」「自分の子にも問題があるのだけれど、周りの子供や親達の対応にも、不満がある。他のお母さんも、各々の子どもを注意して欲しい。」「だけれども、親がいる前で、その人の子を注意するわけにもいかないし・・・」

幼児の世界と母親の世界が、絡まりあい、問題はより複雑になっていく。
子供が成長し、自分の意思をある程度言葉で伝えられたり、順番を待てるようになったり、社会性を身に付けはじめると、この絡まりはある程度解消する。子供が「子供同士の人間関係」を築くようになるからである。時には、「子供が母親を救う」時もある。子供同士は、「一緒に遊べば、『友達』」である。すぐに仲良くなり、初対面の母親同士の繋ぎ役になってくれるのである。

<父兄としてのお付き合い>
通っている園によって、日本とは異なる父兄交流がある。例えば、誕生会。インターナショナルスクールや地元幼稚園などでは、実に盛んに行われている。誕生日の日に、親が学校にケーキを持参し、皆でお祝いしてもらい、ちょっとした菓子袋を配るというのが、一番簡略な方法。自宅に友人を招待し、ホームパーティーを行う場合やパーティースペースを貸し切りにして、そこで、エンターテイナーがパフォーマンスを行うなど、趣向を凝らしたものも多い。

お付き合いの一環として、日本人父兄も我が子の為に、主催するが、これがなかなか大変である。時間・体力・金銭的にも負担は少なくない。私自身、月に4回、週末ごとに誕生会に招待された経験を持つ。シンガポール動物園のパーティースペースに出向いて、ほぼ半日、子ども達が遊び通したこともあった。色々な国の父兄と交流を深めることが出来たのは、大変な収穫であったが、誕生会への招待状は、あまりたくさん頂き過ぎると、心の負担でもあった。