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ニュースレター(機関紙)

子育てのこころ(2) ほめる子育て・その2
NL06090104
小児科

子育てのこころ(2) ほめる子育て・その2


国立成育医療センター こころの診療部 発達心理科
広瀬 宏之

●ほめる
 前回は、ほめる子育ての反面教師として減点法の子育てについてお話ししました。減点法の子育ての結果として、過剰適応、失感情症、身体化、心身症、攻撃性、衝動性、怒りの感情といった、様々な好ましくない状態が現れることをお話ししました。
 これと反対にあるのが、よいところに注目し、ほめる子育てです。採点法でいうと加点法です。できなかったことを駄目だと批判するのではなく、できたところを取り上げて、まずほめる。そして、できなかったところが、もう少し上手にできるようになればもっといいね、とほめるのです。
 ここで、注意したいことは、ほめるといっても決して皮肉にならないようにすることです。ほめていても実は批判している、言葉の表面上の意味に加えて、裏の意味がこもっていると、子どもは敏感に察知します。言葉の意味と、伝える内容があべこべのことをダブルバインドといいます。ダブルバインド的な関わりを続けると、言葉の説得力が失われていきます。しかも、ほめられている筈なのに、ほめられている気がしない。怒られている訳ではないから表立って反発もできない。真綿でじわじわと首を絞められているような感覚に陥っていきます。それくらいなら減点法の方がまだはっきりしています。

●加点法の子育て
 加点法の子育てをしていると、自己評価が高くなります。自信がついてくると、周囲への関わりがより積極的になり、学ぶ姿勢が前向きになります。「好きこそものの上手なれ」と言うように、好きなことはより早く身につきます。
 子どもにとって勉強は基本的には楽しくないことです。しかし、勉強して理解できると面白みがわかってきます。また、自分にとって必要な勉強ならば、自ずとやる気が出ます。また、気が進まないことでも、ほめられると満更でもない気分になり、もう少しやってみようかと言う気持ちにもなります。そもそも、報酬の無い人生は有り得ないのです。物質的にせよ、精神的にせよ何らかの見返りがあるから、我々大人も日々満員電車に揺られて通勤をして、仕事をしているわけです。
 家庭教師での経験から言うと、できない科目を克服する最良の方法は、得意科目を徹底的に伸ばすことです。人間、誰しも苦手なこと、嫌なことは後回しにするか、できれば避けて通りたいものです。しかし、それが避けられない場合、はじめからそれに向き合える強い人は多くありません。得意科目を伸ばして、勉強に対する自信がついてくると、不得意科目へ立ち向かう意欲が出てきます。同じように、良いところをほめて伸ばすことが、その子のウイークポイント克服への第一歩になるのです。

●良いところを探そう!
 うちの子どもには良いところなんか無い、とおっしゃる方がいらっしゃいます。本当にそうでしょうか。
 子育ては日々格闘です。20歳までに人生で必要なことを身につけさせて、世の中に送り出さなくてはいけません。できないことにどうしても目が向きます。でも、前回もお話ししたように、できないことにばかり目が向いていると、その子が持っている本来の育つ力が十分に発揮されないのです。
 そもそも、この世に生を受けて、生きている価値のない人間などいないはずです。子どもとして、人間として、生きているだけで素晴らしいはずなのに、そう思えない方がいらっしゃるのは残念でなりません。

●リフレーミング
 さて、ほめるときの一つのコツとして、リフレーミングという技法があります。同じ現象を別の角度から言い直すことです。カタカナで書くと難しいようですが、要は「ものは考えよう」ということです。おしゃべりでうるさい子どもを、「積極的で活発な子ども」と考え直すのです。子どもの目立つところを欠点だと悪く考えずに、その子の優れた「能力」が芽を出している部分として考えてあげるのです。
 その好例が黒柳徹子さんの「窓際のトットちゃん」に書かれています。多動と注意の転導性が著しく、転校に追い込まれたトットちゃんについて、転校先の校長先生が、トットちゃんのおしゃべりや人並みはずれた好奇心を、欠点として減点せずに、彼女の持っている素晴らしい能力として考えてあげたからこそ、今の黒柳さんがあるのです。
 しかし、このリフレーミングという技法を実行するのはなかなか難しいのです。その際のコツは、意識して「能力」という言葉をつけてあげることです。走り回ってばかりの子どもだったら「走り回る能力」がある、人の話を聞かないで一方的にしゃべる子どもだったら「自分のペースを崩さないで自己主張する能力」がある、忘れ物が多い子どもだったら、「細かい物に頓着しない能力」がある、或は「将来大物になる能力」かもしれない、などと考え直してみるのです。最後の例など、どう考えても牽強付会ですが、それで良いのです。要は子どものポジティブな面を伸ばすことが大切なのです。
 余談ですが、この「能力」という言葉をつける技法は、苦手な上司や同僚に対応する際にも応用がききます。もちろん、子どもの場合と違い、対大人の場合は、微妙な量の皮肉のスパイスは欠かせないのですが。

●ほめることと甘やかすこと
 ほめることと甘やかすことの違いが判らない方も多いようです。何でも認めてあげることは、ほめることでも何でもありません。許されない言動は、きちんと教えてあげる必要があります。その際に、批判するのではなく、それは良くないことだと教えてあげる姿勢が必要です。そして、できれば、どうしてそれが良くないのか、或は、場面にそぐわないのかを、子どもの理解の範囲内の理屈で伝えてあげれば、なお良いと思います。
 ともすると、感情的に反応して叱りつけることが多くなりますが、できるだけそれは少なくしたいものです。大人ならではの、余裕を残した対応を心がけたいものです。


:編集部より:
「子育てのこころ」は先月より1年の予定で連載を開始しました。広瀬先生は、当基金の会員用相談サービスである小児掲示板相談と電話相談を長年にわたって担当していただいています。
先生からは読後の感想、意見、質問などをお受けしたいとのご希望です。どうぞwebmaster@jomf.or.jp 宛にメールでお送りください。
●「子育てのこころ」索引コーナー
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●「小児医療の現場から」索引コーナー(小児相談担当医によるリレーエッセイ)
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