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ニュースレター(機関紙)

小児健康相談レポート~マニラ育児相談の報告
NL06040104
育児、小児科

編集部より:当基金では毎年海外医療相談を実施しております。2005年度はシンガポール、バンコク、クアラルンプール、マニラ、ジャカルタ(実施順)の5都市で医師、歯科医師、保健師による相談を開催いたしました。
マニラにおいては、小児科、皮膚科、育児の相談が行われました。今回は初めての試みである育児相談を実施した波川京子先生(札幌医科大学保健医療学部教授)のレポートをご紹介します。
なお、今年度の相談実施予定につきましては決まり次第会員の皆様にご案内の予定です。




小児健康相談レポート~マニラ育児相談の報告


札幌医科大学保健医療学部
教授 波川京子

                           
2005年11月24~26日、マニラ日本人会診療所で小児科と皮膚科の医療相談に併設して、育児相談を行いました。3日間の相談者は30件、1件あたりの相談時間は約1時間、主な相談者は母親でした。
来所者の構成は母親単独、母親と子ども達、家族全員、ナーサリー同伴などでした。相談対象児は男児17人、女児13人でした。相談対象児の年齢内訳は、0歳児が3人、1歳児が10人、2歳児が11人、3歳児以上は6人でした。相談対象児の出生順位は第1子が24人、第2子以上が6人でした。

事前の相談希望内容

対象児の年齢と相談希望内容を表1に示します。


ここにタイトルをいれてください 表1 問診票に記載されていた相談希望内容
0歳1歳2歳3歳以上
授乳断乳哺乳瓶の
やめさせ方
習癖
食事母国語としての
日本語の習得
遊ばせ方
アトピー性皮膚炎しつけ
幼稚園に入る時期クラスメート・幼稚園
指導者との人間関係
習癖
歯みがきトイレ訓練
言葉の発達・日本語の獲得クラスメート・幼稚園
指導者との人間関係
親子関係・子どもとの接し方



0歳児は母乳やミルクの回数や量などの授乳と栄養に関することでした。

1歳児は断乳と食事、食事に関係するアトピー性皮膚炎、歯みがき、言葉(ナーサリーの使う英語と母国語としての日本語)、遊ばせ方、親子関係、習癖、幼稚園への入園時期などでした。

2歳児は哺乳瓶のやめさせ方、歯みがき、しつけなどの基本的生活習慣のことや、言葉の獲得と発達、子どもの発達に応じた子どもとの接し方になってきました。

3歳児以上はしつけ、トイレットトレーニングなど幼稚園や小学校など集団生活に向けた基本的生活習慣の獲得と日本語習得、集団生活の移行で生じるクラスメートや指導者との人間関係に関する相談でした。子どもの月齢や年齢が高くなるに並行して、言葉の発達や行動と人間関係の範囲の広がりによる内容が相談に反映されていました。

出生順位別では、第1子は母乳・ミルク、食事、歯みがき、夜泣き、睡眠時間、しつけ、トイレットトレーニング、遊ばせ方、言葉、発達でした。

第1子だけではなく家族を含んだ相談は、母親の妊娠や弟妹の出生をきっかけにして出現した指しゃぶりや爪かみなどの習癖、言葉の遅れなどへの対応、親に対する反抗的な言動への対応などでした。新しい家族が加わったことで再構築しなければならない家族関係についての相談でした。

第2子以上は子どもの発達や発育、断乳など母親が自分自身の子育てについて承認を得たい、或いは確かめたいなど、育児の後押しを求める内容でした。兄姉の育児を日本で経験した母親は、兄姉が日本で受けていた乳児健診、1歳6ヵ月健診、3歳児健診に近い発達・発育チェックの希望を持っていました。

相談の中で出てきた相談

次に、相談中に出てきた、問診票に記載のなかった相談内容を表2に示します。


表2 相談中に出てきた相談内容
年齢相談内容
1歳 育児方法や対応を確認したい
既存のグループにうまく入れない
日本の1歳6ヵ月健診に準じた発育発達を見て欲しい
子どもへの対応方法を教えて欲しい
2歳 自分の育児、子育て観がこれでいいのか確認したい
帰国後、日本語が獲得できるか心配
弟妹が生まれたときの接し方と出産時の子育て
発達の遅れを受け入れられない
反抗期のしかり方、親の言うことを聞かない時の対応はどうすればいいか
母親に対して反抗的、反抗時の対応の仕方を聞きたい
子どもを受け入れられない自分が怖い
たまった育児ストレスをはき出したい
育児方法、対応の仕方の確認をしたい
他の子どもに比べて発達が遅れているか心配
食事の味付け、内容について確認したい
育児の苦労、母子関係の緊張をほぐして欲しい
育児の心配と自信のなさを解消したい
3歳以上 子育てが間違っていないか確認したい
言葉が遅く、自分の育て方が悪いのではないかと不安になっている
育児方法、対応の確認をしたい
第2子の出生頃から気になるくせが始まった、止めさせたい、その方法を知りたい
発達が気になっている
日本人が多く行っている病院を紹介して欲しい
子どもにうまく対応できない自分に嫌悪感を持っている
子どもとうまくいかないため自分の感情が抑えられないときがある



0歳児は問診票に書かれていること以上の相談はありませんでしたが、1歳児は自分の育児方法や対応が間違っていないかを確認したい、自分の育児の仕方を認めて欲しいが出てきました。
育児に手がかかり対応がわからなくなったこと、子どもを受け入れられなくなる辛さなどが出されてきました。育児を後押ししてくれる人や場が見つけられない、既存の組織にうまく入れないことで、母親の精神的な孤独感、既存組織からの物理的な孤立状態になっていることが予想されました。

2歳児は、自分の育児子育て観の確認、食事の味付けや内容について確認したい。育児の心配と自信のなさなどに加え、発達の遅れが気になったとき、弟妹の出生、反抗期の対応など育児書に書かれていない対応に戸惑っていました。蓄積された育児ストレスや母子関係の緊張を解いて欲しい、子どもをかわいいと思いながら子どもをありのままに受け入れられない自分に戸惑っているなどの訴えが、出されてきました。

3歳児以上では、発達が気になりながらも日常的な相談が困難なため、対応に悩んでいる状況、集団生活の中での他の子ども達との関係が円滑に行かない悩みが語られていました。その他に弟妹の出生で始まった習癖への対応、兄弟姉妹の関係の中で母親と子どもが緊迫して対峙している様子が出てきました。

育児相談を担当して

相談内容は日本国内での育児相談とほぼ同じでしたが、0歳児の離乳食に関する相談はありませんでした。

1歳6ヵ月頃から多くなる基本的生活習慣の確立に向けたトイレットトレーニングの方法や、顔を洗う時や、髪を洗う時に目に水が入らないようにすること、顔に水がかからないようにする方法の相談はありませんでした。

育児のつまずきが無いときは、どこで育児をしても同じですが、育児不安や育児を重圧に感じているときは、相談することで自分自身をさらけだすことは勇気がいります。

メールやFAXという何時でも相談できる機会があっても、笑われるのではないか、こんなことを考えているのかと他人から思われるのではないか、見た人はどんなに思うのかと他人の目が気になります。
これ以上傷つきたくない思いが、人への直接的な相談をためらわせます。自分の育児がこれでいいのかを確かめる所、後押ししてくれる人、不安や悩みを聞いてくれる機関を探します。必死で探しても、精神的にゆとりがなくなっていますから、駆け込み寺が見つからなかったり、次の行動に移ることができなくなると予測されます。

相談内容は年齢が高くなるにつれて、発育から発達内容に変わっていました。基本的生活習慣の習得方法と発達段階・年齢に応じた子どもへの接し方にとまどう母親の様子がうかがわれました。育児の迷路に迷い込み、抜け出せない母親が気になりました。職場で年一回、健診を受けて自分の健康状態を確かめ、生活習慣を振り返り、生活習慣病予防の行動を意識づけるように、子どもの発達や発育を確認し、自分の育児方法を確かめ、修復する機会は必要と感じました。