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ニュースレター(機関紙)

クアラルンプール歯科健康相談(成人)において得られた事柄
NL05020103
歯科、健康管理

クアラルンプール歯科健康相談(成人)において得られた事柄

歯科医師
田中 健一

はじめに
 2004年度にクアラルンプール市において実施された歯科健康相談には現地在住の邦人242名(成人168名、幼児,学童は75名)が参加しました。この人数は事業の開始以来、毎年増加しており現地邦人社会において認知度が向上しています。本邦ではこの相談の中から得られた事柄をもとに、各企業において行うべき歯科管理について考察します。
 相談に来た成人の年齢別人数であり、30,40代の成人が多く相談に見えられました(図1)。
 相談に見えられた人を対象にアンケートを実施したところ、痛みを伴わないまでも、口腔内にある違和感を持つ人は129名で77.2%いました(図2)。非常に多くの人が口の中になんらかの不具合を抱えています。

図1


図2

1.渡航前検診の有無について
 成人においてマレーシアへの渡航前に歯科の治療や検診をすませた人が123名で、全体の73.7%(図3)を占めます。しかし、残りの3割弱の方は渡航前検診を受診せず、マレーシアに赴任しています。当地で口の中に問題が発生し、その場になって始めて医療機関を求めるのはこのような層だと考えます。「渡航前の歯科検診を徹底してください」と言うのは容易ですが、実際にどのようにして検診の意識を高めていけるかについては各企業の取組みが必要です。この取り組み如何が、海外の邦人が使う医療費の1/3を占める歯科医療費を低減に導きます。
 赴任前に検診を受診しない人は、国内における定期検診の習慣がないことも影響していると考えます。

図3

2.歯科健康教育について
 治療および検診だけでなく、セルフケアの観点からう蝕および歯周病予防のため歯科健康教育を受けた人は101名で61.6%です(図4)。「自分の健康は自分で守る」考えを徹底させる目的で講演会を企画はしていますが、参加者の数は決して私達の満足のいくものではありません。
 歯科健康教育の向上に向けて、企業の健保組合,海外派遣に関係する部署とも意見交換をすることを希望します。

図4

3.歯科医院への受診動向について
 成人において、異常がないと歯科に行かない人が130名で80.2%です(図5)。まだ常日頃から手入れのために歯科を受診する人は小数派です。悪くなってから、もしくは悪くなりかけてからの受診はどうしても医療費が高額になり、受診者への負担も大きくなります。現在の歯科分野において、わずかの歯科疾患を除き常日頃のケアによって十分予防可能になりました。しかし、日本人は悪くなってからはじめて歯科を受診するスタイルであり、定期的チェックのために受診する人は少数です。その傾向は(本稿ではご紹介しませんが)幼児・学童にても顕著で、虫歯になりやすい時期にも関わらず定期的にチェックを受けている方はわずかです。親の世代において「悪い歯が見つかったら歯を治しに行く」(悪くなければいかない)という受診様式が子供に反影しています。
 予防可能な疾患は、異常がないように見えても医療機関を受診するということが推奨されています(自分が認識するようになった時点ではすでに疾患は進行しています)。今後自己の健康増進のため、受診スタイルを変えるよう企業内でも取組みが必要と考えます。

図5

4. 虫歯の有無に関して
 45名、全体の26.8%に未治療虫歯が発見されました。当人が気づいているもの、気づいていないものを含めても虫歯を有する数は多いです。このような方には治療に行くことを指示したことはもちろんのことですが、次年度の実施に際し、虫歯にならないためのノウハウの提供を考えます。

図6

虫歯あり、虫歯無しは下記の意味です。
虫歯あり:新規に進行中の虫歯があり今回の健診で指摘したもの。
虫歯なし:過去に虫歯はあったが治療済,および要治療の虫歯はない。

5.歯石の付着の有無に関して
 歯肉に炎症のある方,および歯周病を導く歯に歯石のついている人は成人では45名、26.8%でした。成人においては虫歯よりも歯周病の方が重篤になりやすいため、半年に一度はクリーニングをしていただきたいです。相談に見えられた人の中で、虫歯の有無は気にしますが歯周病の程度を気にしている人は多くありませんでした。

図7

感想
 口腔の疾患は地域特異性のない(どこの国にいても発生する)疾患です。虫歯や歯周病を始めとする歯科疾患は、病状に気がついた後の受診は症状が進行していることが多いため、治療に相当の日数が必要です。今回の結果でも悪くなってから相談もしくは受診する傾向が顕著です。早期発見から予防に重心を移していくべきであると考えます。そのためには、企業内においてさらなる健康教育の充実を含めた啓蒙普及が必要です。
 過去3回、クアラルンプールでの歯科健康相談に参加し、現地医療機関の情報も集積しました。健保組合、健康管理室および海外赴任関係で業務する方で、具体的な知見を必要とされる方は遠慮なく御連絡ください。意見交換をさせていただくことを希望します。
(メールアドレス:BXU00436@nifty.ne.jp