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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(26)「海外赴任者のストレス~子供の相談」
NL05010102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

「海外赴任者のストレス~子供の相談」

シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

2005年の心療内科診療は、「子供の相談の充実」に重点を置いてゆこうと考えています。3年半の心療内科診療では、海外の環境や人間関係に馴染めず、体調不良を自覚する成人を対象に啓蒙・指導・診療を行ってきました。どんなに、健康で適応力が高い方であっても、外的要因-仕事・人間関係・カルチャーショック・家族内の問題・経済事情など-がそろえば、うつや不安障害などの心身の不調を来すことがあるという認識は、徐々に浸透してきていると感じます。

それでは、自己の体調不良をはっきりと言語化することの出来ない子供たちには、こんなストレスや変化はどのように現れるのでしょうか?
子供たちは、子供たちなりにいろいろな不安・心配・生活しにくい感じを自覚しています。
ただし、それを表現したり抱えたりする手段が無いために、周囲に相談することは出来ないのです。一方で、子供の心は年齢が幼いほど非常に柔軟でもあります。何か、身近に非常に安定した人間関係に恵まれれば、心の傷つきからしなやかに立ち直ることも出来るのです。

海外生活7年目のO君は、現在中学2年生です。最初の4年はタイのバンコクに家族一緒に赴任していました。3年前にシンガポールに転居しましたが、11歳のO君は、ちょうど反抗期に入り言葉が荒くなり、家族にイライラをぶつけるようになりました。お母さんは、「どうもシンガポールに来てから、バンコクの友人関係を懐かしがることが多かった。」事には気づいていましたが、反抗期に入ったO君がどのくらい孤独であったのかは、言葉を通して話し合うことはありませんでした。中学1年生なったO君は、時々お母さんのお財布から無断でお金を使ってしまいます。用途は、ゲームや漫画本ですが、お母さんに問いただされると毎回大喧嘩になってしまいます。
「それくらいしか楽しみないじゃん!」「自分はシンガポールに来たくなかった。親の勝手で連れてきたんでしょ!」「俺の好きなこともさせろよ!」
と大声を張り上げるO君にお母さんはどう対応して良いのか分からなくなってしまいました。
「うちの子は反抗期がとてもひどいです。小学校4年までは結構話せば通じたんですけどね・・・」「もう、さっさと寮制の高校に入れて、世の中そんなに甘くないと分からせたい。」

成長の早い子では、小学校5年生くらいから「意地」が出てきて、自分の弱みを口に出すこと・親に助けを求めることを良しとしなくなります。自立してゆく上で必要なこの意地が、親子の感覚の温度差につながり、関係を複雑にしやすいようです。
親の海外赴任に伴って、世界各国を回って生活している子供たちには、彼ら独自の不安・緊張がある様です。そして、これを何歳で体験するかによって心に及ぼす影響が異なってきます。

元々、集中力が短い小学校2年生のA君は、シンガポール日本人小学校に転校早々から「落ち着かない子」という印象を与えてきました。幸い、ご両親も先生も、「はじめてのシンガポール生活」が彼の集中力に大きな影響を与えているという認識があり、周囲の大人が的確に辛抱強く対応してくださったことで、A君は徐々に本来の姿に戻りつつあります。

来星4カ月の3歳のSちゃんは、英語で話しかけてくる先生に凍り付いてしまいます。幼稚園には行きたがらず担任の先生をみると、逃げ回ってしまいます。「外人恐怖症ではないでしょうか?」とご両親が大変心配されて外来にやって来られました。

もちろん子供の性格もありますが、必要以上に「困った子」「手の掛かる子」「難しい子」という親子の距離が出来てしまう前に夫婦・親戚・友人・医師などに相談できる環境と、相談に対する正しい知識を知っていただけたらと思います。海外に赴任することが、是非とも子供たちの成長のプラスになるように、医療面でもサポートしていけたらと願っています。